AI×仕事というテーマの中で、AI初心者の方にMuseをおすすめしては、という話がありました。あくまで個人的な感想ですが、Museについては、次のような印象を持っている人が比較的多いように感じています。
すでにChatGPTをチャッピーと呼ぶほど親しんで活用している人は、Museに対して少し懐疑的な見方をする人が多い感じがします。また、Claude Codeなどのエージェント系AIを日常的に使っている方からは、Museだけでは物足りないといった声も聞かれます。
AI×仕事は関心を持たれやすいテーマですが、実際にはAIツールごとの特徴や利用レベルに差があるため、意外と多くの人に同じようには響きにくいのかもしれません。
Museを共通のベースとして利用する場合には、私はこんな使い方をしています。こんな活用例がありました。といった実践事例を持ち寄り、みんなでシェアする形であれば、参加しやすく、良いスタートが切れそうです。
Museはオンライン秘書から業務に特化したAI社員に育てるところがポイントのなるのではないかと思っています。オンライン秘書は記事の作成、投稿、分析などすべてを一つのMuseに頼む使い方です。AI社員は、記事作成は記事作成担当Muse、投稿は投稿担当Muse、分析は分析担当Museと分ける使い方です。
ちなみに首相官邸公式サイトをMuseで分析してもらうとこんな感じになりました。
首相官邸公式サイト分析レポート
「もっと見てもらう」ための現状診断と改善提案(2026年11月3日実査)
1. エグゼクティブサマリー
最重要の発見は3つです。
第1に、官邸サイトのトップページは「総理の一日」をはじめとする動静と記録でほぼ占められており、分類の軸が「総理の一日/長官会見/演説/閣議」という組織と記録の論理になっています。給付や支援、手続きといった国民の用件の入口はトップにはほぼ無く、主要政策のページも「AX・DX」「GX」「全世代型社会保障」といった行政用語が中心で、給付額や申請手順に直結する入口は別ページに分散しています。つまりこのサイトは「国民が用件を解く場所」ではなく「政府の記録を公表する場所」として設計されており、これが「見られない」最大の構造要因です。
第2に、国民の情報接触はすでに受動的です。総務省「情報通信白書」によれば、オンラインでニュースを見る方法はニュースサイトやアプリのおすすめが61.1%、SNSが42.4%で、発信源を確認する人は19.1%しかいません。一次情報サイトまで自力でたどり着く国民は少数派であり、「良いサイトを作って待つ」モデルは成立しません。
第3に、官邸は実は巨大な配信資産を持っています。LINE公式アカウントの友だちは約401万人で国内最大級、X公式は約180万フォロワー、YouTubeは登録者22.9万人・総再生7,271万回です。ところがYouTubeの直近動画の平均再生は約1.9万回、エンゲージメント率0.46%と低調で、伸びているのはワクチン接種の直接呼びかけ(663万回)や初出邸のShorts(182万回)など「直接の呼びかけ」と「人間味のある瞬間」だけです。伸びる型は判明しているのに、定型の会談・動静コンテンツが量産され続けています。
最初にやるべき改善は以下の3点です。
(1)トップページに「国民の用件」レーン(給付・支援・今月変わる制度)を新設すること
(2)記者会見テキストの即時公開
(3)SNS、とりわけLINEとYouTubeを「サイトの写し」から「国民のいる場所への配布」へ転換すること
2. 現状診断(実査で確認した事実)
良い点から挙げます。導線そのものは整理されており、記者会見、総理の一日、災害情報へはトップから1〜2クリックで到達できます。
トップの「注目ワード」は、熊本地震の被災者支援情報や個人情報流出への注意喚起など、国民の関心事を拾う工夫として機能しています。
被災者支援情報のページは「健康・こども・心のケア」「住まい・生活再建」「お金・税金」など9つの生活分類で整理されており、生活者目線の情報設計としてサイト内で最も完成度が高い部類です。
長官会見には動画と冒頭発言テキストの両方が用意され、配布資料PDFや政府広報オンラインへの代替リンクもあります。
一方で課題も確認できました。主要政策ページは4本柱の方針紹介が中心で、「あなたの暮らしに何が変わるか、いつからか、手続きが要るか」が書かれていません。
「総理の一日」の詳細ページは、写真4枚と本文1文のみで、政策的な意味づけや読み物としての価値はほぼありません。
長官会見のテキストは即時掲載ではなく、午後の会見では「21時をめどに掲載予定」と表示され、確認時点では未掲載でした。
質疑応答の全文も確認できませんでした。
災害・危機管理のトップは災害別の記録とリンク集であり、震度や避難情報のライブなハブではありません。
確認時点のトップ第一画面に、緊急バナーのような目立つ表示もありませんでした。
英語版(japan.kantei.go.jp)は総理の動静と外交が中心で、生活支援や災害支援の入口は日本語版より大きく絞られています。
3. 世界の政府サイトとの比較
英国のGOV.UKは官邸サイトと正反対の設計です。
トップは「Benefits(給付)」「Money and tax」「Passports」など生活サービスの16分類と、仕事探しや生活費支援への入口だけで占められ、首相のニュースはトップに存在しません。
首相官邸(No.10)自体も2013年に単一ドメインへ統合されました。GDSの公式実績では、GOV.UKは年間10億訪問・23億ページビュー、流入の約3分の2は検索エンジン経由です。「国民の用件×検索」で設計された結果です。
米国のwhitehouse.govは大統領中心ですが、記録ではなく成果のナラティブと優先課題のカードで構成され、手続きは別ポータルUSA.govに分離されています。
2025年には自前のニュース集約「White House Wire」を開始し、TikTokにも進出しました。
フランスのelysee.frは、大統領の最新情報、優先課題5カード、大統領府の紹介、バーチャルツアーや公式ショップの4層構造で、若手YouTuberの番組への大統領出演が公式ニュースとして並ぶなど、若者がいる第三者プラットフォームへ出向く発信が通常運転になっています。
ドイツのbundesregierung.deは首相ニュース中心ながら、中段に「今月変わる法律」と、EV補助金の申請方法や免許交換などのFAQ枠を常設し、SNS投稿をサイトに再集約する「Social Media Wall」も備えています。
日本の構造は、官邸=総理と内閣の一次記録、政府広報オンライン=暮らし向けの翻訳、マイナポータル=手続きの実行、e-Gov=行政情報の検索、という機能別の多層構造です。
これは仏米型に近い正当な形ですが、官邸トップから他の層へ「用件別に送り出す」導線が弱い点が、ベンチマーク上の決定的な差になっています。
4. なぜ見られていないのか ― 構造的原因
原因は5つに整理できます。
第1に、サイトの目的が「記録と公表」に最適化され、発信者側の分類で作られていることです。国民は「長官会見」を見に来るのではなく、「給付金はいつ入るのか」「年収の壁はどう変わるのか」を知るために来ます。この用件の言葉と、サイトの分類の言葉が一致していません。
第2に、配布の設計不足です。国民の接触はアグリゲーターとSNSと検索が支配的で、一次サイトへの自発的訪問は少数派なのに、発信は「サイトに掲載すること」がゴールになっています。
第3に、編集翻訳の不在です。政策が生の行政用語のまま掲載され、暮らしへの翻訳は政府広報オンライン任せになっているため、官邸ブランドで届く情報が一番分かりにくいという逆転が起きています。
第4に、SNS運用がプラットフォームの文法に最適化されていません。伸びる型(直接の呼びかけ、人間味、60秒の政策翻訳)が実績として判明しているのに、定型コンテンツの量産が続いています。
第5に、総理個人のXアカウント(約300万フォロワー、ほぼ毎日投稿、大きな拡散実績あり)という最大の拡散資産が「個人のもの」と位置づけられ、公式サイトの一次情報への相互導線が設計されていません。
5. ペルソナで見る離脱の瞬間
地方在住の70代:テレビで給付のニュースを見て、家族に頼んでスマートフォンで検索しますが、官邸サイトには給付の入口がなく、たどり着くのは動静の記事です。結局、市役所に電話して解決します。
子育て中の30代:Instagramで児童手当の変更を知り、検索上位のまとめサイトで概要を掴みます。官邸の主要政策ページを開いても行政用語が並び、「自分の世帯に何が起きるか」が分からず離脱します。
就活中の学生:総理の考えを知りたいと思っても、演説は長文で、結局は第三者の切り抜き動画で済ませます。
外国人住民:英語版には生活と災害の入口が乏しく、自治体のサイトに頼ります。
中小企業経営者:補助金や賃上げ支援を探しますが、官邸には用件別の入口がなく、所管省庁のサイトへ直接向かいます。
5人とも、官邸サイトに「来なかった」のではなく、「来ても用件が解けずに出ていった」ことが共通しています。
6. 改善提案(優先順位つき)
提案1:トップページに「国民の用件」レーンを新設する。給付・支援、手続き、今月変わる制度への入口を、動静と同じ画面に置きます。
提案2:「今月変わる法律・制度」の月次コンテンツを常設する。ドイツ型の、検索需要から逆算した実務ブロックです。
提案3:記者会見テキストの即時公開。冒頭発言は会見終了後30分以内、質疑は見出しつき全文を当日中に掲載し、各会見に「3行要約」を付けます。
提案4:主要政策に「生活者ボックス」を標準装備する。各政策ページの冒頭に「何が変わるか/いつからか/手続きは要るか」の3点を固定表示します。
提案5:YouTubeとSNSの投稿配分を「型」で組み替える。定型の動静Shortsの比率を下げ、直接の呼びかけ型、人間味型、60秒政策翻訳型を定例枠化します。
提案6:LINEの本格活用。約401万人の友だちに対し、災害と給付など「自分に関係する変更」の通知を先行配信し、開封とクリックを測定します。
提案7:総理個人アカウントとの相互導線の公式化。個人の投稿から官邸の一次情報ページへリンクする運用ルールを整えます。
提案8:英語版に生活・災害の最低限の入口を追加する。在留外国人向けの多言語ポータルへ送り出すハブを置きます。
7. 常識への挑戦
挑戦1:トップページの主役から「総理の動静」を降ろす。GOV.UKのトップに首相ニュースは存在しません。官邸でも、第一画面の主役を用件レーンと「今月の変更点」に譲り、動静は専用レーンで鮮度を保つ形に分離すべきです。リスクは、報道関係者や記録利用者との摩擦ですが、動静レーンの更新速度と到達しやすさを維持すれば両立できます。「国の顔のページ」から「国民の用件のページ」への転換は、閲覧数を構造から変える唯一の手です。
挑戦2:サイトのPVを捨て、「到達した国民数」をKPIにする。国民は官邸サイトに来ないのではなく、LINE、YouTube、Yahoo!ニュース、検索結果の中で情報に触れています。官邸で完結させる発想を卒業し、一次情報を国民のいる場所へ能動的に届ける「配布ファースト」に転換すること。サイトは配布した情報の「原典置き場」と位置づけ直し、評価指標をページビューから、SNSとLINEと検索を通じた総到達数に変えます。
挑戦3:総理の「直接語り」を定例化する。フランスでは大統領が若手YouTuberの番組に出演するのが通常運転です。官邸チャンネルでも、月1回、台本を最小化したロング動画やQ&A形式の直接発信を定例化し、切り取りへの対抗として全文テキストとアーカイブを同時公開します。人間味のある瞬間が最も拡散するという自サイトの実績が、この挑戦の根拠です。
8. 90日間ロードマップ
最初の2週間:会見テキストの即時公開SLAを冒頭発言から開始する。トップの注目ワード欄を「今月の暮らしの変更点」ブロックに置き換える試行を行う。SNSの投稿配分の見直しを決め、測定ダッシュボード(到達数、検索流入、動画平均再生)を整備する。
30日まで:「今月変わる法律・制度」の初号を公開する。総合経済対策など主要政策に生活者ボックスを追加する。LINEで重要変更の試験配信を行い、開封率を測定する。
60日まで:用件レーンを正式版として公開する。YouTubeの直接メッセージ枠を月次定例化する。英語版に生活・災害の入口を追加する。
90日まで:検索流入、総到達数、動画指標の効果測定レビューを行い、次期リニューアルの要件定義(サービスレーンの本格導入の可否を含む)をまとめる。
9. 自己批判 ― 確認できなかったこと
スマートフォン表示での第一画面の印象は、実機幅での確認手段がなく未確認です。サイト内検索は存在を確認しましたが、実行していないため精度と並び順は未検証です。Facebook公式アカウントのフォロワー数は公開情報から取得できず、Xのフォロワー数(公式約180万、災害用約310万)は第三者計測サイトの値です。官邸サイト自体のアクセス数や認知率を測る公開の公的統計は、調査範囲では見つかりませんでした。LINEの配信運用の実態(セグメント配信の有無など)も外部からは確認できていません。提案6とKPI設計は、運営側の実データで検証する必要があります。また本レポートの数値の一部は2026年11月3日時点の公開情報に基づきます。
細野から
Museは、同じことを質問しても、使う人や学習している内容によって回答が変わります。
どの回答にも気づきやヒントはありますが、やはり自分の目的に近い回答のほうが、より実践的で役立ちます。
そのため、Museを自分の目的や活動内容に合わせて育てていくことが大切です。
試しに、首相官邸公式サイトを分析してみてください。そして、その結果を今回の結果と見比べてみると、回答の違いや自分のAIの特徴がよくわかると思います。