※Webサイトに掲載している記事のダイジェスト版となります。
■『グループシンク(集団浅慮)』とは?
特定の議題について議論し結論を出す会議や、業務上の問題解決をしたり進捗を共有するミーティングのどちらも、企業組織などの集団における「合意形成」を目的として行われます。
それらを実施する際には、「集団」だからこそ生じてしまう『グループシンク』という「落とし穴」に注意が必要です。
『グループシンク(Group think)』とは、集団で合意形成を図る際に、不合理な意思決定や望ましくない行動が容認されてしまうことを意味し、『集団浅慮(しゅうだんせんりょ)』や『集団思考』とも呼ばれています。
◆提唱したのは?
この『グループシンク(集団浅慮)』という考え方は、アメリカにあるイェール大学の社会心理学者、アーヴィング・ジャニス 氏によって提唱されました。
1941年の真珠湾攻撃のリスクを過小評価したことや、1961年のキューバ侵攻作戦の失敗などについて、『グループシンク(集団浅慮)』の観点から考察しました。
◆グループシンクとグループシフト
『グループシンク』と似た言葉に『グループシフト』がありますが、違いとしては以下の通りです。
●グループシンク:別名、集団浅慮。集団で合意形成を図る際に、不合理な意思決定や望ましくない行動が容認されてしまうこと。
●グループシフト:別名、集団傾向。同じ意見や思考を持つ人同士が議論することにより、極端な方向性や指針が決まってしまうこと。
■『グループシンク(集団浅慮)』に陥ることで生じる兆候
『グループシンク(集団浅慮)』に陥ってしまうことで生じる代表的な兆候は、以下の3つが挙げられます。
●「自信過剰」な集団になる
●『ステレオタイプ』な見方が強まる
●異論を受け入れず封殺する
◆「自信過剰」な集団になる
『グループシンク(集団浅慮)』に陥ると、集団としての能力に過剰な自信を持つようになります。
過剰な自信を持ってしまうことで、業績不振などの兆候があったとしても「問題ないだろう」と楽観的に捉えるようになり、リスク要因を過小評価することになります。
また都合の悪い意見や情報を遮断するようにもなり、集団・組織としての自浄能力を失うことにもなってしまいます。
◆『ステレオタイプ』な見方が強まる
集団として自信過剰になってしまうことで「精神的閉鎖性」が強くなり、偏った考え方に傾倒するようになります。
すると、自身が所属する集団にとって不利益・不利な情報を割り引いて解釈するようになってしまいます。
また、『ステレオタイプ』のように、先入観や固定観念という「色メガネ」を介して物事を捉えるようになり、「型にはめて」決めつけを行う傾向が強まるようになります。
◆異論を受け入れず封殺する
意見が斉一化(せいいつか)することも、『グループシンク(集団浅慮)』に陥ってしまった際の兆候の1つです。
意見交換や議論をする際、異議・異論を唱える人物に対して、圧力や中傷が加えられやすくなります。
そのため、問題を指摘することができなり、また指摘したとしても、握りつぶされてしまいます。
■『グループシンク(集団浅慮)』の発生例
『グループシンク(集団浅慮)』には、事例となるような有名な事象や実際の企業組織で起こりがちなケースなど、さまざまあります。
◆ピッグス湾事件
有名な『グループシンク(集団浅慮)』の発生例としては、アメリカ史に残る軍事作戦の失敗として知られている「ピッグス湾事件」が挙げられます。
1961年に発生したピッグス湾事件とは、アメリカのジョン・F・ケネディ政権が、カストロ政権を倒すために起こしたピッグス湾への侵攻作戦のことです。
2,000人程度のキューバ反政府軍に依存している、空軍の援護や物資補給が不十分であるなどの不安要素があり、作戦を練っていた段階で反対意見が噴出していましたが、権威のある専門家やCIA(米中央情報局)の見解にケネディらがそのまま従ってしまい、作戦を決行。結果、失敗することになりました。
つまり、作戦を立てる段階であがっていた反対意見(不安要素)をあえて見過ごし、根拠の薄い肯定的な意見を採用するという『グループシンク(集団浅慮)』が生じてしまい、失敗という結果につながってしまったということです。
◆チャレンジャー号爆発事故
1986年に発生した、NASAのスペースシャトルであるチャレンジャー号の打ち上げ失敗事故。
この事故が発生してしまった原因としては、スペースシャトル打ち上げのプロジェクトメンバーに、過度のプレッシャーやストレスがかかっていたことが挙げられています。
当時、チャレンジャー号の打ち上げプロジェクトではトラブルが続いており、打ち上げが延期になってしまうと予算の縮小や計画自体の見直しが検討されてしまう恐れがありました。
そのプレッシャーやストレスから、スペースシャトルの構成部品を製造した会社から不具合の報告があったにも関わらず、打ち上げを強行してしまいました。
NASAでは、問題が解決するまで関係者全員で議論を重ねるルールがありましたが、リスクに関する意見交換を徹底せずに「打ち上げ成功」という成果を優先した結果、打ち上げ直後に大爆発が起こり、チャレンジャー号に搭乗していた7名の乗組員が亡くなってしまいました。
この事例のように、通常時は優秀な集団であったとしても、プレッシャーやストレスがかかる環境下においては、人命にかかわるような議論であっても不適切な結論を導き出してしまうという『グループシンク(集団浅慮)』が発生する場合があります。
◆政治における決定プロセス
身近な例としては、政治における決定プロセスが挙げられます。
有力な派閥に属する一部の議員が特定の政策に固執し、ほかの多くの議員がそれとは異なる意見を持っている場合、有力な派閥に属する議員らと異なる意見を抑え込もうとする『グループシンク(集団浅慮)』が生じ、最終的な政策決定に誤りや歪みが生じてしまうことがあります。
◆社内で不合理な意思決定をしてしまう
ビジネスにおいて身近なケースとして、会社での議論の場において、参加者のパワーバランスを考慮したりその場の空気を読んで、不合理な意思決定をしてしまう、という事態が挙げられます。
すると、「みんなで決めたことだから間違っていない」という幻想が生まれ、現実性の有無を踏まえずに無茶な施策を推し進めたりするようになってしまいます。
◆不祥事が起きてしまう
『グループシンク(集団浅慮)』による「不合理な意思決定」の具体例として「不祥事」が挙げられます。
集団としての「和」を重視しようとする「企業文化」が社内に浸透していると、企業組織として欠かせない倫理観や道徳観を無視しやすくなり、企業規模やホワイト・ブラックという企業体質問わず、コンプライアンス違反やハラスメント問題などの「不祥事」が起こりやすくなってしまいます。