1. 予防保全の罪:「まだ使えるもの」を捨てる愚かさ
製造現場でよく聞く「突発停止ゼロ」というスローガン。
一見すると正しい目標に思えますが、これを真に受けて過剰な予防保全(定期保全)に走ると、現場は予算オーバーと人手不足で一発で詰みます。
「カレンダーで3ヶ月経ったから交換」
「規定時間に達したから、まだ動くけれど新品に交換」
ルールや時間だけで切り替える運用は、資材費の莫大な無駄遣いです。機械や工具を扱う現場の人間からすれば、「まだピンピンしているのに捨てる」のはコスト的にも精神的にも強い違和感があります。
高額な設備投資や過剰な計画保全で人手と予算をすり減らすくらいなら、「限界まで道具の寿命を使い切る」ほうがはるかに合理的です。
2. 状態監視AIも不要。最強のセンサーは「現場オペレーターの違和感」
「限界まで使うと、突発停止が怖い」という反論があります。
だからといって、高価な状態監視システム(CBM)やAIを導入するのは本末転倒です。
設備が限界を迎えるとき、機械は必ず前兆を出します。
「いつもと少し音が違う」
「手に伝わる振動のノリが変わった」
「製品の寸法バラツキや打痕が出始めた」
高額なAIを買わなくても、毎日機械と向き合っているオペレーターの五感と「職人のカン(微細な違和感)」こそが、コストゼロの超高性能センサーです。
「仕事を止めたくない」「自分たちのラインを無駄なく回したい」という現場の誇りと責任感。これこそが、いくらお金を積んでも買えない会社一番の財産です。
3. TPMは大袈裟にやると潰れる。「日々に溶け込ませる」のが正解
かつて流行したTPM(全員参加の生産保全)も同様です。
全社運動として一度にやり尽くそうとすると、膨大な書類作成や型通りの報告に追われ、「保全のための保全」で現場が疲弊して終わります。
しかし、TPMの根底にある「自分の機械は自分で守る」という考え方を大袈裟なイベントにせず、日々のルーティンにサラッと溶け込ませるなら話は別です。
始業前の清掃や給油のついでに、異音や振動がないか見る。加工音の変化に「ん?」と気づく。
この「日常に溶け込んだ目と耳」があれば、高価なシステムは要りません。
4. 「使い切り」と「仕事を守る」を両立する「事後計画保全」
限界まで使い切りつつ、突発停止のドタバタ劇を避ける。この絶妙なコントロールを可能にするのが「事後計画保全」です。
不調を捉える(事後・使い切り限界の察知)
オペレーターの「違和感」を初期アラートとし、「まだ動くが、そろそろ寿命だな」と把握する。
走らせながら手配する(事前段取り)
機械を止めずに動かしたまま、交換部品・工具・手順・人員を100%揃える。
狙い撃ちでサッと替える(計画・停止損の最小化)
準備が完璧に整ったら、休日や生産の合間などの「ノーダメージな時間」を狙い、短時間で一気に交換を完了させる。
まとめ:職人技のコスト感覚こそが、最強の現場力
「突発停止ゼロ」という机上の空論に振り回され、過剰な予防保全で現場を疲弊させる経営や管理は間違っています。
「極限まで使い切って、不調の兆候でサッと手配し、休日にサッと替える」
この「使い切る美学」と「事後計画保全」の組み合わせこそが、高価なAIシステムにも負けない、現場叩き上げの最も賢い利益の残し方です。