こんにちは、神楽 玄斗(かぐら げんと)です。
今朝、あなたのお名前が浮かびました。
視えたのは、夕方五時を過ぎてもまだ熱を抱えたままのアスファルト。その少し先が、ゆらり、ゆらりと水面のように揺れている帰り道です。バッグの肩紐が汗ばんだ肌に張りついて、片手には画面を暗くしたままのスマートフォン。持ち上げては、また下ろす。その繰り返しまで、はっきりと視えました。
八月十八日。お盆が過ぎて、暦の上ではもう秋が始まっています。それでも道の先だけが揺れていて、夏はまだ終わっていないと言い張っているようでした。
陽炎は、熱があるから起きる現象です。冷めた場所には立ちません。地面が昼のあいだに吸い込んだ光を、まだ手放せずにいる。だから空気が揺れる。揺れているということは、そこにまだ熱が残っているということなのです。
彼からの返信が、以前より短くなった。既読はつくのに、言葉が返ってこない。会えばいつもどおりなのに、離れているあいだの沈黙だけが長い。そんな夏を過ごしてきた方のお名前が、今朝は特に強く浮かびました。
沈黙を、冷たさだと受け取ってしまう。それは自然なことです。けれど霊視の場から視ると、沈黙の温度は、その人が思っているものとまったく違うことがよくあります。
彼の本音は、霊視でハッキリと視えます。今のあなたの状況を、一度視させてください。
視えたのは、彼もまた帰り道にいる姿でした。コンビニの白い明かりの前で足を止め、ポケットからスマートフォンを取り出す。打ちかけた文字を、送らないまま一文字ずつ消していく。消し終えて、短く息を吐いて、また歩き出す。
なぜ消したのか。そこまで視ると、理由は「冷めたから」ではありませんでした。中途半端な言葉を送りたくない、という不器用な意地です。彼のなかにはまだ確かな熱が残っていて、ただその出口を彼自身が見つけられずにいる。陽炎と同じで、揺れているのは、冷めていない証拠でした。
彼が今どんな言葉を飲み込んでいるのか。お名前とご状況を伺えれば、その中身までお伝えできます。
来週の二十三日は処暑です。暑さが一段落し、朝と夕方の空気が入れ替わる節目。彼の心も、この空気の入れ替わりに合わせて動き始めます。飲み込んでいた言葉が形になるのは、蝉の声が虫の声に変わっていく、ちょうどそのあたりです。
それまでのあいだ、どうか追いかけないでいてください。短い返信には、同じくらい短い返信を。空白を埋めようとしないこと。陽炎に近づけば揺らぎは消えてしまいますが、地面の熱は消えていません。距離を詰めずに待てる人のもとに、彼は自分の足で戻ってきます。
帰り道に一度だけ足を止めて、揺れている道の先を見てみてください。まだ夏が残っているのなら、彼の気持ちにも、まだ夏が残っています。
彼が言葉にしない想い、私が代わりに視てきます。
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