個人、企業関係なく「VTuberにチャレンジする人を支えたい」/イラストレーター&Live2Dモデラー・中里智明

ゲーム実況や楽曲配信といった個人利用を中心に、最近では企業や自治体が商品やサービスを「柔らかく・わかりやすく」紹介するためにも活用している「VTuber」。しかし、いざ制作を依頼しようと思っても「何から相談すればいいの?」「高額すぎて手が出せない……」と悩んでしまう方も多いはず。そのような中、誰でも気軽に頼める“親しみやすいモデル作り”をモットーに、多くのVTuberを世に送り出しているのがイラストレーター&Live2Dモデラーの中里智明さんです。
SE、漫画家、イラストレーターとしての豊富な経験を経て、コロナ禍でVTuber制作の世界に飛び込んだ中里さんは、どのようにして依頼が途切れない人気クリエイターになったのか。中里さんが考える「依頼しやすさ」と「満足度の高いモデル作り」の秘訣に迫ります。
SE、漫画家、イラストレーター……異色のキャリアからVTuber制作の世界へ
本日はよろしくお願いします。まずはこれまでの経歴について教えてください。
大学を卒業後システムエンジニアとして働いていましたが、実はその当時から趣味としてイラストを描いていたんです。コミックマーケットや委託販売サイトを活用して自分の漫画を販売する中で、「月1冊程度新作を描いていけば食べていけるのでは?」と考え、5年ほど経った後独立することにしました。
その後は漫画家として連載を持ったり、アニメやイベントなどの公式グッズ制作に関わったりと、幅広いフィールドでイラストを描いていました。
VTuber制作に本格的に取り組むようになったきっかけは何だったのでしょうか?
コロナ禍でイベントやライブが次々に中止になり、公式グッズのイラスト制作の仕事が一気に減ってしまったことがきっかけでした。そんな中、2018年頃から急速に注目を集め始めたのがVTuberです。直感的に「これは伸びる」と感じました。
幸い私はすでにイラストが描けたので新たにLive2Dの使い方を独学で習得し、初めてのモデルを作ってみたんです。完成してからココナラですぐに出品してみたところ、翌日に依頼が入ったんです。その後も順調に依頼が来るようになり、3カ月後には月商100万円を超えました。タイミングと需要の波に乗れたのが大きかったですね。
「お客さまが注文しやすい環境づくり」を最重視。経験を生かし、多様なパターンのイラスト作成が可能

出品で工夫していることはありますか?
「とにかくお客さまが注文しやすい環境を作る」ことをモットーにしています。ココナラ出品当初は、プロフィールやポートフォリオを作り込むよりも、「価格」と「セット内容」に着目しました。
「まずは手に取ってもらえる」よう、当時はイラスト、モデリング、ロゴからサムネイル用のキャラクター制作までフルセットで1万円からという価格帯で提供していたんです。そこから徐々に価格は上げていますが、常に「注文しやすい金額帯」ということは意識するようにしています。
お客さまからもいろいろな依頼が来るかと思いますが、中里さんはどのようなイラストを得意としているのですか?
「どんなイラストでも描ける」のが自分の長所だと考えています。イラストレーターとしての自身のオリジナル絵柄はもちろんありますが、公式グッズのイラスト作成の経験を積むことにより、あらゆるイラストの特徴を掴み、表現することができるようになりました。
ですので、例えばお客さまにイメージするイラストがあればそれを参考に、企業オリジナルキャラクターなどお客さまが版権を持つものがあれば、その通りに描くこともできます。
漫画家としても活動されていたとのことですが、ご自身の作風にこだわりなどはなかったのでしょうか?
もちろん若い頃はギラギラしていて「自分が描きたいものを描く」という意識は強くありました。徐々に固定のファンも付いていったのですが、そのファンのためを考えると、時代に応じてトレンドが変わっていく中でも絵柄を変えることができなくなってしまうんです。
もちろん自分の作風が突き抜けて、時代に関わらず世に認められる存在になるという道もありますが、それを実現できるのはほんの一握りで、そうでなければ他者や社会の利益を考えていかないと多くの方に受け入れられることはないと感じたんです。
それであれば、「何でも描ける」というもう一つの自分の強みを活かし、お客さまの幅広い要望に的確に応えることが自分の役割なのではないかと考えました。結果として多くの方から相談をいただけており、この判断は間違っていなかったと思います。
「ちょっと高級なファミレス」を目指し、リーズナブルで高品質なモデルを提供したい

個人と法人、依頼の割合や特徴について教えてください。
8〜9割は個人の方で、特にゲーム実況を始めたい方が多いですね。一方、法人の依頼は全体の1〜2割ですが、徐々に増えてきています。
法人側のニーズでは公式YouTubeチャンネルを開設したいものの社員の顔出しは控えたいと考える企業や、既存のキャラクターをVTuber化したいというニーズが目立ちます。
今でもリーズナブルな金額設定にこだわっているのには理由があるのでしょうか?
個人、法人問わず「VTuberを始めてみたい」と考える方の後押しをしたいからです。
一般的にプロのイラストレーターが目指すのは「三つ星シェフ」です。こういった方々が提供するモデルは非常に高品質ですが、どうしても高い価格帯になってしまう上、有名なイラストレーターに依頼すると、モデリングについてもその方の意向を反映しなければならず、自由に操作ができなくなってしまうこともあるんです。
本来はあくまでVTuberになる人が主人公なのに、思うように活動できないのは本末転倒です。そこで私は「ちょっと高級なファミレス」を目指しています。個人の方でも手が届く金額であり、法人の方がビジネスシーンでも使えるクオリティであること。しかもイラスト制作からモデリングまで一貫して対応できるので、よりスムーズに完成まで寄り添うこともできます。これを実現することで、より多くの方にVTuberを始め、続けていける機会を提供できると考えています。
制作にあたってのやり取りの方法やポイントについても教えてください。
やりとりはほぼテキストのみで進めています。ヒアリングシートに「性別」「身長」「性格」「配信の目的」などを書いてもらい、あとは丸投げでも大丈夫です。加えて参考にしたモデルなども共有いただけると、より精度が高まります。
その後は必要に応じて「こういう方向性で作りませんか?」とこちらから提案し、ラフを提出します。制作したものについてはその理由や意図などを丁寧に説明するようにしています。
これまで500体以上作ってきましたが、大きなキャンセルは1件のみ。ラフの時点である程度作り込んでいますが、「この方向でOK」と言っていただけることがほとんどです。
ありがとうございます!最後に依頼を検討している方へのメッセージをお願いします。
「VTuberを作りたいけど、どうしたらいいかわからない」という方はとても多いと思いますが、まずは気軽に相談してください。「こんなイメージ」「こんな活動をしたい」というざっくりしたイメージだけで大丈夫です。また、わからないことがあればどんどん質問していただければきちんとお答えします。
必要であれば「こういうキャラクターが流行っている」「こういう色合いはこういう印象を与える」といった具体的な提案もしていますので、一緒に考えながら良いものを作り上げていきましょう!
漫画家・イラストレーター・デザイナー/中里智明

