あれは忘れもしないリーマン・ショックの頃の話だ。ニューヨークのトレードフロアにいる俺は、いわゆる「イケイケ」だった。成績は悪くないし、上司にも信頼されてた。自分で言うのもなんだが、「トレーダー片山」としては結構いいポジションにいた。
でもな、そんな俺の自信を粉々に砕いたのが、あのリーマン・ショックだったんだよ。今だから笑い話にできるけど、あの時はマジで「人生終わった」と思った。
あの朝、俺は何を間違えたのか
リーマンが破綻するってニュースが出た瞬間、フロア全体が騒然となった。モニターのチャートは上下に激しく揺れて、いつも冷静な同僚たちの声もワントーン上がってた。まさに「嵐の前の静けさ」が一気に嵐に変わった感じ。
で、俺も冷静ぶってこう言ったわけだ。
「ユーロドルを5ミリオン買い戻せ。ここが底だ。」
いや、これが完全にダメだった。
市場は底どころか、さらに底抜けしていく。チャートは真っ赤、モニターの数字は減るどころか桁がどんどん増えていく(マイナス方向でな)。しかもジュニアのフレッドが「了解、即実行します!」って気合い入れてたのが、逆に痛かった。お前、そんな元気出す場面じゃないぞ。
上司ジョンの怒声と俺の冷や汗
そのうち、俺の背後からおなじみの低音ボイスが聞こえた。
「片山!何をしてるんだ!」
あのジョン・マッケンジーだ。フロアのリーダーで、言葉に余計な飾り気はないけど、その分ストレートに心に刺さるタイプの男だ。刺さるっていうか、刺される感覚だった。
「処理してます、あと少しで……!」
俺は言い訳のつもりでそう返したけど、正直、どうにもならなかった。損失は止まらない。俺のデスクには、あっという間に「数千万ドルの負けポジション」が積み上がってた。マジで地獄だったよ。
そして、クビの宣告
数日後、マーケットがちょっと落ち着いたタイミングで、ジョンに会議室に呼ばれた。まあ、何を言われるかは分かってたよ。「片山、お前には休んでもらう必要がある」って。
休む必要って何だよ、と。俺の心の中では「そんな遠回しな言い方しなくていい、クビって言え!」って突っ込みたかったけど、黙ってた。俺も大人だからな。
ジョンは続けて「お前は優秀だ。だが、今回は仕方ない」とか言ってたけど、その言葉が逆にきつかったね。お前優秀ならクビにならねーよ、って話だろ。
バーで悟ったこと
その夜、一人でバーに行った。ウイスキーを頼んだんだけど、味なんて分からなかった。ただ、「俺はどこで間違えたのか」ってことばかり考えてた。
そして気づいた。俺は市場を読んだつもりだったけど、本当は自分を読めてなかった。何が得意で何が苦手なのか、全然理解してなかったんだよ。結局、調子に乗ってただけだったんだな。
「もう一度やり直せるのか?」って自分に問いかけてみた。でも、その答えなんて当然出なかった。だから、とりあえずウイスキーをもう一杯頼んだ。
最後に
この話、笑ってもらってもいいし、反面教師にしてもらってもいい。でも、ここで終わらなかった俺がいる。次回は、日本に戻って個人トレーダーとして再挑戦した話を書いてみるよ。
もし今、トレードで負け続けてるなら、「俺より酷い状況ではない」って思えるかもしれない。それだけでも励みになれば嬉しいよ。