コンサルタントの「聞く」とは? その1

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先日、「LISTEN」(ケイト・マーフィー著 日経BP)を読んでいる中で、私たち経営コンサルタントの「聞き方」に大変共通するものが数多く述べられていることに気づきました。改めて「聞くこと」の大切さを共感するとともに認識をあらたにしました。

例えば、

「出発点は他の人の声に耳を傾けること」

当たり前のことではありますが、私たちの日常生活は、振り返ってみれば常に人の話にまず耳を傾けることから関係がスタートしているのではないでしょうか。

経営コンサルタントもスタートにあたっては、相手先企業様のさまざまな方々の「話」を聞く「場」を設け時間をかけてお話を聞いています。

特に最初の段階における「聞く」ことが、その後のコンサルティングの方向性と効果に最も影響が出てくるものです。この段階ではひたすら聞いていきます。


「うわのそらになるのは、思考が話よりも速いから」

この場合「うわのそらになる」とは、例えばあなたが誰かの話を聞いている時に、自分の頭の中に浮かんでくる雑念のことです。その雑念のことについ気を取られてしまい、相手が何を話していたかを聞いていなかったことがありませんか。

「そういえば、早くあのメールに返信をしなければいけなかったんだ・・」「この後の会議用の資料も作らねばならない・・」「そういえば、あのメールの返信が来ないけどどうしたんだろうか・・」等々、目の前の相手が一生懸命に話している最中であっても、私たちの頭の中には他の考えや雑念が自然に湧いて出てきてしまうです。原因は私たちの脳の優れた解析能力にあります。

平均的な人は1分間で120~150ワード程度を話します。例えば、NHKのアナウンサーの方が話している内容を、私たちの脳は、持っている解析能力のわずか20%ほどで理解することができてしまうのです。すると残りの80%の脳の能力は何に使われるでしょうか?

脳は部分的に休憩していることができません。したがって、80%の脳が他のことを次々に考え始めてしまうのです。これが湧いてこないようにするには、相手の話に意識を集中して「聞く」ことです。

他のことは考えないと自分で決めて相手の話に全集中するのです。私自身も心掛けています。



「CIA(米国中央情報局)が採用するのは聞く力が優れている人」

かつてアメリカのCIA(米国中央情報局)で、26年間勤務していたバリー・マクナマス氏によれば、CIAはもともと聞き手として優れた人材を採用することに力を入れているそうです。そして、最も優秀な聞き手は、取り調べと諜報活動の部署に配置されるといいます。

CIAでは「事実」をいかにして相手からすべて聞き出せるか、ということが最重要であることが良くわかります。意外にも大変シンプルな能力が最重要視されていることに驚きました。



「良い聞き手とは、話し手と同じ感情になって聞ける人」

ミシシッピ大学のグレアム・ボディ教授によれば、聞き手がオウム返しをしたり、別の言葉で言いかえたりするよりも、話し手が話したことに対して、その意味づけと解釈を話し手に伝えた方が、話し手は理解してもらえたと感じるということがわかったといいます。

つまり、思いやりに満ちた聞き手の反応が優れた聞き手の条件なのです。ボディ教授は、自分がなぜその話を聞き手に話しているのか、自分にとってそれがどういう意味を持つのか。話し手はそれを聞き手に理解してもらいたいのだといいます。

コンサルタントとして企業先でお話を聞いている時には、自然に共感しながら聞くことが大切です。よくコンサルタントは、最初に「仮説」を持って聞くことが大切であり、そしてどこが仮説と異なっているのか、その要因はなにか等を考えながら聞くべきであるとよく言われているものです。確かに本来の聞く目的からすれば正しいと思います。

しかしながら、話をしている本人からすれば、コンサルタントが聞くことに集中してくれているとは思えないでしょう。何かを考えながら聞いている感触というものは、話し手からはわかるものだからです。

すると、本音は胸のずっと奥の方に隠れてしまうかもしれません。誰であってもどんな場合であっても相手の話を聞く立場になった際には、意識を全集中させて「聞く」という姿勢こそが第一に求められるものであると考えます。 
(次回に続く)

※引用書籍:「LISTEN」(ケイト・マーフィー著 日経BP)

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