家族との関わりから、“ことばが育つ瞬間”の温かさに惹かれ、言語聴覚士になりました。
私には、障がいを持つ弟がいます。弟は言葉を話すことが難しく、幼い頃から家族との関わりの中で、表情や視線、身振り、声のトーンといった“ことば以外の方法”で想いを伝えてくれていました。
言葉を交わさなくても、弟の喜びや不安が伝わってくる瞬間があり、その一つひとつが私にとって大切な学びでした。
伝えたいのにうまく伝わらないもどかしさ、そして小さくても確かに伝わった時の喜び──その積み重ねを家族として間近で感じてきたことが、私の原点です。
そうした日々を客観的に見つめるうちに、「ことばは音や発話だけでなく、人との関係や安心の中で育つもの」だと実感するようになりました。
遊びやスキンシップ、家族の笑顔など、日常のやり取りそのものが、ことばを支える土台になっていることに気づくことができました。
この経験から、「ことばだけでなく、伝える力そのものを支えたい」と思い、言語聴覚士を志しました。
専門的な学びを通じて、発達や心理、摂食嚥下、家族支援など、子どもを多角的に理解することの重要性を学びました。現場では、ことばが出ない子どもや発達に特性のある子どもと関わることも多く、弟との時間で培った“観察する力”と“寄り添う姿勢”が大きな支えになっています。
支援の中で私が大切にしているのは、「その子がどんな方法で世界とつながろうとしているか」に目を向けることです。
声の抑揚、視線の動き、手の伸ばし方──どんな小さな行動にも、子どもなりの“ことば”があります。遊びや日常の中で、子どもたちが「伝わった」「わかってもらえた」と感じる瞬間を積み重ねていけるよう、丁寧に関わることを心がけています。
今後は、家族支援にもより力を入れていきたいと考えています。
弟との経験を通して、「家族が安心して関わること」こそが、ことばや心を育てる力になると実感してきたからです。
家庭の中での関わりを大切にしながら、子どもと家族の“伝わる”喜びを支えていける存在でありたいと思っています。
ことばの支援とは、人と人とのつながりを支えること。
これからも、“ことばが育つ瞬間”の温かさを大切に、一人ひとりの「伝えたい」に寄り添い続けたいです。