はじめに:Macを買わずに、App Storeの審査まで来てしまった
iPhoneアプリを作るにはMacが要る。自分もずっとそう思っていました。
Mac miniなら10万円台からありますが、開発に使うならメモリを積みたくなって、気づけば見積もりは20万、30万。副業でアプリを出したいだけの人間には、回収の見込みが立たない金額です。それで何年も「いつかMacを買ったら」のまま止まっていました。
その自分が今年の7月、Macを1秒も触らずに、自作の地図アプリをApp Storeの審査に出しました。この記事はその全記録です。先に、本編に出てくる実測の数字だけ並べます。
Appleの開発者登録、支払いから承認メールまで9分(Windowsのブラウザだけ。メールのタイムスタンプが証拠です)
かかった固定費は年会費の12,980円だけ。Macの見積もり30万円は消えました
ビルド用に借りたクラウドのMacの請求額、0円(使用量グラフは崖のように跳ねたのに、です)
ただし楽勝ではなかった。設定の壁でビルドに5回失敗し、審査には4回落ちました
最後のひとつが、この記事のいちばんの売り物です。初めての提出で審査に落ちる確率は体感でかなり高い。自分は4回落ちて、4回とも「なぜ落ちたか」「どう直したか」を、Appleから来たメールの実物と一緒に本編に記録しました。しかも3回目の原因は、コードでも設定画面でもない、Macなし運用の人だけが踏む場所に埋まっていました。これから同じ道を歩く人は、ここを読んでおくだけで数日単位の遠回りが消えるはずです。
先に、手元にある2通のメールを見せます。
1通目は、Appleからの請求メールです。

amの注文確認メール。1年間のメンバーシップ 12,980円】
Apple Developer Program、1年間のメンバーシップ、12,980円。2026年7月9日にWindowsのブラウザから支払ったものです。
2通目は、App Storeの審査受領メールです。

ve received your app for review」】
自分が作った地図アプリを、App Storeの審査に提出したという受領通知。ここまでの作業に、Macは一度も登場していません。使ったのはWindowsのデスクトップと、普段使いのiPhoneが1台。
自分は福岡で店舗の仕事を21年やっていて、エンジニアが本業ではありません。アプリはAIに書かせて、公開まわりの作業は営業のあとの時間にやりました。その過程で調べたこと、詰まったこと、実際に払った金額をこの記事にまとめます。
ひとつ先に正直に書いておくと、「Apple製品ゼロ」では途中で困る場面がありえます。Macは最後まで要りませんでしたが、iPhoneは持っていたほうがいい。理由は本文で説明します。iPhoneユーザーに届けたくてこの記事を読んでいる人なら、たぶん手元にあるはずの1台です。
MacなしでiPhoneに届けるルートの全体像
調べて、試して、最終的にルートは3つに整理できました。正確に言うと、現実的なのは2つで、残り1つは上級者向けです。
ルートA:ホーム画面に置いてもらうWebアプリ
PWAという横文字で呼ばれますが、中身は「スマホのホーム画面にアイコンとして置けるWebサイト」です。難しい話はいったん忘れて、こう想像してください。
お客さんがiPhoneのSafariであなたのサイトを開く。画面下の共有ボタンから「ホーム画面に追加」を1回タップする。それだけで、次からはホーム画面のアイコンから、普通のアプリと同じ顔で立ち上がります。
App Storeには並びません。そのかわり、審査もお金も待ち時間もゼロ。今日作って今日配れます。直したい所が見つかっても、こちらで直せばお客さん全員の画面が直ります。
「それってただのお気に入り登録でしょ」と思うかもしれません。自分も最初はそう思っていました。でも、いまのiPhoneでは、ホーム画面に置いたものはSafariとは別の独立したアプリの見た目で開きます。通知も条件つきで送れます。昔よく言われた「7日間使わないとデータが消える」話も、ホーム画面に置いたアプリには当てはまらないとAppleが説明しています。このへんの根拠は有料部で出典ごと整理しました。
苦手なこともあります。ざっくり言うと「スマホの奥のほうの機能」です。歩数や体温計との連携、アプリを閉じている間の裏での動き。ここが必要なアプリなら、次のルートBを選ぶことになります。
ルートB:クラウドビルドでApp Storeへ
App Storeに正式に並べるルートのうち、専用サービスを使う方です。
iOSアプリの実行ファイルを作る作業(ビルド)にはmacOSが必要、というのは今も事実です。ただし「自分の手元に」ある必要はなくなりました。CodemagicやEAS BuildといったiOSビルド代行サービスが、クラウド上のMacでビルドから署名(Appleに「正規の開発者が作った」と証明する処理)、App Storeへのアップロードまで代行してくれます。Codemagicの場合、個人アカウントには月500分の無料枠がありました。
残る作業、つまりアプリの登録、スクリーンショットの入稿、審査への提出は、App Store Connectという管理画面で行いますが、これは全部ブラウザで完結します。Windowsで問題ありません。
費用はAppleの年会費12,980円。クラウドビルドは無料枠に収まればゼロです。
ルートC:GitHub Actionsで自前構築
GitHubのCI(自動ビルドの仕組み)にはmacOSのマシンを借りる機能があり、これを自分で組めばルートBと同じことができます。無料枠は実質月200分ほど。
白状すると、冒頭のメール2通に至るまでに自分が歩いたのはこのルートです。ただし設定ファイルはAIに書かせました。それでもビルドは何度も失敗して、原因を突き止めるのに丸一日使っています。証明書の扱いや秘密情報の管理をすべて自分で組むことになるので、AIを相棒にできる人以外には勧めません。実際に何をやって、どこで転んだかは有料部に全部書きました。
3ルートの比較
費用:ルートA:PWA=0円 / ルートB:クラウドビルド=年12,980円 / ルートC:自前CI=年12,980円
公開までの日数:ルートA:PWA=即日 / ルートB:クラウドビルド=数日〜2週間 / ルートC:自前CI=数日〜2週間+構築期間
Appleの審査:ルートA:PWA=なし / ルートB:クラウドビルド=あり / ルートC:自前CI=あり
App Store掲載:ルートA:PWA=されない / ルートB:クラウドビルド=される / ルートC:自前CI=される
プッシュ通知:ルートA:PWA=条件つき / ルートB:クラウドビルド=制約なし / ルートC:自前CI=制約なし
難易度の体感:ルートA:PWA=Webが作れれば低い / ルートB:クラウドビルド=中 / ルートC:自前CI=高
Mac:ルートA:PWA=不要 / ルートB:クラウドビルド=不要 / ルートC:自前CI=不要
iPhone実機:ルートA:PWA=あると検証が楽 / ルートB:クラウドビルド=検証でほぼ必須(登録は本人確認しだい。自分はWindowsだけで通った) / ルートC:自前CI=同左
どっちを選ぶか
自分の整理はこうです。
「まず身内やお客さんに使ってもらいたい」ならルートA。店の常連さんに配る、家族で使う、SNSのフォロワーに試してもらう。この距離感ならApp Storeの看板は要りません。0円で今日から始められます。
「知らない人に見つけてもらいたい」「App Storeにある、という信頼がほしい」ならルートB。検索から降ってくるユーザーはApp Storeにしかいませんし、「ストアからどうぞ」と言えるかどうかで相手の警戒心は変わります。年12,980円はその値段です。
両方やる、という答えもあります。今回の地図アプリも、Webアプリとしてホーム画面に置ける状態までは先に作ってあって、そこからApp Storeまで持っていくと決めて審査に出しました。順番として、まずWebアプリで小さく試してからルートBに進むのは、費用の面でも精神面でも悪くない道です。
ここから先の有料部に入っているのは、手順書と、自分が実際に転んだ場所の記録です。転んだ場所のほうが値段の中身だと思っています。同じ穴は、知ってさえいれば1分で避けられるので。
ルートAの全手順。プッシュ通知で引っかかった箇所と、「7日でデータが消える」という有名な話の正確なところ(一次情報つき)
Apple開発者登録の実録。承認まで9分だった手順そのままと、日本の登録者が転びやすい4か所(氏名の入力形式、本人確認書類の選び方、謎のエラーが出たときの正解の待ち方、など。知らないと数日止まります)
クラウドのMacでビルドする全手順。最初のAPIキー作成に役割選びの罠があり、自分はここで一度止まりました。正解は先に書いてあります
ビルドが5回失敗した原因と対処の時系列。うち1回は、エラーも出ずに地図だけが灰色になる嫌な事故で、原因はWindowsユーザー全員が踏みうる文字コードの落とし穴でした
Macも実機シミュレータもない状態でのテスト方法。TestFlight(Appleの配信テスト機能)で審査なしに自分のiPhoneへ入れる手順
審査に4回落ちた全記録。1回目の指摘3件と直し方、2〜3回目の原因をMacなしでどう突き止めたか、4回目の拍子抜けする落ち方まで。「審査はiPadで来ることがある」という噂が実際に当たった話も入っています
かかった費用の総まとめ。クラウドのMacの請求0円の内訳を、請求画面のスクショごと
購入者向けのおまけとして、実際に使っているビルド設定ファイルの実物(日本語注釈つき)と、提出前セルフチェックリスト
審査の結果はこの記事に追記していきます。最終章の「審査の結末」も、確定し次第この記事に足します。買い切りで、追記分も読めます。
【ここまで無料公開・ここから有料】
はじめに:Macを買わずに、App Storeの審査まで来てしまった
iPhoneアプリを作るにはMacが要る。自分もずっとそう思っていました。
Mac miniなら10万円台からありますが、開発に使うならメモリを積みたくなって、気づけば見積もりは20万、30万。副業でアプリを出したいだけの人間には、回収の見込みが立たない金額です。それで何年も「いつかMacを買ったら」のまま止まっていました。
その自分が今年の7月、Macを1秒も触らずに、自作の地図アプリをApp Storeの審査に出しました。この記事はその全記録です。先に、本編に出てくる実測の数字だけ並べます。
Appleの開発者登録、支払いから承認メールまで9分(Windowsのブラウザだけ。メールのタイムスタンプが証拠です)
かかった固定費は年会費の12,980円だけ。Macの見積もり30万円は消えました
ビルド用に借りたクラウドのMacの請求額、0円(使用量グラフは崖のように跳ねたのに、です)
ただし楽勝ではなかった。設定の壁でビルドに5回失敗し、審査には4回落ちました
最後のひとつが、この記事のいちばんの売り物です。初めての提出で審査に落ちる確率は体感でかなり高い。自分は4回落ちて、4回とも「なぜ落ちたか」「どう直したか」を、Appleから来たメールの実物と一緒に本編に記録しました。しかも3回目の原因は、コードでも設定画面でもない、Macなし運用の人だけが踏む場所に埋まっていました。これから同じ道を歩く人は、ここを読んでおくだけで数日単位の遠回りが消えるはずです。
先に、手元にある2通のメールを見せます。
1通目は、Appleからの請求メールです。
amの注文確認メール。1年間のメンバーシップ 12,980円】
Apple Developer Program、1年間のメンバーシップ、12,980円。2026年7月9日にWindowsのブラウザから支払ったものです。
2通目は、App Storeの審査受領メールです。
ve received your app for review」】
自分が作った地図アプリを、App Storeの審査に提出したという受領通知。ここまでの作業に、Macは一度も登場していません。使ったのはWindowsのデスクトップと、普段使いのiPhoneが1台。
自分は福岡で店舗の仕事を21年やっていて、エンジニアが本業ではありません。アプリはAIに書かせて、公開まわりの作業は営業のあとの時間にやりました。その過程で調べたこと、詰まったこと、実際に払った金額をこの記事にまとめます。
ひとつ先に正直に書いておくと、「Apple製品ゼロ」では途中で困る場面がありえます。Macは最後まで要りませんでしたが、iPhoneは持っていたほうがいい。理由は本文で説明します。iPhoneユーザーに届けたくてこの記事を読んでいる人なら、たぶん手元にあるはずの1台です。
MacなしでiPhoneに届けるルートの全体像
調べて、試して、最終的にルートは3つに整理できました。正確に言うと、現実的なのは2つで、残り1つは上級者向けです。
ルートA:ホーム画面に置いてもらうWebアプリ
PWAという横文字で呼ばれますが、中身は「スマホのホーム画面にアイコンとして置けるWebサイト」です。難しい話はいったん忘れて、こう想像してください。
お客さんがiPhoneのSafariであなたのサイトを開く。画面下の共有ボタンから「ホーム画面に追加」を1回タップする。それだけで、次からはホーム画面のアイコンから、普通のアプリと同じ顔で立ち上がります。
App Storeには並びません。そのかわり、審査もお金も待ち時間もゼロ。今日作って今日配れます。直したい所が見つかっても、こちらで直せばお客さん全員の画面が直ります。
「それってただのお気に入り登録でしょ」と思うかもしれません。自分も最初はそう思っていました。でも、いまのiPhoneでは、ホーム画面に置いたものはSafariとは別の独立したアプリの見た目で開きます。通知も条件つきで送れます。昔よく言われた「7日間使わないとデータが消える」話も、ホーム画面に置いたアプリには当てはまらないとAppleが説明しています。このへんの根拠は有料部で出典ごと整理しました。
苦手なこともあります。ざっくり言うと「スマホの奥のほうの機能」です。歩数や体温計との連携、アプリを閉じている間の裏での動き。ここが必要なアプリなら、次のルートBを選ぶことになります。
ルートB:クラウドビルドでApp Storeへ
App Storeに正式に並べるルートのうち、専用サービスを使う方です。
iOSアプリの実行ファイルを作る作業(ビルド)にはmacOSが必要、というのは今も事実です。ただし「自分の手元に」ある必要はなくなりました。CodemagicやEAS BuildといったiOSビルド代行サービスが、クラウド上のMacでビルドから署名(Appleに「正規の開発者が作った」と証明する処理)、App Storeへのアップロードまで代行してくれます。Codemagicの場合、個人アカウントには月500分の無料枠がありました。
残る作業、つまりアプリの登録、スクリーンショットの入稿、審査への提出は、App Store Connectという管理画面で行いますが、これは全部ブラウザで完結します。Windowsで問題ありません。
費用はAppleの年会費12,980円。クラウドビルドは無料枠に収まればゼロです。
ルートC:GitHub Actionsで自前構築
GitHubのCI(自動ビルドの仕組み)にはmacOSのマシンを借りる機能があり、これを自分で組めばルートBと同じことができます。無料枠は実質月200分ほど。
白状すると、冒頭のメール2通に至るまでに自分が歩いたのはこのルートです。ただし設定ファイルはAIに書かせました。それでもビルドは何度も失敗して、原因を突き止めるのに丸一日使っています。証明書の扱いや秘密情報の管理をすべて自分で組むことになるので、AIを相棒にできる人以外には勧めません。実際に何をやって、どこで転んだかは有料部に全部書きました。
3ルートの比較
費用:ルートA:PWA=0円 / ルートB:クラウドビルド=年12,980円 / ルートC:自前CI=年12,980円
公開までの日数:ルートA:PWA=即日 / ルートB:クラウドビルド=数日〜2週間 / ルートC:自前CI=数日〜2週間+構築期間
Appleの審査:ルートA:PWA=なし / ルートB:クラウドビルド=あり / ルートC:自前CI=あり
App Store掲載:ルートA:PWA=されない / ルートB:クラウドビルド=される / ルートC:自前CI=される
プッシュ通知:ルートA:PWA=条件つき / ルートB:クラウドビルド=制約なし / ルートC:自前CI=制約なし
難易度の体感:ルートA:PWA=Webが作れれば低い / ルートB:クラウドビルド=中 / ルートC:自前CI=高
Mac:ルートA:PWA=不要 / ルートB:クラウドビルド=不要 / ルートC:自前CI=不要
iPhone実機:ルートA:PWA=あると検証が楽 / ルートB:クラウドビルド=検証でほぼ必須(登録は本人確認しだい。自分はWindowsだけで通った) / ルートC:自前CI=同左
どっちを選ぶか
自分の整理はこうです。
「まず身内やお客さんに使ってもらいたい」ならルートA。店の常連さんに配る、家族で使う、SNSのフォロワーに試してもらう。この距離感ならApp Storeの看板は要りません。0円で今日から始められます。
「知らない人に見つけてもらいたい」「App Storeにある、という信頼がほしい」ならルートB。検索から降ってくるユーザーはApp Storeにしかいませんし、「ストアからどうぞ」と言えるかどうかで相手の警戒心は変わります。年12,980円はその値段です。
両方やる、という答えもあります。今回の地図アプリも、Webアプリとしてホーム画面に置ける状態までは先に作ってあって、そこからApp Storeまで持っていくと決めて審査に出しました。順番として、まずWebアプリで小さく試してからルートBに進むのは、費用の面でも精神面でも悪くない道です。
ここから先の有料部に入っているのは、手順書と、自分が実際に転んだ場所の記録です。転んだ場所のほうが値段の中身だと思っています。同じ穴は、知ってさえいれば1分で避けられるので。
ルートAの全手順。プッシュ通知で引っかかった箇所と、「7日でデータが消える」という有名な話の正確なところ(一次情報つき)
Apple開発者登録の実録。承認まで9分だった手順そのままと、日本の登録者が転びやすい4か所(氏名の入力形式、本人確認書類の選び方、謎のエラーが出たときの正解の待ち方、など。知らないと数日止まります)
クラウドのMacでビルドする全手順。最初のAPIキー作成に役割選びの罠があり、自分はここで一度止まりました。正解は先に書いてあります
ビルドが5回失敗した原因と対処の時系列。うち1回は、エラーも出ずに地図だけが灰色になる嫌な事故で、原因はWindowsユーザー全員が踏みうる文字コードの落とし穴でした
Macも実機シミュレータもない状態でのテスト方法。TestFlight(Appleの配信テスト機能)で審査なしに自分のiPhoneへ入れる手順
審査に4回落ちた全記録。1回目の指摘3件と直し方、2〜3回目の原因をMacなしでどう突き止めたか、4回目の拍子抜けする落ち方まで。「審査はiPadで来ることがある」という噂が実際に当たった話も入っています
かかった費用の総まとめ。クラウドのMacの請求0円の内訳を、請求画面のスクショごと
購入者向けのおまけとして、実際に使っているビルド設定ファイルの実物(日本語注釈つき)と、提出前セルフチェックリスト
審査の結果はこの記事に追記していきます。最終章の「審査の結末」も、確定し次第この記事に足します。買い切りで、追記分も読めます。
【ここまで無料公開・ここから有料】