Webサイトを制作するとき、変更前のファイルをコピーして保存している人も多いと思います。
「トップページ修正前」「トップページ修正後」「トップページ最新版」といった名前でフォルダを増やせば、ある程度は過去の状態を残せます。
しかし、修正回数が増えるほど、どのファイルが最新なのか、何を変更したのかが分からなくなります。
このような問題を解決するために使われるのがGitです。
Gitは単にファイルを保存するためのものではなく、変更の履歴を管理するための仕組みです。
今回は、Web制作でGitを使う理由と、一般的なバックアップとの違いを解説します。
Gitは変更履歴を記録する仕組み
Gitを使うと、ファイルを変更したタイミングで、その状態を履歴として残せます。
どのファイルを変更したのか、どの部分を追加・削除したのか、なぜ変更したのかを記録できます。
通常のファイルコピーでは、修正前と修正後のファイルを自分で見比べなければ違いが分かりません。
Gitでは変更箇所を確認できるため、「昨日どこを触ったのか」「この表示崩れはどの修正から発生したのか」を調べやすくなります。
問題が起きる前の状態へ戻せる
Web制作では、一つの修正が別の場所へ影響することがあります。
CSSを整理したら他のページのデザインが崩れた、JavaScriptを変更したらメニューが動かなくなった、といった問題は珍しくありません。
Gitで修正前の状態を記録していれば、問題が発生した変更を確認し、以前の状態へ戻せます。
履歴がない場合は、記憶を頼りに変更箇所を探したり、崩れた部分を再び手作業で直したりしなければなりません。
元に戻せる状態を作っておくことで、修正に挑戦しやすくなることもGitを使うメリットです。
「最新版」がどれか分からなくなる問題を防げる
ファイルをコピーして管理していると、似た名前のフォルダが増えていきます。
日付を付けていたとしても、別のフォルダを修正してしまったり、古いファイルを本番環境へアップロードしたりする可能性があります。
Gitでは、一つの作業場所に対して変更履歴を積み重ねていきます。
過去の状態を残すために、プロジェクト全体を毎回複製する必要はありません。
現在使っている状態と過去の履歴を分けて管理できるため、どのファイルが最新なのかを判断しやすくなります。
変更した理由も残せる
履歴を保存するときには、変更内容を説明する短いメッセージを付けられます。
たとえば、「スマホのヘッダーを調整」「お問い合わせボタンの文言を変更」といった形です。
変更理由が残っていれば、数週間後に見返したときも、何のために行った修正なのかを理解できます。
特にクライアントサイトでは、細かい修正が何度も発生します。
履歴を残さずに対応を続けると、以前の仕様へ戻してほしいと言われたときに、当時の状態を再現できないことがあります。
コードだけでは分からない作業の意図を残せることも、履歴管理の重要な役割です。
複数人での制作にも役立つ
複数人で同じWebサイトを制作すると、誰かの変更を別の人が上書きしてしまうことがあります。
Gitを使えば、それぞれが行った変更を確認しながら、一つのプロジェクトへまとめられます。
誰がどこを変更したのかも履歴に残るため、問題が起きたときに原因を調査しやすくなります。
一人で制作している場合でも、将来的に外注先や別の制作者と連携する可能性があります。
最初からGitで管理しておけば、後から共同作業へ移行するときも進めやすくなります。
試したい修正を本流から分けられる
新しいデザインや機能を試したいとき、現在の完成状態を壊したくない場合があります。
Gitには、現在の状態から作業を分けて変更を進める考え方があります。
試した修正が問題なければ本来の制作内容へ反映し、うまくいかなければ採用せずに戻せます。
大きなリニューアルや、新しいアニメーションの追加など、結果が読みにくい作業にも向いています。
本番用の安定した状態と、実験中の状態を分けられるため、安全に修正を進められます。
Gitとバックアップは同じではない
Gitを導入したからといって、通常のバックアップが不要になるわけではありません。
Gitが得意なのは、主にコードやテキストファイルの変更履歴を管理することです。
一方、WordPressの投稿内容、各種設定、画像、データベースなどは、Gitだけでは完全に保護できません。
サーバー障害や操作ミスへ備えるには、ファイルとデータベースを含めたバックアップも必要です。
Gitは変更履歴を管理するもの、バックアップはサイト全体の復旧に備えるものと考えると分かりやすいでしょう。
どちらか一方を選ぶのではなく、それぞれの役割に応じて併用することが重要です。
最初から完璧に使う必要はない
Gitには多くの機能がありますが、最初からすべて覚える必要はありません。
まずは作業前の状態を記録し、修正後に変更内容を確認して、履歴として保存する流れから始めれば十分です。
慣れてきたら、作業を分ける方法や、オンライン上で履歴を共有する方法を学んでいけばよいでしょう。
重要なのは、操作方法を暗記することよりも、「変更前の状態へ戻れるようにしてから作業する」という習慣を身につけることです。
まとめ
Gitは、Webサイトのファイルを保存するだけの仕組みではありません。
いつ、どこを、何のために変更したのかを記録し、必要に応じて以前の状態へ戻すための仕組みです。
修正履歴が残ることで、問題の原因を調べやすくなり、ファイルの最新版が分からなくなる事故も防ぎやすくなります。
ただし、GitはWordPressサイト全体のバックアップを完全に代替するものではありません。
Gitによる変更履歴の管理と、ファイル・データベースのバックアップを組み合わせることで、より安全にWebサイトを制作・運用できるようになります。