直接顔を合わせられないからこそ「想いの伝わる撮影」を/カメラマン・吉田一之

サラリーマンとしてキャリアをスタートしながら、想いと縁が重なり、さまざまな仕事を経て現在はプロカメラマンとして活動するようになった吉田一之さん。
現在は大手企業の商品、アーティストなど幅広い広告の撮影まで活躍の場を広げている吉田さんですが、ココナラというプラットフォームを介しての撮影は「顔が見えないやり取りだからこその楽しさや工夫のしがい」もあると語ります。今日は吉田さんにカメラマンになることになった経緯から、ココナラを通じて行っている撮影について詳しく伺いました。
サラリーマンからフリーター、アパレル店員。そしてカメラマンの道へ……

本日はよろしくお願いします。
まずはカメラマンになろうと思ったきっかけについて教えてください
元々電機メーカーでサラリーマンをしていたのですが、服に興味があり、アパレル業界で働く夢を持っていました。3年間勤めた後に会社を辞め、沖縄の居酒屋で働いていた時に中目黒のセレクトショップオーナーから声をかけていただき、念願のアパレルで働くことになりました。
その店を盛り上げていくために、当時話題になっていたインスタグラムを使ってみることにしました。最初はお店の服を自分で着て撮影して投稿していたのですが、その後インスタ上でモデルを募り、応募してくれた方を撮影しながら商品をPRしていきました。
この撮影を続けていくことでさまざまな方とコミュニケーションが取れたこと、お客さまの喜んでいる顔を見ることができたことなどにやりがいを感じ始め、「撮影が自分のやりたい仕事かもしれない」と思い始めました。
そこからカメラマンとしてのキャリアがスタートしたのですね。
はい。とはいえプロとしての実績はなかったので、最初は技術を学びたいと考え、撮影スタジオに就職することにしました。といってもアルバイトとしてですが……。
そこでは、主にアパレル商品、寝具、雑貨などの撮影を行いました。機材の使い方を覚えながら、ライティングなどは自身でも工夫し、実践を通して知識を蓄えていきました。2カ月ほど経った頃に「社員にならないか?」とお声がけをいただき、一人でも撮影するようになっていったのですが、それから1年ほど経ったタイミングで直接学んでいた上司が辞めてしまったのです。その時、もっと技術を学ぶためには自分自身も外に出たほうが良いかもしれないと考え、撮影スタジオを退職することにしました。
退職後、ほかに働くあてがあったのでしょうか……?
あったといえばあった、なかったといえばなかったのかもしれません(笑)。スタジオに勤めていた頃に知り合ったライターの友人から、「うちの取材撮影をやってくれないか?」と相談を受けていたことも一つの後押しになりました。小さなきっかけではありましたが、撮影現場に赴き、そこで知り合った別の方がまた撮影を依頼してくれるなど、徐々にその場を広げていくことができました。
ただ、それだけでは全く生活ができる状況ではなく、派遣会社に登録しプロカメラマンのアシスタントを並行して行っていました。合計30人ほどのカメラマンについたのですが、その中で数名「アシスタントは吉田さんで」と指名してくれるようになりました。生活のために始めたアシスタントですが、結果として物撮りやライティングの技術を、学んだり盗んだりできたことは非常に大きかったですね。
トレンドを捉えた「パステル調」の撮影サービスで差別化

ココナラでサービスを出品することになったきっかけを教えてください。
きっかけは、コロナ禍でした。当時、私がメインで仕事としていた取材やイベントなど、人を撮る現場が全てなくなってしまったのです。
家に籠って悶々とする日が続く中、周囲の方がさまざまな取り組みを始めました。お世話になっている飲食店が弁当販売を始めたのもその一つです。そんな取り組みを「応援したい」という気持ちが芽生え、お弁当の写真を撮ってインスタで勝手にPRしていたんです。それをとても喜んでいただけたので、「自宅内で撮影することを仕事にできないか?」と考えました。そこで色々調べる中で、ココナラに出会ったのです。
どのようなサービスを出品したのでしょうか?
当時は6畳ほどの部屋をスタジオ代わりにしていたので、凝った背景やボケのある特徴的な写真が撮れる環境ではありませんでした。そのような環境の中どのように差別するか考え、ほかの出品サービスを分析したところ、白や大理石調の背景を使うものが多いことに気づいたんです。
当時、韓国ブームが浸透してきている中で、ポップなパステルカラー調の写真が人気になり始めていました。「今ならこれが差別化のポイントになるかもしれない」と感じ、さまざまな色の大きな画用紙を用意し、背景のバリエーションを売りにしたサービスを出品しました。
出品当初から依頼は入ってきましたか?
やはり当初は難しく、始めてから数カ月は月に1、2件程度でした。ただ、実績と評価が積み重なるにつれて、徐々に増えていきました。
特徴的だったのは、リピートの依頼が多かったことです。価格帯の安い新規サービスも増えていく中、私は少し高めの設定だったのですが、一度依頼していただいた方から続けて発注いただけたのはとてもありがたかったです。
直接顔を合わせないからこそ、想いが伝わる取引がしたい
リピートされるには理由があると思いますが、ご自身ではどのような点にあったと考えていますか?
「直接顔を合わせることができない取引」であることを踏まえたやり取りを心がけました。対面でも必要ですが、オンライン取引では即時に反応すること、テキストで意図が伝わるような対応をすることがより求められます。
また、現場で指示を仰ぐこともできません。そこで、撮影前に参考となる画像を用意してもらったり、それを元に細かくすり合わせを行ったりすることで、お客さまの頭の中にあるイメージのすり合わせを丁寧に行うようにしています。
私は撮らせていただく以上、商品に愛着や想いを持って撮影したいと思っています。商品の概要はもちろんですが、なぜこの商品を作ったのか、どういった想いがあるのか、誰に届けたいのかなどを、ほかのカメラマンより多く聞かせていただくかもしれません。
当初は6畳の自宅兼スタジオとのことでしたが、現在の環境は変わりましたか?
はい!スタジオも広くなり、機材や照明も整いました。スタジオに入るサイズのものであれば、どんなものでも対応できる環境になっています。
また、背景や天板、お皿や箱、造花など小道具を多く取り揃えているのも特徴です。そういったものを駆使しながら、お客さまのイメージに近い、イメージを超えられるような写真をご提供できればと考えています。

ご自身のスキルを高めるための取り組みなどがあれば教えてください。
カメラマンとしての自己ブランディングについてはかなり意識しています。自身を覚えてもらうことも重要なので、以前はレゲエをずっと聴いていたわけでもないのに、見た目のインパクトを出すためにドレッドヘアにしていたこともあります(笑)。
また、現在もスキルアップや情報収集は欠かしていません。最前線で活躍されている方の写真を継続して学んでいるだけでなく、一見写真に関係ない環境の変化や社会のトレンドにも注目するようにしています。例えば最近ではAIが注目のキーワードになっています。クリエイターの中にはともすると脅威に感じたり、否定したりといった反応をされる方もいらっしゃいますが、私は自分に取り入れるためにはどうしたら良いかを考えるようにしています。
今後も私たちが抗えない環境の変化は起こると思いますが、人にしかできないこと、私にしかできないことを常に考え、自分らしいサービスを提供していきたいですね。
カメラマン/吉田一之
