すい臓がん余命1か月施設に看取りの方への残りの時間をどうすごせるか?

すい臓がん余命1か月施設に看取りの方への残りの時間をどうすごせるか?

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すい臓がんの進行は非常に早く、余命1か月と告げられた段階では、体調の急変と強い不安が同時に押し寄せます。そのため、一般的な長期的なACP(人生会議)とは異なり、「迅速な苦痛緩和」と平行して「今、最も大切にしたいこと」をピンポイントで確認し、即座に実現に移す速攻型のACPが求められます。

「飼い犬🐶に会いたい」という切実な思いを軸に、訪問看護師が本人・ご家族へ行った具体的な声かけと、ACP展開のプロセスです。

1. ご利用者本人への声かけとACP(思いの引き出し)
余命宣告直後は「もう何もできない」と諦めの境地にいらっしゃることが多いため、最初から「最期はどうしたいか」という重い質問はしません。
まずは身体の辛さを和らげたうえで、心の奥にある「愛着」に触れる問いかけを行います。


【具体例・声かけのプロセス】

① 苦痛緩和の保障と安心感の提示

「〇〇さん、お腹や背中の痛みが少し和らいで、夜は眠れましたか? 私たちは〇〇さんが痛みに苦しむことなく、一番楽な状態で過ごせるよう全力でサポートしますね。だから、辛いときは何でも我慢せずに教えてください。」

愛着・関心のある話題から「今やりたいこと」を引き出す
(アロマオイルでのハンドトリートメントなど、触れ合いながら)

「お家で一緒に過ごしていたワンちゃん(例:ポチちゃん)のこと、長女さんから伺いましたよ。可愛いお写真ですね。今でも、ポチちゃんのことをよく思い出されますか?」

(本人の反応:「会いたいけれど、施設だし、私のこんな姿を見せるのも…」)

「会いたいですよね。その気持ち、とっても大切です。施設でどうすれば安全に会えるか、私たちが一緒に考えますよ。
『こんな姿だから』なんて思わないでくださいね。ワンちゃんもきっと、〇〇さんに会いたがっていますから。」

今後の過ごし方の意思確認(速攻型ACP)

「これからの時間を、〇〇さんが一番心地よく、自分らしく過ごすために、私たちができるお手伝いをしたいと思っています。
『これだけはやっておきたいこと』や『こういう風に過ごしたい』というご希望があれば、どんな小さなことでも教えていただけますか?」

2. ご家族(長女様)への声かけとACP(意思決定支援・グリーフケア)
ご家族は「母の命が短い」というショックと、「何をしてあげればいいのかわからない」という無力感に包まれています。
ご家族の悲しみに寄り添いながら、「今だからこそできる役割」を感じてもらう声かけを行います。


【具体例・声かけのプロセス】

家族の動揺・揺らぎの受容

「突然のことで、頭の整理がつかないのも当然です。お一人で抱え込まず、私たちに不安な気持ちを吐き出してくださいね。お母様にとって何が一番良い選択か、一緒に考えていきましょう。」

「愛犬との面会」に向けた不安の解消と協力依頼

「お母様、『ポチちゃんに会いたい』とお話ししてくださいましたよ。長女様さえよろしければ、お母様とポチちゃんの再会を叶えてあげたいと考えています。施設のルールやお母様の体調に配慮しながら、安全に会える方法を計画しますので、協力していただけますか?」

看取りのプロセスと意向の事前共有(ACPの深め)

「今後、お母様の体力が落ちてウトウトされる時間が増えていく可能性があります。その時、延命処置(点滴を無理に増やしたり、病院へ救急搬送すること)ではなく、この慣れたお部屋で穏やかに過ごしていただく方針でよろしいでしょうか? 私たちが24時間体制でしっかり症状をコントロールし、最期までお側にいますので安心してくださいね。」

3. 「飼い犬に会いたい」を叶えるための多職種連携とケア設計
ご本人の願いを安全かつ確実に叶えるため、訪問看護管理者が主導して行った調整・プロセスの例です。

【本人の願い】「愛犬(ポチ)に会いたい」
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【アセスメント】
・体力の消耗を最小限に抑える必要がある(残された時間は約1か月)。
・施設内の衛生管理・他入居者への配慮が必要。
・感染・アレルギー・急な飛びつきによる事故を防止する。
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【具体的アプローチ・はからい】
 1. 施設側との交渉・ルールづくり:
    ・施設の中庭やテラス、または面会用個室を活用。
    ・抱っこできる小型犬であれば、ケージに入れた状態で搬入し、清潔な防水シートをベッドに敷いて接触させる。
 2. 状態の調整(タイミングの見極め):
    ・PCAポンプ(鎮痛薬)の調整で、痛みが最も少ない午前中の時間帯を設定。
    ・訪問看護師が面会時に立ち会い、バイタル変化や疲労度に配慮。
 3. ご家族へのレクチャー:
    ・犬を連れてくる際の手順や、万が一の際のケア(興奮させない声かけ等)をあらかじめ共有。
【実際の再会シーンと看護の介入】
面会当日、膝の上に抱えられたポチちゃんと対面したA様は、細くなった手で優しく体を撫で、「来てくれたのね、ありがとう」と涙を流されました。ポチちゃんもA様の手を静かに舐め、穏やかな時間が流れました。

訪問看護師は、A様の表情や酸素飽和度・呼吸状態をそっと見守りつつ、その様子を写真に収め、ご家族に手渡しました。

この「愛犬と会えた」という達成感と満足感は、A様に大きな心の安らぎをもたらし、その後の最期の日々を「やり残したことはない」という穏やかな気持ちで過ごされる支えとなりました。

まとめ:医療者としてのACPにおける心得
「言葉にならない思い」を拾い上げる:体調や病状の話だけでなく、本人の大切な思い出や家族・ペットへの愛着に目を向ける。

「できない理由」ではなく「できる方法」を探す:施設の規制や医療リスクを理由に断るのではなく、安全性を担保した代替案を提示する。

面会そのものをグリーフケアにする:愛犬と過ごした穏やかな時間の記憶は、見送った後のご家族にとっても「お母さんに希望を叶えてあげられた」という大きな救い・慰めになります。




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