ホテルの部屋というのは、どこか不思議な空間です。
真っ白なシーツに、壁に飾られた小さな絵、ちょっと使い勝手のわからない照明のスイッチ。そして何より、部屋に入った瞬間に私が最初に行う大切な儀式——それは「Wi-Fiのパスワードを入力する作業」です。
デスクの上に置かれた小さな案内カードを見つめながら、英数字をひとつずつ打ち込んでいく。
無事に接続されて、画面の端っこにアンテナマークがピシッと立った瞬間、心の中で小さくガッツポーズをします。よかった、これで今日も世界と繋がっていられる。
こうして無事にネットの海へと漕ぎ出した私は、ココナラを開いて「待機」のボタンを押します。
画面の向こうには、今この瞬間も誰かがいて、誰かと繋がろうとしている。静かなホテルの一室にいながら、オンラインの世界で人の温もりを感じられるのが、なんだか少し好きだったりします。
……と、ここまでは格好いい風なのですが、現実はそう甘くはありません。
正直にお話しすると、新しく始めたお仕事は、お世辞にも順調とは言えない状態です。
初日から華々しいスタートを切れるはずもなく、静かな画面を見つめながら「おーい、ちゃんと届いてますか〜?」なんて、つぶやきたくなるような日々です。
でも、そんなパッとしない現状のわりに、当の本人(=私)の心の中はというと、なんだか不思議とじんわり燃えていたりするのです。
「まあ、生活のためだしね」という、労働者としての切実な現実感。
「でも、ここで少しずつ頑張ったら、今よりちょっと素敵な自分になれるかも」という、ささやかな成長への期待。
上手くいかなくてしょんぼりしているはずなのに、お腹はしっかり空くし、「よし、明日も待機してブログを書いて、できることを探そう」なんて思っている。
……いや、他人事みたいに言っていますけれど、自分のことです(笑)。
思わずPCの前でひとり、自分にクスッと笑ってしまいました。
でも、この「ちょっと引いた目線で、自分の必死さを愛おしく思える感じ」って、案外悪くないんじゃないかなと思うのです。
「大成功してキラキラ輝いている私」なんて、今の私には書けません。
けれど、「上手くいかなくて悩みながらも、自分の生活と未来のために、少しずつ前を向こうとしている私」なら、等身大の言葉で書くことができます。
完璧じゃなくていいし、順風満帆じゃなくてもいい。
ちょっと不器用で、クスッと笑えて、読んだ方が「まあ、こんな風に頑張っている人もいるなら、私も明日ちょっとだけ頑張ってみようかな」と心が軽くなるような、そんな文章を届けていきたいのです。
窓の外を眺めると、見知らぬ街の明かりがポツポツと灯っています。
きっとあの明かりの数だけ、誰かがそれぞれの場所で、それなりに悩みながら、懸命に生きているのだと思います。
よし、やる気だけはしっかりあることですし、明日はどんな素敵なブログのネタを見つけに行きましょうか。
とりあえず今は、お腹が空いたのでコンビニで買ってきたヨーグルトをいただくことにします。
このあとちょっとだけ待機してみようかな。
現実は地味なりっ!