知らないままでいたかった

知らないままでいたかった

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コラム
おはよう。

おやすみ。

ただいま。

おかえり。

何気ない、当たり前の挨拶。

でもね、当たり前って、
決して当たり前じゃないんよね。

何年もひとりで過ごしていると、
そんな挨拶を交わすこともなくなる。

朝起きても、
「おはよう」と言う相手はいない。

出かけて帰ってきても、
「ただいま」と言うだけ。

もちろん、返事はない。

そんな毎日に慣れてしまったはずなのに。

ふと、寂しくなることがある。

「ちょっと寂しいな」

そんなことを口にすると、

「それくらいしてあげるよ」

そう言ってくれる人がいる。

嬉しかった。

明日も言ってくれるかな。
明後日も言ってくれるかな。

そんな小さな楽しみができる。

でも、ずっと続くわけじゃない。

いつの間にか、
また何もない日常に戻ってしまう。

一度知ってしまったあたたかさは、
知らなかった頃よりも、
ずっと寂しく感じるんだね。

いなくなるなら、
知らないままでいたかった。

おはようも、
ただいまも、
おかえりも、
おやすみも。

そんな言葉のあたたかさを、
知らないままでいたかった。

……なんてね。

本当は、また言いたいんよ。

おはようって。

おかえりって。

今日も一日おつかれさまって。

そして、眠る前には、

おやすみって。

何気ない言葉を、
何気ない毎日の中で交わせること。

それが、私の欲しかった小さなしあわせなのかもしれない。


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