犬に人の市販薬、鎮痛薬は危険!イブプロフェン中毒の怖さとは?!獣医師が解説!

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イブプロフェンとは非ステロイド系抗炎症薬(Non-steroid antinflammatory drug:NSAIDS)の1種で、一般大衆薬の解熱鎮痛薬の70%以上の製品に含まれている物質です。

多くの鎮痛薬、解熱薬、抗炎症薬はこの種類の薬に属します。

○ペットに害を及ぼした危険なお薬トップ10

ASPCAが2007年にペットが間違って処方薬や一般用医薬品を飲んでしまった89000事例を調査した結果です。
数が多い順ですが、

消炎鎮痛剤
抗うつ剤
アセトアミノフェン(解熱・鎮痛薬)
メチルフェニデート(AHDHの治療薬)
フルオロウラシル(抗がん剤)
イソニアジド(結核治療薬)
エフェドリン(咳止め)
経口糖尿病薬
ビタミンD(骨粗鬆症薬)
バクロフェン(筋弛緩薬)


イブプロフェンは市販薬にもあり一般的なNSAIDsで鎮痛解熱剤として広く扱われています。

しかし、犬、猫では安全域が狭く、小動物領域では処方されることはなく、誤食による中毒がほとんどです。

誤食以外にも、医療従事者や、鎮痛剤としてよく飲んでいる飼い主は、同じ感覚で愛犬が痛がっているときに飲ませてしまうこともあります。

愛犬が、飼い主のイブプロフェンを食べてしまった。

また病院がやっていない時に、愛犬がどこかを痛がり出して、何か痛み止めを飲ませたい方もいるのではないでしょうか?

ヒトでは消化器に対する副作用が少ないですが、動物で同じように副作用が少ないという報告はないです。

本記事では、そんなイブプロフェンが体内に入ってしまった時に起こる症状、病態、対処法に至るまでをまとめました。

限りなく網羅的にまとめましたので、イブプロフェンを与えようと思っている飼い主、愛犬が飲んでしまった飼い主は是非ご覧ください。

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✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、 論文発表や学会での表彰経験もあります。

今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中! 

記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】や詳しい実績はこちら!

✔︎本記事の内容

犬に人の市販薬、鎮痛薬は危険!イブプロフェン中毒の怖さとは?!

犬がイブプロフェンを食べてしまった時に起こる病態

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イブプロフェンはシクロオキシゲナーゼを不活性化し、プラスタグランジンE2を含む数種のプロスタグランジンの生成を阻害します。

高用量では、呼吸中枢を調節刺激し、最初に呼吸性アルカローシスを引き起こします。

さらに高血糖と糖尿を続発します。

その結果、胃腸管は血流量を減じ、胃粘膜分泌を低下させ、胃腸管の貧血、及び潰瘍化を引き起こします。

プロスタグラジンの抑制は、腎血流量を減少させ、腎細管壊死と急性腎不全を招きます。

しかし、最近のカルプロフェンと言ったNSAIDsは、プロスタグランジン生成の阻害の減少と、特異的抗炎症作用のため中毒性副作用は殆ど報告されていません。

犬がイブプロフェンを食べてしまった時の中毒の症状

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初期の症状は、摂取後4-6時間で出現します。

腹痛、貧血、黒色便、抑鬱、嘔吐、食欲不振や嗜眠、呼吸促迫、及び発熱が認められます。

嘔吐物は胃腸潰瘍の形成により、出血を帯びることがあります。

中枢神経の抑制は、筋肉の衰弱と運動失調を招きます。

過量投与による症状としては嘔吐、消化管出血、発作、低血圧、徐脈、頻脈、心房細動、代謝性アシドーシス、昏睡、急性腎不全、ナトリウム停留、高カリウム血症、呼吸抑制などの症状があります。

昏睡は、数日以内に起こります。

胃腸潰瘍や穿孔は、数日間に渡って繰り返し飲んだ場合に認められます。

非ステロイド系消炎鎮痛剤で一般的である消化管障害(潰瘍、粘膜面のびらん・充出血、嘔吐など)と、これに伴う出血(黒色便の排泄、糞潜血陽性)、貧血が考えられます。

その他に腎障害(近位尿細管上皮細胞の変性、萎縮、BUN の上昇)が認められます。

犬がイブプロフェン中毒を起こした時の治療

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特異的な解毒剤はないため、胃腸の潰瘍形成予防、急性腎不全の補正や予防を目的とした治療となります。

摂取直後(2-4時間)、または症状が現れていない時は催吐処置が可能です。

摂取後症状が出ていなければ胃洗浄も有効です。

しかし摂取後、長時間が経過している場合はこれらの処置の効果は乏しくなります。

また他の多くの中毒に対する治療と同様に、嘔吐による脱水、電解質の補正、利尿の促進を目的とした静脈内輸液を行います。

その他には、活性炭、生理食塩水での洗浄の実施:必要に応じて4−6時間毎にする必要が出てきます。

犬がイブプロフェン中毒を起こす中毒量

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犬では50mg/kgでも中毒量になり得ます。

犬がイブプロフェンを食べた時の対処

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対処法は3つに大別されます。

動物病院では、まず胃の内容物を吐かせて外に出し、その後、胃の洗浄をして、活性炭や下剤を投与するといった治療がおこなわれます。

イブプロフェン中毒の症状や原因となるものを、体外に排出することが最優先されます。

そのまま様子を見る(勝手に吐く、あるいは、便で出るのを待つ or 毒物なら点滴して希釈する)
吐かせる
点滴などの対症療法

摂取後2時-4時間以内であれば、催吐薬の投与を行い吸着剤の投与を併用します。

催吐の効果が認められられない場合には、胃洗浄を行うこともあります。

しかし摂取後時間が経過している場合は催吐薬の投与、洗浄は行わずに吸着剤の投与を行います。

時間が経過している場合は催吐、並びに胃洗浄は体への負担が生じるだけで効果が認められません。

多くの中毒と同様に嘔吐による脱水、電解質の補正のための輸液などの対処量を行います。

犬がイブプロフェンを食べてしまった時の応急処置と対処法

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原則は病院の受診です。

病院で安全な催吐処置をしていただくことが最善です。

しかし、周りに病院がない場合、離島などで病院受診が困難な場合は自宅で吐かせるしかありません。

自宅でできる催吐処置は元々非常に危険で、それが原因で命を落とすこともあり、うかつに行うと危険です。

炭酸ナトリウム 小型犬:0.5g/頭  中型犬以上:0.5-1g/頭  口腔内投与
3%過酸化水素(オキシドール) 1-2ml/kg

上記はあくまでも参考です。

決して気軽に自己判断で行わないでください。

犬がイブプロフェン中毒を起こした時の予後

迅速にイブプロフェンの除去を行うことができれば良好です。

重度の貧血、肝障害が認められる場合の予防は要注意から不良です。

イブプロフェン中毒の予防

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飼い主、特に人医療関係者の中には、犬や猫を動物病院に連れていかず、不十分な知識で治療を試みる方もいます。

そのため十分な注意喚起が重要になります。

また、飼い主には誤食を防止するため、動物の手の届かない範囲に薬を保管するなどの工夫をしてもらう必要があります。

いずれも人間が飲む薬であり、使用頻度が高い薬でもあります。

ペットに勝手に人間の薬をあげてはいけないことと、薬の保管場所はきちんとした方がいいです。



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