キャリアの自己認識を深める効用 ~ワーク&ライフラインの軌跡から~

記事
コラム
みなさんは過去・現在・未来のどのあたりを見ながら日々を送っているでしょうか。以前、退任間近のある役員の方と立ち話をした時に、「俺はこれまで前しか見ていなかったから、過去のことはひとつも憶えちゃいないな。」とおっしゃっていたのを聴いて、随分とかっこいいなあ~、と感心したことがあります。

私自身は、過去があるから現在があり、現在は未来につながっているという考えに常日頃から意識的です。が、やはりこういった捉え方も人によって全然違ったりするのでしょう。過去を大事に思う人もいれば、今ここにひたすら生きる人もいて、さらには未来の自分を思い描き生きるエネルギーにする人もいると思います。その生き方はすべてその人のものです。


先日、自分自身のワーク&ライフラインを描き、それを他者に語ることによってキャリアの自己認識を深めるというワークに参加しました。私にとってはもう28年前の昔のことですが、大学を卒業して入社した時点から、じっくりと年を追って、自分が何をしていたのか、その時の気持ちはどうだったのか、何を学んだのか、について書き出してゆきました。

別のワークで使った資料があったおかげで、あれよあれよという間にA4用紙2枚にわたってワーク・ライフラインが書き上げられ、しげしげとそれを眺めました。28年間というのは結構な積み重ねになっているものだなあ、と感慨深いものがありましたし、これから自分はどうするんだろう?という思いも湧き上がってきます。


そのワーク・ライフラインを使って、3人グループで「キャリアの自分語り」をしました。1人15分ほどでじっくりと自身の軌跡を話し、他の2人は言葉を挟まず、聴くに徹します。その後は10分程度を使って、話し手に聴き手が質問をすることで、キャリアのその時その場でどのようなことがあったのか、深掘りをしてゆきました。(何を話して何を話さないかは、話し手の自由です。)

先に聴き手であった私は、話し手が語るご自身のワーク・ライフラインの変遷について、その人の人生をトレースするかのように聴き、ロジャーズの言う自己一致・無条件の肯定的配慮・共感的理解の三要件に注意を払い、その人の世界に入ってゆきます。話し手の方が自分語りの中で、「自分はあの時こんな苦労をしたんだ。」「その苦労の中でもこのような学びがあったんだ。」「その苦労は、次の機会に強みを発揮する原動力になったんだ。」というような、生き生きとしたご自身の気づきにつなげてゆく様子を見て、また、聴き手の質問に応えることによって気づきが洗練されてゆく様子を見て、自己認識が磨かれてゆく、非常に尊い、有難いことだな、と感じ入りました。

守秘義務がありますので詳細な内容には触れられませんが、ご一緒したおふたりとも、ワーク・ライフラインの過程で、人生においてとても重い苦労をなさっておりました。しかしその重荷をご自身が前に進むための梃子にするくらいポジティブな考え方、ご自身の強みに目を向けるための努力を続けていることが感じられました。私はおふたりのキャリアの自分語りから、人のレジリエンスのすごさを学びとらせていただいた気持ちでおります。


話し手となった私自身は、A4用紙2枚にしたためたワーク・ライフラインを使って、自身の軌跡を存分に聴いていただきました。他者にただ聴いてもらう経験は、自分の考えを外化するという行為により自分自身の思考が活性化し、自己認識を深め新たにしてゆくことにつながるということについて、確信を強くすることとなりました。聴いてもらっている相手は、まさに自分にとっての鏡なのです。聴き手に自分の姿が映ります。そうして、自分の強みや弱みが浮き上がってくるのを実感しました。

今回のワークでは、キャリアの自己認識に基づいて、今から3年後・5年後・10年後を節目と見立てて、その時に自分のワークとライフがどのようになっていたいか、展望を描きます。不思議なもので、未来のことを「こうなっているかな」「こうなっているといいな」と考えながら描きだしてゆくことで、自分の中に小さなエネルギーが生まれてくるような感覚になりました。

3年後のことはそれなりに解像度が高いものを描けるので、しっかりやらなきゃな、と思いますし、10年後のことは正直よく分からない、けどよき人生になるように方向性は定めておこう、と思います。折々に、このような「まとめ」をしておくことは、この不確実性の高い時代にあっても、様々なものを背負っている一人の大人の責任として必要なことなのではないか、と感じました。


今回は、キャリアの自己認識を深める効用についてお話しました。私は会社勤めとの複業でライフキャリアデザインカウンセラーとして個人や世帯の職業生活設計や資産設計のお手伝いを志しております。保持資格としては国家資格キャリアコンサルタントとAFP(日本FP協会会員)をコアスキルとして、これまでの会社生活や人生経験で学んできたことを活かして会社内や地域社会に向けた価値創造につなげてまいります。ご関心を持っていただいた方、ご相談事がある方は、どうぞお声がけください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す