「談合」は、なくならない

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今回は、私が会社員として働いていた頃のことを書いてみたいと思います。
私は25歳頃から、建設業界の営業職をしていました。当時は、バブル崩壊後で景気が悪化し、公共工事の数も激減していました。しかし、そんな世の中であっても中小企業の経営は比較的に安定していました。
なぜならば、当時は「談合」によって公共工事の入札が行われ、「値崩れ(ダンピング・極端な低価格)」する業者がいなかったからです。全くいなかったわけではありませんが、ほとんどの業者は「談合」を行っており、工事の受注をしていたのです。「談合」によって、発注者が予定している工事予算(入札予定額)に、ほぼ近似値の金額で業者は落札していたため安定していたのです。
さらに、「談合」によって落札された工事(公共工事)は、落札者から「下請け業者」に工事の発注を行っていました。当然、入札によって落札された金額には余裕がありましたので、「下請け業者」への工事依頼金額も無理のない額で発注していました。そのことによって、「下請け業者」も十分利益を出すことができたわけです。結果、公共工事を受注した業者や下請け業者は、利益を出すことができ、従業員に対しての給与も十分生活ができる額が支払われていました。
建設業界の営業マンや工事従事者は、生活費とともに「遊ぶ金」がありました。私等は、夜な夜な繁華街にくりだし、飲食をして日頃のストレスを発散していました。そのため、当時の飲食業界は収入が見込まれ経営状態も順調でした。
当然、深夜まで「遊んで」いたので、公共の交通機関は終わっています。そこで、タクシーなどを利用して帰宅をするのですが、都心繁華街などで飲食を深夜までし、その後のタクシーですから、タクシー会社も長距離利用。そのおかげで、タクシー業界も、その恩恵があり収入が十分にありました。
この様に、「お金」は大手建設業者から中小企業へ流れ、末端の企業や職人に流れ、飲食業界に流れ・・・。どの位(地位・立場)の人であっても、お金が流れていたのです。
そして、建設業界にかかわる企業や人々の数は、国勢調査(2010年)の調べによると、建設業就業者数447万人と大変多く、まさしく建設業界の景気が良ければ日本の景気も良い。その様な時代がありました。
しかし、世の中が「談合」撲滅に進んでいくにつれて、ダンピング(極端な低価格)する業者や、工事施工能力がない業者の工事受注が増えていきました。当然、その結果、工事の完成品質は悪化し、さらに「下請け業者」への発注金額も減額されていきました。
利益のでない工事を、受注業者は行うわけですから、下請け業者も同様な状態となります。給料が削減され「遊ぶ金」がなくなり外食は激減しました。そのため飲食業界にはお金が流れてこなくなり、経営困難となっていきました。夜な夜な飲食店を徘徊していた者が減ったため、タクシー会社にもその影響はありました。深夜まで飲食するものが減り、公共交通機関が運航している時間内で飲食を済ませ、タクシーを利用せず帰路につく者が増えたからです。

さて、私が知っている「談合」の仕組み(数年前)をお話しします。
建設業界には、必ず大手企業や大手企業の資本で成立している企業(子会社)が存在します。各企業で組織編成は異なりますが、いわゆる「談合担当」なる部署(人材)がいます。そして、この「談合担当」は、中小企業においても存在し、営業マンであったり、経営者が行っていました。
「天下り」という言葉を知っている方がいるかと思いますが、その多くの「天下り」は、雇い入れた企業に入札で落札するチャンスを多くもたらします。当然、「天下り」を雇い入れるには、いろいろな意味で危険がともないます。したがって、一般的には直接経営にかかわらないポストに位置づけられ採用・雇用します。
大手企業や子会社は、その所属する業界での発言力が強くあります。それは、「天下り」を抱えている、業界内の独自な優劣になどによってです。このリーダー的な役割を果たしている企業は、隠密に官公庁の発注業務を行う部門や、工事設計・工事管理部門といった「役人」とコミュニケーションをとります。そして、過去の実績や地域性などを加味し、入札に参加する業者の選定や、落札業者の指示を、あくまでも「独り言」「遠巻き」に指示します。
この指示を受けた談合担当者は、タイミング(入札参加依頼発表前や入札前)を見図り落札すべき業者に「落札するように・役人担当者へ挨拶に行くように」指示をします。
落札が予定された業者は、自社で工事費の積算をし、担当役人のところへ出向きます。そして、自社が積算した工事金額を伝え「おうかがい」をします。担当役人は、その額に対して「そんなに予算はない」とか「なかなか良い金額だね」などと言い、役所の予定している金額を伝えます。そのアドバイスを聞いた落札を予定している業者は、もっとも役所の予定金額に近い金額をもって「入札」をおこないます。
この仕組みは、業界の中では「当然」の行為と、いかなる企業も認識しており、そのルールに従います。そのため、入札によって落札される金額と予定されている工事金額の差(落札率)は、95%以上の確率で落札されるのです。
近年、「談合撲滅」の世の中において、95%などといった高確率での落札は少なくなりました。しかし、落札率80%台の落札や1社だけの入札が存在します。(記憶で新しいのは安倍元首相の国葬)実は、この落札率の中には、いまだ「談合」によって成立したモノも存在します。世間一般の「目」や公正取引委員会(談合を処罰する機関)の「目」をかいくぐり、まるで「談合が存在しない」かの様に振舞うためにです。
「談合」を行う企業は、その多くは「違法」を承知の上で行っています。しかし、実際の公共工事の施工には、「できるだけ高額で落札」することによって、前述したように末端の企業が請負う額の確保をするために、この違法な行為をおこない続けています。
「談合」という行為が違法なのは事実であり、世間一般に「狂っている仕組み」だと思われます。しかし、日本という国の歴史を振り返ってみると、いわゆる「談合」と同じようなことを行っているモノが多々あります。
例えば、政治の世界での「首相」選びや、各政党の「党首」選びです。これらは「直接選挙」ではありません。各政党内での根回しや、多数派工作によって決まります。現在の日本ではなく、古くは江戸時代から明治、大正といった時代にも、行われていた「慣例」なのです。
明治維新によって、江戸時代が崩壊しました。しかし、明治政権の役職には、多くの徳川家が採用されています。江戸時代という一時代が終わったにもかかわらずです。その時、何が起こったのかは、私にはわかりません。ただ、単純に疑問に思うのは「終わった政権」にかかわっていた人材が、そのまま「新しい政権」でも力を持っていたという事実です。何かしら「意図的な力」があったとしか思えないのです。「意図的な力」=「談合」があったと推測できるのです。
ちなみに、中国の小学校において学級委員長選挙においての「買収・賄賂」など、「談合」と同じ行為が行われているといったニュースを聞いたことがあるでしょうか。「談合」については、日本に限ったことではないのです。

以上が、私の知っている「談合」という世界です。「談合」の世界から離れ、十数年が経っているので、どこまで正確なことか正直不明です。ただ、いまだに「談合」によって摘発される事件は起きています。
「談合」を完全に撲滅することは、出来ない不可能なのかもしれません。「日本国の慣例」の中に、「談合」と同様な仕組みがある以上、難しいのでしょう。
今までと、違った話題、面白くない内容になってしまったかもしれませんが、この様な内容にしてみました。賛否もあると思いますが「一人の経験者の声」として、受け止めて頂ければ幸いです。
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