追いかけるのをやめたら、見えてきたもの

追いかけるのをやめたら、見えてきたもの

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コラム

以前の私は、いつも彼を追いかけていた。

「今日は何をしているの?」

「次はいつ会える?」

そんな何気ない言葉の裏には、いつも小さな不安が隠れていた。

返事が遅いだけで寂しくなり、彼の気持ちを確かめたくなった。

彼に愛されることが、私の幸せだと思っていた。

でも、ある日ふと気づいた。

私はいつから、自分の幸せを彼に預けてしまったのだろう。

秋の京都。

お気に入りの着物を着て、ひとりで街を歩いた。

紅葉に染まる木々を眺め、静かな喫茶店で温かいお茶を飲んだ。

誰かの返事を待つこともなく、時間を気にすることもなく。

ただ、自分の好きなように過ごす午後。

こんなにも心が穏やかになるなんて、知らなかった。

その夜、彼から連絡があった。

「最近、連絡してこないね」

私は微笑んだ。

「そうね。毎日が楽しくて」

彼は少し驚いたようだった。

以前なら、彼からの連絡が嬉しくて、すぐに次の約束をしていただろう。

でも今は違う。

彼と過ごす時間も大切。

けれど、ひとりで過ごす時間も同じくらい愛おしい。

誰かに必要とされることで、自分の価値を確かめなくてもいい。

愛されるために、無理をしなくてもいい。

追いかけるのをやめたのは、愛情がなくなったからではない。

自分自身を、ようやく愛せるようになったから。

窓の外には、美しい月が浮かんでいた。

私は静かにお茶を飲みながら、心の中でつぶやいた。

「今の私が、一番好き」


月乃こころ🌙





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