「良い商品なのに売れない」のは、顧客が途中で止まっているからかもしれない
これまで、JTBD、デザイン思考、リーンスタートアップ、MVP、PMFと、顧客起点の商品企画について取り上げてきました。
顧客課題を発見する。
解決策を考える。
MVPで検証する。
市場との適合性を高める。
ここまで進めても、商品が自然に売れるとは限りません。
なぜなら顧客は、商品を知った瞬間に購入するわけではないからです。
例えばBtoBの商品であれば、
商品を知る。
自社の課題に使えるか考える。
Webサイトを見る。
カタログを確認する。
営業担当者へ問い合わせる。
競合商品と比較する。
社内で相談する。
評価試験を行う。
予算を確保する。
稟議を通す。
購入する。
実際に使用する。
という長いプロセスを経ることがあります。
この途中のどこかで、
「よく分からない」
「面倒だ」
「今でなくてもいい」
と思われれば、顧客は離脱します。
そこで重要になるのが、カスタマージャーニーという考え方です。
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カスタマージャーニーとは?
カスタマージャーニー(Customer Journey)とは、直訳すると「顧客の旅」です。
マーケティングでは、
顧客が商品・サービスを認知してから、情報収集、比較検討、購入、利用、継続に至るまでの一連の体験
を指します。
企業側から見ると、
広告。
Webサイト。
展示会。
営業。
見積もり。
納品。
アフターサービス。
などは、それぞれ別の業務です。
しかし顧客から見れば、すべて同じ会社との体験です。
つまり、
企業は部門単位で動いていても、顧客は一つの連続した体験として企業を評価している
のです。
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カスタマージャーニーマップとは?
カスタマージャーニーを可視化したものが、カスタマージャーニーマップです。
一般的には横軸に顧客の行動段階を置きます。
例えば、
認知
↓
興味・関心
↓
情報収集
↓
比較検討
↓
購入
↓
利用
↓
継続・推奨
という流れです。
そして縦軸に、
顧客の行動。
顧客の思考。
顧客の感情。
企業との接点。
顧客が困っていること。
企業側の施策。
などを整理します。
これによって、
顧客がどこで困り、どこで離脱し、どこに改善機会があるのか
を可視化できます。
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なぜカスタマージャーニーが必要なのか?
企業では、各部門がそれぞれのKPIを持っています。
マーケティング部門はアクセス数。
営業部門は商談数。
商品部門は売上。
サービス部門は問い合わせ対応。
それぞれの数字が良くても、顧客体験全体が良いとは限りません。
例えば広告によってWebサイトへのアクセスが増えても、
商品情報が分かりにくい。
問い合わせ方法が分からない。
問い合わせても回答が遅い。
営業から同じ質問を何度もされる。
となれば顧客は離れてしまいます。
カスタマージャーニーを使うことで、
部門ではなく顧客視点からマーケティング全体を見る
ことができます。
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最初に「誰の旅なのか」を決める
カスタマージャーニーマップを作る際、最初に必要なのが顧客の設定です。
例えば、
「製造業の顧客」
では広すぎます。
大企業と中小企業では購買プロセスが違います。
研究開発担当者と購買担当者でも、知りたい情報が違います。
そこで、
業界。
企業規模。
担当部署。
役職。
抱えている課題。
購買目的。
などを具体化します。
つまり、
ペルソナとカスタマージャーニーはセットで考える
と理解しやすいでしょう。
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顧客の「行動」を書く
次に、それぞれの段階で顧客が何をしているのかを書きます。
例えばBtoB設備なら、
認知
検索する。
展示会へ行く。
業界メディアを見る。
営業担当者から紹介される。
情報収集
Webサイトを見る。
カタログをダウンロードする。
仕様を確認する。
導入事例を探す。
比較検討
競合商品と比較する。
営業へ問い合わせる。
評価機を依頼する。
価格を確認する。
購入
社内説明資料を作る。
予算申請する。
稟議を通す。
発注する。
利用
設置する。
操作方法を覚える。
実際の工程で使う。
継続
追加購入する。
他工程へ展開する。
他部署へ紹介する。
このように具体的な行動を書き出します。
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「何をしているか」だけでは不十分
カスタマージャーニーで重要なのは、行動だけではありません。
そのとき顧客が、
何を考えているか
を想像します。
例えばWebサイトを見ている顧客なら、
「自分の用途に使えるのか?」
「必要な仕様を満たしているか?」
「どの型式を選べばいいのか?」
「実績はあるのか?」
「価格はいくらなのか?」
と考えているかもしれません。
企業側が、
「当社は創業○○年です」
という情報を強く訴求していても、顧客が知りたいのが、
「この液体に使えるのか?」
であれば情報が噛み合っていません。
つまり、
企業が伝えたい情報ではなく、その瞬間に顧客が知りたい情報を提供する
ことが重要です。
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顧客の「感情」も見る
カスタマージャーニーでは、感情も重要です。
例えば、
商品を発見する
→「使えそうだ」
仕様を見る
→「種類が多くて分からない」
問い合わせる
→「回答が早くて安心した」
見積もりを見る
→「思ったより高い」
評価試験をする
→「これなら問題を解決できそうだ」
というように、顧客の感情は変化します。
特に、
不安・迷い・面倒
が強くなる場所は、顧客が離脱しやすいポイントです。
この場所を改善することが、マーケティング施策につながります。
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タッチポイントとは?
顧客と企業が接触する場所を、**タッチポイント(Touchpoint)**と呼びます。
例えば、
Google検索。
SNS。
広告。
Webサイト。
YouTube。
展示会。
カタログ。
営業担当者。
代理店。
メール。
電話。
製品。
マニュアル。
アフターサービス。
などがあります。
重要なのは、
すべてのタッチポイントで一貫した顧客体験を作ること
です。
Webサイトでは「簡単導入」と書いているのに、問い合わせると複雑な手続きが必要なら、ブランド体験にズレが生まれます。
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BtoBのカスタマージャーニーは複雑
BtoCでは、商品を調べる人と購入する人が同じケースが多くあります。
しかしBtoBでは、
使用者。
技術担当者。
品質保証。
購買担当者。
部門長。
経営者。
など複数の人物が購買へ関与します。
例えば技術担当者が、
「この設備を導入したい」
と思っても、
購買担当者は、
「価格が高い」
と考えるかもしれません。
経営者は、
「投資効果は?」
と考えます。
つまりBtoBでは、
一つの企業の中に複数のカスタマージャーニーが存在する
と考える必要があります。
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BtoBでは「社内説明」を支援する
BtoBマーケティングで見落とされやすいのが、顧客企業内部での説明です。
担当者が商品を評価してくれたとしても、その担当者だけで購入を決められるとは限りません。
上司。
購買。
品質保証。
経営層。
へ説明する必要があります。
そこで企業側が、
導入効果。
競合比較。
投資回収。
安全性。
導入実績。
評価データ。
などを資料として提供すると、顧客の社内説明がしやすくなります。
つまり営業資料は、
営業担当者が説明するためだけではなく、顧客が社内を説得するためのツール
でもあるのです。
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「購入」でジャーニーを終わらせない
カスタマージャーニーを、
認知 → 比較 → 購入
で終わらせるケースがあります。
しかし、購入後こそ重要です。
特にBtoBでは、
導入。
立ち上げ。
教育。
保守。
追加購入。
横展開。
まで長い関係が続きます。
例えば購入後に、
操作方法が分からない。
問い合わせ先が分からない。
部品の購入方法が分からない。
という問題が起これば、次回は競合へ切り替えられるかもしれません。
逆に導入後の体験が良ければ、
リピート。
追加購入。
他部署への紹介。
他工場への展開。
につながります。
これは前回取り上げたPMFを確認するうえでも重要な行動です。
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カスタマージャーニーとマーケティングファネルの違い
マーケティングファネルでは、
認知。
興味。
比較。
購入。
というように、顧客が徐々に絞り込まれていく構造を見ます。
一方、カスタマージャーニーでは、
それぞれの段階で顧客が何をして、何を考え、何を感じているのか
まで詳しく見ます。
つまり、
ファネル
→ 顧客がどの段階にいるかを見る。
カスタマージャーニー
→ その段階でどんな体験をしているかを見る。
という違いがあります。
両方を組み合わせると、マーケティング施策をより具体化できます。
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カスタマージャーニーからコンテンツを考える
カスタマージャーニーを作ると、
「どんなコンテンツを作ればいいのか」
も見えてきます。
例えば、
認知段階
顧客はまだ商品を探していない。
→ 課題解説記事、SNS、業界情報。
情報収集段階
解決方法を探している。
→ 基礎解説、選定ガイド、ホワイトペーパー。
比較検討段階
商品を比較している。
→ 仕様比較、導入事例、FAQ、評価データ。
購入段階
社内承認を進めたい。
→ ROI資料、導入効果、見積もり、実績。
利用段階
正しく使いたい。
→ マニュアル、動画、FAQ、技術サポート。
このように、
顧客の状態によって必要なコンテンツは違う
のです。
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AI時代はカスタマージャーニーが複雑になる
生成AIの普及によって、顧客の情報収集方法も変化しています。
従来は、
Googleで検索する。
Webサイトを見る。
比較サイトを見る。
という行動が中心でした。
現在は、
生成AIへ質問する。
AIに商品を比較してもらう。
レビューを要約してもらう。
仕様を比較してもらう。
という行動も増えています。
つまり企業が直接顧客へ情報を届ける前に、
AIが情報を整理して顧客へ提示する
場面が増えていきます。
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AIに「見つけてもらえる情報設計」も重要になる
これからはSEOだけでなく、
商品仕様。
用途。
FAQ。
導入事例。
技術情報。
価格情報。
などを、AIが理解しやすい形で整理することも重要になります。
顧客のジャーニー上に、
検索エンジンだけでなく、
生成AIという新しいタッチポイント
が加わったと考えることができます。
企業は、
「顧客が自社Webサイトへ来た後」
だけではなく、
顧客がAIへ質問している段階からどう情報接点を作るか
を考える必要があります。
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カスタマージャーニーは「想像」で作って終わらない
カスタマージャーニーでよくある失敗が、会議室だけで作ることです。
マーケティング担当者が、
「顧客はきっとこう考えるだろう」
と想像して作る。
これでは仮説にすぎません。
実際には、
顧客インタビュー。
Webアクセスデータ。
検索キーワード。
問い合わせ内容。
営業日報。
失注理由。
顧客アンケート。
サービス問い合わせ。
などを使って検証する必要があります。
つまりカスタマージャーニーは、
一度完成させる資料ではなく、顧客データによって更新し続ける仮説
です。
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カスタマージャーニーの実践6ステップ
実務では次の順番で作ると分かりやすくなります。
STEP1:ターゲット顧客を決める
誰のジャーニーなのかを明確にします。
STEP2:購買プロセスを書き出す
認知から購入後までの段階を整理します。
STEP3:行動を書く
各段階で顧客が何をしているかを書きます。
STEP4:思考・感情を書く
何を知りたいのか、何に不安を感じるのかを整理します。
STEP5:タッチポイントを書く
Web、営業、展示会、代理店などとの接点を整理します。
STEP6:課題と施策を考える
顧客が止まっている場所を見つけ、改善策を考えます。
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よくある失敗
企業側の販売プロセスを書く
「営業訪問→見積もり→受注」ではなく、顧客が何をしているかを書きましょう。
一人の担当者だけを見る
BtoBでは複数の意思決定者が存在します。
購入で終わる
利用、継続、紹介まで含めることでLTV向上につながります。
想像だけで作る
顧客インタビューや実際のデータで検証しましょう。
きれいなマップを作って満足する
目的は資料作成ではなく、顧客体験を改善することです。
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まとめ
カスタマージャーニーとは、
顧客が商品を認知してから、情報収集、比較、購入、利用、継続に至るまでの体験を「顧客視点」で捉える考え方
です。
重要なのは、
企業が何を売っているかではなく、
顧客がその瞬間に何をして、何を考え、何に困っているか
を見ることです。
顧客の行動。
思考。
感情。
タッチポイント。
課題。
を可視化すると、
「どこで顧客が止まっているのか」
が見えてきます。
これまで取り上げた流れで考えると、
JTBDで顧客が達成したいことを理解する。
↓
デザイン思考で課題と解決策を探索する。
↓
MVPで仮説を検証する。
↓
PMFで商品と市場の適合を確認する。
↓
カスタマージャーニーで、顧客がその商品を知り、選び、使い続けるまでの体験を設計する。
ここまでつなげることで、商品企画とマーケティングを一つの顧客体験として考えられるようになります。
良い商品を作るだけでは、顧客には届きません。
顧客が商品に出会い、理解し、納得し、購入し、使い続けるまでの「旅」そのものを設計する。
それがカスタマージャーニーを活用する本当の目的です。
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要約
カスタマージャーニーは、顧客が商品・サービスを認知し、情報収集、比較検討、購入、利用、継続するまでの行動・思考・感情・タッチポイントを可視化する考え方です。BtoBでは使用者、技術担当、購買、経営層など複数の意思決定者が関わるため、それぞれの購買プロセスを理解することが重要です。マップを作ること自体ではなく、顧客が不安や不便を感じている接点を発見し、Web、コンテンツ、営業、サービスを改善することが目的です。生成AIが新たな情報収集の接点となる中、AIを含めた顧客体験設計も重要になっています。
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