よく「生まれたときの運命で人生は決まってしまうのでしょ」とおっしゃる方がいる。
「持って生まれた運命で、人生は決まってしまうのではないか」という疑問
だ。
そうとも言えるし、そうではないとも言える。
占い師なら誰でも知っている伝説話がある。
古代中国で、都でブラブラと暮らしていた青年がいた。
いまでいうフリーターである。
いつものように仕事にあぶれ、都の大路をとぼとぼと歩いていた。
どうしたら運が開けるのか……。青年はふと思い立って占い師を訪ねる。
そして全財産を鑑定料として支払って、占ってもらった。
占い師の答えは、まこと意外なものだった。
「いまこの国は、治世が乱れている。人々は仕事にあぶれ、希望を抱いて生きることができない。ここで私とあなたが出会ったのも天の命かもしれない。あなたの生年月日と誕生した時刻から占うと……。この国を救うのは、あなただ」
「どういうことですか」
「あなたは生まれつき人望が篤く、人々を魅了する。そして指揮に優れてい
る。勝ち運もそなえている。……あなたは、この国の王となるであろう」
「どうすればいいんですか」
「人に雇ってもらい働くのをいますぐおやめなさい。そして旗をかかげ、兵士をつのり、軍隊を組織して、いまの王様を攻めるのです」
そんなことを言われるとは、青年は思ってもみなかった。
わずかな金額ではあったが、全財産を支払って占ってもらった鑑定の結果にはただ、驚くばかり。
青年は都を出る。都会と田舎の境にある田園で、野宿を繰り返した。
野宿をする道辻には旗を立てた。
この旗は何だろうと通りすがりの人々が足を止める。
青年は旗の下で熱弁をふるった。
「いまの政治は間違っている。王様は人々のことを考えていない。いまこそ挙兵して、政権を倒すべきだ。その先頭に私が立つ。心あるものはついて来るが良い」
青年は、都の周囲の田園地域に野宿の旅を続け、旗を立てては演説を繰り返した。
演説を聴く人たちは日に日に増えて、資金や武器を用意してくれる商人までが現れた。
青年の熱意にうたれた人たちは、こぞって兵士に志願する。
こうして何万人という兵士が集まったときに、青年は挙兵した。
厳しい戦闘もかいくぐり、命からがらの危険な目にも遭いながら、青年は不思議と難局を乗り越え、命を落とすことはなかった。
そして連戦に連戦を重ねて、ついに都に攻め上った。
ここでも、危ない目に遭う。命を失う、今度こそ死ぬと覚悟をしたとき、その頃には側近となっていた軍師が青年の命を救ってくれた。
やがて、都の中心にある宮城に攻め入り、ついに落城させ、青年は新政権を樹立する。
道ばたの演説で野に立てた旗を、いまは城の上に掲げたのだった。
そう、青年は本当に国王になったのだ。
王様となって何の不自由もない生活ができるようになったある日、青年は占い師のことを思い出した。
そして側近に命じて、戦乱の都から避難していた占い師を捜し出した。
自分の天命を教えてくれた占い師を側近に加えて、善政を施して国を治めようと思ったのだ。
王となった青年はやがて壮年期を迎えた。
ふと疑心が浮かんだ。
「自分と同じ星の下に生まれた者がいたとしたら、自分がそうしたように、都に攻め上がってきて、自分を殺し、この国を奪うのではないだろうか」
王は、部下に命じて、自分と同じ生年月日で生まれた時刻まで同じ者がいないか捜させることにした。
先手を打って、その者を殺してしまおうと考えたのだ。
果たして、王様と同じ生年月日で生まれた時刻までが同じという壮年の男が捜し出された。
その男は蜂飼いとして、都の外れの田園地帯に家族と暮らしていた。
その蜂飼いの男を連行しようとしたときに、占い師は王にこう進言した。
「殺すにはおよびません。蜂飼いの男はこの国を奪うことはないでしょう」
「なぜだ。私と同じ運命を持って生まれた者なら、やはり王位を取って代わるだろう?」
占い師は静かに答えた。
「王様は、何万人という人民を統率する運命を持って生まれました。演説に人々が魅了されたのも、挙兵したときにおおぜいの兵士が王様に従ったのも、そしていま、何万人もの人民が王様の政治のもとに暮らしているのも、あなたの生まれ持った統率力のおかげです」
それが天命だったと占い師は王様に話し続る。
「蜂飼いの男は、人民ではなく、何万匹という蜂を統率する能力に長けているだけです。いまの平穏な暮らしにも満足しているでしょう。わざわざ殺すにはおよびません」
「ならば、王である私と、蜂飼いの男は何が違うというのか?」
占い師は静かに答えた。
「生まれた場所が違うのですよ。王様は、都に生まれた。蜂飼いの男は田舎に生まれた。同じ生年月日と時刻であっても、統率力という天命は同じであっても、統率するものが人々なのか、蜂なのかは、そこで分かれたのです。それだけではありません」
占い師は語り続ける。
「生まれ落ちてからの、環境が二人の命運を分けたのです。王様は都に暮らしながら若い頃には仕事に就くこともできなかった。悪政を強いていた前の王様の横暴ぶりに怒りを覚える環境に暮らし続けました。いっぽうの蜂飼いは、都から離れた田園地域で、そうした都の悪政にいきどおることもなく、おだやかに暮らしていた。これが統率力に長けた星の下に生まれた二人の、その後の生き方、言い切れば運命を分けたのです」
王はこの話を聞いて、蜂飼いを殺すことをやめた。
そして何万という人々が暮らしやすいようにと心をくだいて、その国を治め続けたという。
いかがだろうか。
生まれたときの運命で人生は決まってしまう。
いかに天命が決まっているとしても、生まれてからの生き方が、人生を変えていくという大切なメッセージが、この逸話には現されている気がする。
私は天命を鑑定するが、それだけで終わらせない。
いかに生きる道を探すべきか。またいかに生きるべきか。
そこまで踏み込んでアドバイスをしていきたいと考えている。
良い人生に、佳い生活に幸あれ。