「再生数が伸びない」「誰に届いているかわからない」──そんなもやもやを抱えながら配信を続けている方に、今回は少し立ち止まって考えてほしいデータを持ってきました。
株式会社オトナルと朝日新聞社が毎年実施している「ポッドキャスト国内利用実態調査」の第6回レポートが、2026年2月に公開されました。
10,000人を対象にしたスクリーニング調査と、月1回以上ポッドキャストを聴くユーザー800人への本調査から得られた、現時点で日本最大規模のポッドキャスト利用データです。
今回はその中から「リスナーとは何者か」というテーマを切り取って、一緒に読んでいきます。
取り上げたニュース
調査名:第6回 ポッドキャスト国内利用実態調査(PODCAST REPORT IN JAPAN)
URL:
発表日:2026年2月
参照元:株式会社オトナル・株式会社朝日新聞社
2025年のポッドキャスト月間利用率は18.2%となり、前年比1pt増加。
2020年の調査開始時(14.2%)から一貫して成長を続けており、15〜19歳では40.5%、20代では28.8%と特に若年層の利用率が高い。
15〜29歳の利用率はTVerやTikTokを上回り、31メディア中6位に位置する。
ポッドキャストユーザーは企業の決裁権者(経営者・役員・管理職)の割合が非ユーザーより5.2pt高く14.2%に達し、主要メディアとの比較では新聞に次いで高い。また学生比率は17.3%で調査対象の全メディアの中で最も高い。
年収・可処分所得ともにポッドキャストユーザーは非ユーザーを上回る傾向があり、年収700万円以上の割合は19.6%と調査対象メディアの中で最も高い水準。
情報感度に関する設問でも全項目においてポッドキャストユーザーが非ユーザーを上回り、「新しい製品やサービスを取り入れるのが人より早い」では非ユーザーの約3倍のスコアを記録した。
このデータが示している最も重要なことは、「ポッドキャストはニッチな趣味の人が聴くメディアではない」という事実の更新です。
若年層の利用率がTikTokを超えているという数字は、「ポッドキャストは年齢層が高い」というイメージを根本から崩します。
10代の4割が月1回以上聴いているという状況は、もはや「新しい習慣」ではなく「当たり前の習慣」として定着しつつあることを意味しています。
同時に、決裁権者や高年収層の比率の高さも見逃せません。ポッドキャストを聴く人たちは「情報感度が高く、購買力があり、組織内で影響力を持つ人」という属性が浮かび上がります。これは再生数という数字には現れない、リスナーの質の話です。
なぜ今これが起きているのか?
背景には、ポッドキャストという媒体の構造的な特性があります。
テキストを読んだり動画を観たりするには「画面を見る時間」が必要ですが、音声は移動中・作業中・運動中など、他の行動と並行できる。
忙しい人ほど活用できる媒体であり、だからこそ「時間を効率的に使いたい」意識が高いビジネス層や学習意欲の高い若年層との親和性が高いのです。
あなたの番組や仕事にどう関係するか?
「再生数が少ないから効果がない」と判断する前に、少し立ち止まってほしいことがあります。あなたの番組を聴いている100人が、決裁権者や高い購買力を持つ情報感度の高い人たちだとしたら、その100人はどれほどの価値を持つでしょうか。
番組設計の観点で言えば、このリスナー像は「コンテンツの深さと密度」が評価されることを示唆しています。
情報感度が高く複数の情報を比較検討する習慣を持つリスナーは、表面的な内容や薄い解説には満足しません。
だからこそ、専門性や独自の視点、話し手の経験値が直接コンテンツの質として反映されやすい媒体でもあります。
また、企業の音声配信に携わる方にとっては、「このメディアのリスナーは意思決定権者である」という事実は、スポンサー提案や社内稟議の場で非常に強い根拠になります。
「ポッドキャストは若者向けでビジネスに関係ない」という認識を持っている関係者がいるなら、このデータは明確な反論材料です。
発信テーマについても影響があります。
情報感度が高く自ら調べる習慣を持つリスナーが多いということは、「わかりやすく噛み砕く」だけでなく「話し手しか知らない視点を届ける」ことにも価値があるということです。
「聴いた人が自分で次のアクションを起こせる情報」を設計する意識が、このリスナー層との相性が良い番組を作ります。
今すぐやること
自分の番組のリスナー層をあらためて言語化してみましょう。「どんな職業の、どんな悩みを持つ人が、どんな状況で聴いているのか」という仮説を持つだけで、コンテンツの設計方針が変わります。今回のデータを参照軸として使えます。
今はやらなくていいこと
「高年収・高感度リスナーに向けた番組に作り替えなければ」と焦る必要はありません。データはあくまで傾向です。自分の番組のリスナー像と照らし合わせながら、参考情報として使うのが健全です。
再生数は「量」を示しますが、リスナーの属性は「質」を示します。ポッドキャストというメディアを選んで聴き続けている人たちの像を知ることは、自分の番組が持っている価値を、別の角度から見直すきっかけになります。
「誰が聴いているかわからない」という状態のまま発信を続けるより、「こういう人が聴いている可能性がある」という仮説を持って届けることのほうが、コンテンツの密度が変わります。
今日聴いてくれているリスナーの顔を、少しだけ具体的に想像してみてください。
執筆・監修
でんすけ|音声メディアプロデューサー(Office Scene8 代表)
大阪出身、40歳。テレビ局・レコーディングスタジオ、ラジオ局で番組プロデューサー兼エンジニアとして番組づくりに携わり、企画から制作、収録、編集まで一貫して経験。これまでに100名以上のパーソナリティをサポートしてきました。
業界のニュースやトレンドをそのまま追うのではなく、その人の立場やフェーズを前提に、「今、何に時間とリソースを使うべきか」を整理し、一緒に考えることを大切にしています。
【主な実績】
Apple Podcast マネジメント部門1位/ビジネス部門3位
DLsite ボイス・ASMR部門1位/総合2位
Voicy 企業部門1位/フォロワー11.2万人
近畿コミュニティ放送 番組賞・パーソナリティー賞 W受賞
ラジオドラマ、CM、ASMR制作など業界歴15年以上
【安心サポート】
技術面だけでなく、「配信を楽しみながら継続する」ための判断や選択を重視。メンタルコーチおよびコーチングの有資格者として、配信者一人ひとりの不安や迷いに寄り添い、状況に応じた伴走を行っています。