1冊あたりの原価を出したことがあるか。
🧾 何冊も出していると、道具にかかる費用は月ごとの合計で把握するようになる。
文章の道具にいくら。画像の道具にいくら。変換の道具にいくら。
合計だけを見て、これくらいなら許容範囲だと判断する。
この見方だと、1冊あたりでいくらかかっているかが出てこない。
月の合計は、その月に何冊出したかで意味が変わる。
3冊出した月と、1冊も出せなかった月で、同じ額を払っている。
📉 月額の契約が中心だと、この計算がさらにしにくい。
使わなかった月の支出を、どの本に割り当てるかが決まらないからだ。
年で均すのか。出した月にだけ乗せるのか。決め方によって数字が変わる。
決め方から考えることになるので、たいていそこで計算をやめる。結果として、1冊あたりの原価は感覚のまま残る。
🕰 感覚のままでも、しばらくは困らない。
冊数が少ないうちは金額も小さいので、気にする理由がない。
困り始めるのは、冊数を増やして時間の配分を考えるようになってからだ。
原価が分からないと、判断の基準も持てない。
この本にどこまで手をかけるべきか。この価格で出して見合うのか。次の1冊を出す価値があるのか。
どれも原価が分かっていないと決められない。
🧮 道具が複数に分かれていることも、計算を難しくしている。
本づくりの解説では、企画と構成、長文の執筆、リサーチ、表紙と、役割ごとに別の道具を使う組み合わせが前提になっていることが多い。
表紙を作るツールだけでも、複数が並べて紹介されている。
ひとつの本を作るのに4つの道具を使っていれば、費用は4か所から出ている。
合算して冊数で割る作業を、毎月やる人は少ない。
📊 量産している人ほど、この数字が効く。
1冊あたり数百円の差でも、10冊なら数千円になる。
冊数を増やすほど、原価の差が積み上がる。
ところが冊数を増やす忙しさの中で、計算する時間が取れない。効いてくるときほど、確かめる余裕がない。
⚖️ 固定費として先に出ていくことも、原価を見えにくくする。
出せなかった月も同じ額がかかるので、ペースが落ちたときに原価が跳ね上がる。
忙しくて出せない月ほど、支出だけが積み上がる。
その状態が続くと、道具を減らす判断を迫られる。減らせば作業が重くなるので、また出せなくなる。
原価が見えていないと、この循環に入ったことにも気づけない。
💰 価格の判断も、原価がないと決められない。
安く出して数で回すのか。内容を厚くして単価を上げるのか。
どちらを選ぶにしても、かかっている額が分からなければ決めようがない。
感覚で「これくらいなら出る」と決めていると、実際には赤字の本が混ざっていても分からない。
📈 実績を残していないことも効いている。
前回何冊出せたかを記録していれば、次の見積もりに使える。
記録がないので、毎回ゼロから見当をつけることになる。
回を重ねても判断の精度が上がらないのは、材料を残していないからだ。
🗂 管理にかかる手間も、数えられていない項目のひとつだ。
実際にまとめた人の手順を読むと、原稿、下書き、最終原稿と段階ごとにフォルダを分ける話が出てくる。そこに表紙画像、商品説明、EPUBが加わる。
どこに何を置いたかを思い出す時間は、どの費目にも入らない。
冊数が増えるほど積み上がるのに、記録されないので比較もできない。
🔍 比べる相手がいないことも効く。
同業の作家がいくらかけているかは分からない。冊数も原価も、外からは見えない。
相場が存在しないので、自分の数字が高いのか安いのかを判断する基準もない。
だから、自分の過去と比べるしかない。過去の数字を残していなければ、比べる相手すらいないことになる。
🎯 出していない時間のコストも、原価には含まれる。
道具の費用だけでなく、貼り付けや確認に取られた時間も、実際には1冊のコストになっている。
金額だけを数えていると、いちばん大きい項目が抜け落ちる。
書く速度を上げる工夫より、その抜けている項目のほうが伸びしろは大きいことが多い。
🧾 金額を数えること自体は、10分もかからない。
やっていないのは難しいからではなく、必要だと思っていないからだ。合計だけで足りている気がしている。
✅ 今日できることもひとつ。
先月払った道具の費用を合計して、その月に出した冊数で割ってみる。
その数字が、いまの1冊あたりの原価だ。
出せなかった月があるなら、その月の支出も足して割り直してみるといい。年単位で見た原価は、いい月だけを見た数字よりかなり高くなることが多い。