雨の駅で、彼の傘があなたのほうに傾いていた

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電車を待つ駅のホームに、雨が吹き込んでくる。傘を持っていないあなたの横に、知り合って一か月ほどの彼がたまたま立っていて、黙って傘を差し出してくれた。

今日、SNSに出している物語は、そんな場面から始まります。

物語の中のあなたは、迷ったのは少しだけで、傘に入ります。並んで電車を待つあいだ、傘はずっとあなたのほうに傾いていて、彼の左肩だけが少しずつ濡れていく。本人はそれに気づかないふりをして、映画の話をしている。

私が書きたかったのは、傘そのものではなくて、この傾きです。

恋愛の相談を受けていると、「この人は私のことをどう思っているんだろう」という悩みの多くが、言葉ではなく、こういう小さな仕草のまわりをぐるぐるしていることに気づきます。好きと言われたわけでもない。けれど、肩が濡れるのも構わずに傘を傾けてくれた。その事実が、あとから何度も思い返されるのです。

物語はそこで終わらず、そのあと半年ぶんの時間が流れます。初詣ではぐれそうになった日に、彼のほうから手を出してきたこと。落ち込んだ夜の電話で、励ましの言葉ではなく「今日、何食べた?」と聞かれたこと。桜の下で、彼が転職の迷いを打ち明けてくれたこと。そして五月の連休に、「夏、どこか行きませんか」と言われて、返事をする前に手帳を開いていたこと。

派手な出来事は何も起こりません。それでも読み終えたあとに、「彼との未来って、こんなふうに続いていくのかもしれない」と感じていただけたなら、この物語は役目を果たしたと思っています。

「近未来案内所」では、あなたと気になる相手のことをうかがって、あなたが主人公の物語を一本、書き下ろします。今の関係から半年、一年と時間が進んだとき、あなたのそばにどんな場面が待っているのか。それを、言葉にしてお渡しします。

傘を差し出してくれた彼のことが、あなたにもいるでしょうか。もしいるなら、その先の物語を、一緒に見に行きませんか。

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