2026年10月1日 ・ 読了目安 約9分
「今月は残業が多かった気がするが、誰が何時間だったかは給与計算のときまで分からない」「いつも同じ人が遅くまで残っている」「忙しい月と暇な月の差が大きいのに、去年の同じ月にどれくらい残業があったか思い出せない」。中小企業では、残業の記録が、タイムカードや勤怠の打刻、残業の申請書や届け出、シフト表、現場の日報、給与計算の控えに分かれ、帳簿では「給料手当」と「法定福利費」の一行にまとまって消えていきます。従業員ごとに、月ごとに、残業の時間と理由を一覧で見たことがある会社は、ほとんどありません。
その結果、何が起きるか。決算のときに人件費が増えたことは分かっても、それが忙しい月の山なのか、特定の人に仕事が寄っているせいなのかを分けられない。毎年同じ月に残業が増えているのに、その月が来るたびに「今年は特別」と感じてしまう。一人に仕事が集まっていることに、その人が疲れ切るまで気づかない。残業の本当の問題は、時間が多いか少ないかではなく、従業員ごと月ごとの残業を一枚に並べたことがないため、繁忙の山と人の偏りを分けられないことです。
この記事では、Anthropic社の公式AIコーディングツール Claude Code を使って、打刻、申請書、シフト表、日報、給与計算の控えに散らばった残業の記録を一つの一覧にそろえ、従業員ごと月ごとの残業を並べ、忙しい時期の山と、人への偏りを見分ける材料を整えるまでの手順を、非エンジニアの方向けに整理します。誰の仕事を減らすか、人を増やすか、繁忙期の受け方を変えるか、仕事の分け方をどう変えるかを決めるのは人の判断です。機械に任せるのは、散らばった記録を集めて、人ごと月ごとにそろえて、山と偏りに分けて並べる作業です。
残業の中身が「見えない」3つの理由
見えないのは、総務や経理の担当者が記録をさぼっているからではありません。見えない構造が、仕事の側にあります。
1. 打刻と申請と給与の三つの記録が、別々の形で残る
タイムカードや勤怠のアプリには出退勤の時刻が、残業の申請書には予定の時間と理由が、給与計算の控えには支払った時間と金額が残ります。同じ一日の残業が、三つの場所に、三つの形で書かれています。打刻は時刻、申請は予定、給与は集計後の合計で、そのまま並べても突き合わせられません。三つを一度に机に並べた人が、社内に一人もいないのです。
2. 給与では金額でしか残らず、時間は明細の隅にしか書かれない
給与計算が終わると、残業は「時間外手当」という金額の欄に変わります。何時間だったかは給与明細の隅に小さく残るだけで、帳簿には給料手当の合計しか載りません。月ごとの合計は分かっても、誰の時間がいくつ集まってその合計になったのかは、給与計算の担当者の画面の中にしか残っていません。
3. 忙しさの「当たり前の幅」を、誰も知らない
年度末や大きな納品の前に残業が増えるのは、多くの会社で毎年のことです。ところが、去年の同じ月に何時間だったかを並べて見たことがないため、その月が来るたびに、繁忙の山なのか、人が足りていないのか、仕事の分け方が偏っているのかを分けられません。同じ「多い」の中に、季節の山と、特定の人への偏りと、仕事のやり方の問題が混ざったまま、感じ方だけで判断が続きます。
残業の中身が見えないのは、三つの記録が別々の形で残り、給与では金額でしか残らず、忙しさの当たり前の幅を誰も知らないからです。この三つは、いずれも機械に任せて軽くできる種類の問題です。
機械に任せる範囲と、人が決める範囲
大前提として、誰の仕事を減らすか、人を増やすか、繁忙期の受け方を変えるか、仕事の分け方をどう変えるか、残業を減らすためにどこまでの費用をかけるかは会社の運営の判断であり、人が決めることです。法令の上限や協定の内容など専門的な確認は、社労士などの専門家と一緒に行います。機械に任せるのは、散らばった記録を集めて人ごと月ごとにそろえ、繁忙の山と人の偏りを分けて横に並べ、比べられる形にするところまでです。
工程担当内容記録の収集機械打刻の記録・残業の申請書・シフト表・日報・給与計算の控えから、氏名・日付・出退勤の時刻・残業の時間・申請の有無・理由・支払った金額を拾い出す氏名と月のそろえ直し機械同じ人の打刻と申請と給与の記録を、氏名と日付を手がかりに一人の下にまとめ、締め日に合わせて月をそろえる一覧化機械氏名・部署・月・残業の時間・そのうち休日と深夜の時間・申請あり/なし・主な理由を一行にそろえる月ごとの集計機械会社全体と部署ごとに、月ごとの残業の合計時間と、去年の同じ月の時間を横に並べる繁忙の山の集計機械月別と曜日別の残業の合計から、毎年同じ時期に増える山と、その年だけの山を分ける人の偏りの検出機械同じ部署の一人あたりの平均と比べ、平均の五割を超える人と、ほとんどない人に印をつける上限との突き合わせ機械会社が決めた月ごとの上限の目安と並べ、超えた人と、超えそうな人に印をつける見直し案の下書き機械印のついた月と人について、山への備え・仕事の分け直し・仕事の減らし方の候補と理由を並べる残業の判断人誰の仕事を減らすか、人を増やすか、繁忙期の受け方を変えるか、仕事の分け方をどう変えるかを決める
境界線は「並べる」と「決める」の間にあります。機械が出すのは、従業員ごと月ごとの残業の並びと、繁忙の山と人の偏りの印までです。その先の、この山は受けてよい仕事の山か、この人の仕事は誰に分けられるか、という線は人が引きます。
実務5ステップ
ステップ1:一年分の残業の記録を全部洗い出す
直近一年分の打刻の記録、残業の申請書、シフト表、日報、給与計算の控えを集め、Claude Codeに「従業員ごと月ごとの残業を一覧にし、時間と理由を並べてほしい」と頼みます。打刻と給与計算の控えから先に拾うのが近道です。申請書が残っていない残業も、打刻と支払いの記録には必ず残っています。理由の分からない残業は、空欄のまま残させます。その空欄が、本人に聞く月と、申請の決まりが守られていない部署を教えてくれます。
ステップ2:人ごと月ごとにそろえ、種類をつける
同じ人の残業が、打刻では時刻、申請では予定の時間、給与では合計と、三つの書き方で記録されています。氏名と日付を手がかりに三つを結びつけ、一人の一か月の残業を一行にまとめます。あわせて、平日の延長、休日の出勤、深夜の作業のように種類をつけ、申請ありと申請なしを分けます。締め日が月末でない会社は、給与の締めに合わせて月をそろえないと、去年の同じ月と比べられません。
ステップ3:月ごとの山と、人ごとの偏りを分けて並べる
一覧ができたら、二つの向きで並べます。月の向きでは、会社全体と部署ごとの月別の合計を去年の同じ月と横に並べ、毎年増える月と、その年だけ増えた月を分けます。人の向きでは、同じ部署の一人あたりの平均と一人ひとりの時間を並べ、平均を大きく超える人と、ほとんどない人を分けます。月の向きで見えるのが繁忙の山、人の向きで見えるのが偏りです。同じ「残業が多い月」でも、部署の全員が増えているのか、一人だけが増えているのかで、打つ手は変わります。
ステップ4:上限の目安と突き合わせ、見直す候補を分ける
会社として決めている月ごとの残業の上限の目安を一覧の横に置き、超えた月と人、あと少しで超える月と人に印をつけさせます。法令で定められた上限や、会社が結んでいる協定の中身は、社労士などの専門家と確かめます。印がついた人については、その月に何の仕事をしていたかを日報と並べ、山のせいか、偏りのせいか、仕事のやり方のせいかを分けます。分けた結果に、備える・分け直す・減らすのどれかの候補を書き添えます。
ステップ5:決まりをつくり、毎月一度確かめる
ステップ1から4は最初に一度行えば終わりです。その後は、給与計算が終わるたびに、その月の一覧を一行ずつ足していきます。決まりは三つで十分です。上限の目安を超えそうな人が出たらその月のうちに知らせること、毎年山が来る月の前月には仕事の分け方を決めておくこと、申請なしの残業が三か月続いた部署は決まりを見直すことです。毎月一度、Claude Codeに「今月の残業で、上限に近い人と、去年の同じ月より増えた部署を出してほしい」と頼めば、一覧は自然に育っていきます。
頼み方3原則
原則1:残業に何を含めるかを、こちらから指定する
「残業を一覧にして」だけでは、機械は打刻の時刻の差をそのまま残業として数えてしまいます。所定の終業時刻、休憩の扱い、休日の出勤と深夜の作業を分けるかどうか、持ち帰りの作業や早出をどう扱うかを、最初に言葉で伝えます。含めるものと含めないものを決めるのは人の仕事です。
原則2:時間と理由は記録にある内容で書かせ、推測させない
申請書に理由がない残業について、機械は日報の内容から「納品準備のため」と推測しがちです。理由は申請書と日報に書かれている言葉だけを使わせ、書かれていなければ空欄にさせます。空欄の数と場所そのものが、申請の決まりがどこで守られていないかを示す材料になります。
原則3:給与計算の合計と突き合わせる
一覧に並んだ残業の時間の合計が、給与計算の控えの時間外手当の時間と合っているかを突き合わせさせます。一覧の合計が給与より小さい場合、打刻や申請に残っていない残業があります。たいていは、締め日をまたいだ分、休日の出勤が別の欄に入っている分、手書きで直した分です。差の出どころを探すことが、記録の抜けを見つける近道になります。
つまずきやすい5つの型
型1:合計の多い順に全員を減らそうとする
残業の多い人から一律に減らそうとしがちですが、繁忙の山で部署の全員が増えている月と、一人だけが年中多い状態では、原因が違います。時間の多さは、月の向きと人の向きの両方で見ます。山なら前月からの備え、偏りなら仕事の分け直しと、打つ手は別のものになります。
型2:申請なしの残業を、なかったことにする
申請の決まりがあると、申請のない残業は一覧から外したくなります。けれども、打刻と給与には残っています。申請なしの残業も一覧に入れ、申請なしの印をつけて並べます。外してしまうと、決まりが守られていない部署ほど残業が少なく見えるという逆さまの一覧になります。
型3:去年の同じ月と比べずに、先月とだけ比べる
先月より増えた、減ったという見方だけでは、毎年来る山を毎年新しい問題として扱ってしまいます。月の向きの並びには、必ず去年の同じ月を横に置きます。去年も同じだけ増えていれば山、去年より大きく増えていればその年の変化として、分けて考えられます。
型4:人の偏りを、本人の性格の問題にする
いつも同じ人が残っていると、その人が頼まれると断れない性格だから、という話になりがちです。けれども、その人にしかできない仕事が集まっている、代わりの人がいない、という仕組みの側の理由がほとんどです。偏りは、その人の仕事のうち他の人に分けられるものがどれだけあるかという向きで見ます。性格の話にすると、一覧をつくっても何も変わりません。
型5:一覧をつくって、決まりを一つも変えない
一覧を眺めて「やっぱり忙しい」と納得して終わると、次の年も同じ月に同じ山が来ます。毎月一度、見直す候補を一つ選び、本人と部署の長に困りごとを聞いて、結果を一覧に書き足します。書き足した結果が、次の年の山への備えの根拠になります。
業種別の効きどころ
業種効きどころ製造・加工納品の集中する月と工程ごとの残業を並べ、毎年同じ月に増える山と、特定の工程の担当者に寄っている偏りを確かめる建設・改修現場ごと月ごとの残業を並べ、工期の終わりに集中する山と、現場の掛け持ちが多い人への偏りを確かめる飲食・小売店舗ごと曜日ごとの残業を並べ、催しや繁忙期の山と、店長や特定の人に閉め作業が寄っている偏りを確かめる介護・医療シフトの交代の前後に生じる残業を人ごとに並べ、記録の作成が特定の職員に寄っていないか、夜勤明けの延長が続いていないかを確かめる士業・サービス申告や決算など期限の集中する月の残業を並べ、毎年の山への備えと、案件が特定の人に集中している偏りを確かめる
どの業種でも共通するのは、給与の一行にまとまって消えていた残業を、月の向きと人の向きという二つの物差しで並べ直すことです。並べ直すと、前もって備える山と、分け直す仕事と、減らす仕事が分かれて見えてきます。
よくあるご質問
従業員は数人しかいませんが、必要ですか
人数が少なくても、月の向きと人の向きで並べると、毎年同じ月に来る山や、一人に寄っている仕事が見えてくることがあります。人数が少ないうちに一覧の形をつくっておく方が、人が増えたときに楽です。最初の一覧は半日で終わります。
勤怠のアプリを使っていますが、それでは足りませんか
勤怠のアプリは、打刻と月ごとの集計までは得意です。一方で、申請の理由や日報の仕事の中身と並べたり、去年の同じ月と部署ごとに比べたりするのは、アプリから出した記録を別に並べ直す必要があります。この記事の手順は、アプリの記録を出発点にして、その並べ直しを機械に任せるものです。
残業を減らす判断まで機械に任せてよいですか
機械に任せるのは、並べることと、山と偏りの印をつけることまでです。誰の仕事を減らすか、人を増やすか、繁忙期の受け方を変えるかは、仕事の中身や会社の方針で答えが変わるため、人が決めます。法令や協定に関わる判断は、社労士などの専門家と確かめます。一覧があると、話し合いが短く、具体的になります。
どれくらいの時間がかかりますか
打刻の記録と申請書と給与計算の控えを渡して最初の一覧が出るまでは、人数にもよりますが一時間ほどです。理由の空欄を本人に確かめるのに数日、そのあとは給与計算のたびに、上限に近い人と去年より増えた部署を出させて確かめるだけです。
まとめ
残業の中身が見えないのは、三つの記録が別々の形で残り、給与では金額でしか残らず、忙しさの当たり前の幅を誰も知らないという構造の問題
誰の仕事を減らすか、人を増やすか、繁忙期の受け方を変えるかは人の判断。集めて、人ごと月ごとにそろえて、山と偏りに分けて並べるのは機械の仕事
実務は、一年分の洗い出し、人ごと月ごとのそろえ直しと種類づけ、月の向きと人の向きで並べる、上限と突き合わせて見直す候補を分ける、決まりをつくって毎月一度確かめる、の五つ
残業に何を含めるかをこちらから指定し、時間と理由は記録にある内容で書かせ、給与計算の合計と突き合わせる
多い順に一律に減らさず月と人の両方で見る。申請なしも一覧に入れる。去年の同じ月と比べる。偏りは性格でなく仕組みで見る。毎月一度、見直す候補を一つ進める
Claude Code導入サポートのご案内
「自社の打刻と給与計算の控えを、この記事の手順で一覧にしてみたい」「どの記録を渡せばよいか分からない」という方向けに、Claude Codeの導入サポートを承っています。
Claude Code導入サポート 税込3,000円
Claude Codeのセットアップから、最初の従業員ごと月ごとの残業一覧づくりまでを一緒に進めます
自社の仕事と締め日に合わせた分け方と、頼み方の言葉をその場で整理します
毎月一度、上限に近い人と去年より増えた部署を出す運用を回すための、簡単な形をご提案します
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これまで多くの中小企業や一人社長の方の業務自動化をお手伝いしてきた経験をもとに、残業の記録に限らず、日々の事務の中で「並べていないから見えない」「見えないから決められない」仕事を減らすお手伝いをしています。