【実例検証】平成30年西日本豪雨・真備町を「衛星SAR×AI」で解析してみた!〜雲を突き抜けて水没を捉えた仕組みとGIS活用〜

【実例検証】平成30年西日本豪雨・真備町を「衛星SAR×AI」で解析してみた!〜雲を突き抜けて水没を捉えた仕組みとGIS活用〜

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はじめに:豪雨の真っ只中、宇宙から地上はどう見えているのか?

近年、日本各地で激甚化する台風や線状降水帯。
河川の氾濫や内水氾濫が発生した際、自治体の防災担当者や企業の総務・BCP担当者が直面する最大の壁が「現地の状況がわからない(情報の空白)」です。

「道路が冠水・寸断されていて、現地に調査員を派遣できない」

「停電や通信障害で、工場や重要拠点の安全確認が取れない」

「ドローンを飛ばそうにも暴風雨で飛行不能。通常の光学衛星(カメラ)も分厚い雨雲に遮られて地表が真っ白で何も見えない」

こうした極限状況において、唯一無二の威力を発揮するのが「SAR(合成開口レーダー)衛星」と「AIによる画像解析」の組み合わせです。

今回は、2018年7月に未曾有の浸水被害をもたらした「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)・岡山県倉敷市真備町」の事例を題材に、当時の衛星データからAIがどのように浸水域を特定し、3D地形図やGISデータとして可視化したのか、実際の実績レポートを交えて詳しく解説します。

なぜ豪雨や夜間でも浸水がわかるのか?(SAR衛星の仕組み)


通常の人工衛星(光学衛星)は太陽の光を頼りに写真を撮るため、「夜間」や「雲に覆われた雨の日」は地表を撮影できません。

一方、SAR(サー:Synthetic Aperture Radar)衛星は、衛星自身が地表に向けて「マイクロ波(電波)」を発射し、跳ね返ってきた反射波を測定して画像化します。

この電波は「分厚い雨雲をすり抜け、夜の暗闇も関係なく地表に届く」という驚異的な特徴を持っています。

「水たまり」を見分ける原理:鏡面反射
宇宙から見て、そこが「地面」なのか「水」なのかを見分ける鍵は、電波の跳ね返り方にあります。

1. 乾いた地面や建物(ザラザラした面):
電波が四方八方に乱反射し、一部が衛星に戻ってくるため、画像では「白っぽく(明るく)」映ります。

2. 水没した道路や平滑な水面(ツルツルした面):
電波がまるで鏡のように正反射して宇宙の彼方へ逃げてしまうため、衛星に戻ってくる電波がゼロになり、画像では「真っ黒」に映ります。

AIは、災害前の平常時データと災害直後のデータを比較し、「普段は陸地だった場所が、不自然に真っ黒になっているエリア」を瞬時に特定することで、浸水エリアをあぶり出すのです。


実例検証:岡山県倉敷市真備町の浸水解析

それでは、実際にGeo Insight Worksの解析エンジンで処理した「岡山県倉敷市真備町」のデータを見てみましょう。

 ① 浸水前後の衛星データ比較(Before / After)
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災害前の平常時(2018年6月)と、決壊直後(2018年7月10日)の欧州宇宙機関(ESA)Sentinel-1衛星SAR画像を比較したものです。
平常時は市街地や農地が白く反射していた真備町の広範囲が、発災後には一気に暗く沈み込み、広大な水没域が生じていることが電波の反射強度からも明確に確認できます。

② AIによる浸水エリアの自動抽出と2Dマップ
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AIが標高モデル(DEM)や地表面のノイズフィルタリングを行い、誤検知(山の影など)を排除して「真の浸水域」だけを青色でポリゴン抽出した結果です。
小田川および高馬川の堤防決壊箇所から水が溢れ出し、低地部へ広がっていく浸水の全貌が、現地に立ち入ることなく広域で一目瞭然となります。

 ③ 3D地形モデルとの融合(浸水深と微高地の関係)
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単なる平面の地図だけでなく、国土地理院等の数値標高モデル(DEM)と重ね合わせることで、3D立体地形上での水没状況を再現できます。
これを見ると、「わずか数メートルの微高地(わずかに標高が高い場所)が島のように水没を免れていた様子」や、「窪地になっているエリアにどれだけ水が滞留していたか」が直感的に把握できます。



このデータはどんな業務に役立つのか?(ユースケース)


衛星SARによる浸水解析データは、研究用途にとどまらず、現在多くの企業・自治体・専門職の現場で導入が進んでいます。

① 企業のBCP(事業継続計画)・サプライチェーン防衛
工場の初動確認:遠隔地にある自社工場や下請けサプライヤーの敷地が冠水したかを数時間で把握。
迂回ルートの選定:浸水した主要幹線道路を避け、安全な物流ルートや物資輸送計画を迅速に立案。

② 損害保険・被災証明の客観的エビデンス
保険金請求・査定の迅速化:「水が引いた後」に現地へ行っても最大浸水時の範囲は分かりにくいですが、衛星データがあれば「ピーク時に敷地が冠水していた事実」を科学的・客観的に証明可能。

③ 不動産・重要施設の立地リスク調査
過去災害の履歴調査:公的なハザードマップ(机上の想定雨量計算)だけでなく、「実際に過去の大豪雨でどこまで水が来たのか」の観測実績を重ね合わせて土地の真のリスクを査定。

④ QGIS / ArcGIS による社内マッピング(GIS活用)
GeoJSONやESRI ShapefileなどのGIS形式でデータを取得することで、企業が自社で管理している「拠点住所リスト」「顧客分布図」「管内インフラ図」の上に直接レイヤーとして重ね合わせることが可能です。


まとめ:宇宙の視点を、あなたのビジネスの安心へ

これまで衛星データといえば、「国家機関や一部の大企業だけが使う高価で敷居の高い技術」と思われがちでした。
しかし現在では、民間オープンデータとAI技術の進化により、必要な地点・必要な災害について、誰でも手軽に高品質な解析レポートを入手できる時代になっています。

災害時の初動対応はもちろん、平時のリスクアセスメントや役員会への報告資料、社内勉強会、研究論文のエビデンスとして、ぜひ「宇宙からの客観的な目」をご活用ください。



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