ダークファンタジー小説『王宮城下町の殺人鬼』 1

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王宮の城下町は、夜景が美しい。
天を見ると、星空が広がっている。

城下町には殺人鬼が出るという話がある。
街の警備団達は、殺人鬼を捕まえるのを躍起になっていた。

何でも、死体は切り分けられた後、天井から吊るされている。死体が晒されている場所は、倉庫や下水、肉屋といった場所だった。
極めて、異常性のある行動だ。
騎士団の若手として、ロノウェはこの犯罪者の討伐を命令された。

「って言っても、俺一人で出来るんだろうか」
目撃情報によると、殺人鬼は透き通るような金髪の髪を腰元まで伸ばしており、女物のビスチェとドレスを付けている男性。美しい顔立ちだが、明らかな性的異常者。倒錯者。邪悪で禍々しいオーラを放っていたと聞く。更に特徴的なのは、両手に血の付いた長めのナイフを手にしていたらしい。それで人間を解体しているのだろうか。

ロノウェは酒場にて、人を探していた。
何やら、痕跡から人を探し出す事が出来る者らしい。
酒場に来て、彼はそれらしい人物を探した。

「もしもし、灰色の髪のお姉さん。あ、お兄さんかな?」
ロノウェは声を掛けられる。
なんだか、陰気な男が酒場の奥のテーブルの席に座っていた。

「俺は犬よりも強い嗅覚を持っている。俺が付いていく。街を騒がしている殺人鬼を探し回っているんだろう?」
「ああ。警備も騎士の仕事だからな」
「ははっ。ちなみに俺は元々は夜盗みたいなもんだ。牢屋に入っていた事もある。恩情で出されて、警備の下っ端をさせられているがな」
「そうか。せいぜい、王宮の為に働いてくれよ」
二人は酒場の外に出ると、純白の肌をした少女が佇んでいた。

彼女の名はセーレ。
女王陛下アンジェル・ノワールのお気に入りの女騎士だ。

「ロノウェ。貴方が難しい任務をこなさなければならないと聞いて、陛下より貴方のお供をするように言われました」
「やれやれ。聖女様、自らか? 俺とこの男だけで充分だよ」
「俺はプラドと申します。警察犬の役割をしています」
「とにかく、現場に向かいましょう。私も役に立てます」


殺人現場。
それは死体が片付けられた後も、何処かドス黒く陰鬱な空気を帯びていた。

そこは肉屋の倉庫の中だった。
肉屋の娘が天井から、数十個以上のパーツになってぶら下がっていたらしい。

「やはり、未だに死臭がするな…………」
プラドは鼻を抑える。

「私が精霊達に聞いた処、死者は苦しみの声を上げていると言っていました」
セーレは光魔法を使い、光の精霊達の声を聴く事が出来る。
ロノウェもまた、大地の精霊と思念となった霊達の声を聴く事が出来た。

「ああ、そうだな。此処は苦痛ばかりが存在している。……おそらく、犠牲者は生きながら、少しずつバラバラにされて、生きている間に自分の身体の一部を吊るされていく光景を見せられていたのだろう…………」

ロノウェは口元を抑える。
犯人の犯行に、吐き気ばかりがこみ上げる。

「霊は何て言っている?」
「ただただ、悲しい……苦しいと…………」
セーレは項垂れる。

「なあ、臭いだが。俺は追う事が出来るぜ。犯人の身体に血痕が付着している筈だ。この前の雨で多少、流れちまったが、俺は血痕の後を、痕跡を追う事が出来る。……いずれ、この殺人鬼の下に辿り着く事が出来ると思う」


プラドが見つけた場所は、古い館だった。
何でも、何年か前までは若い吸血鬼が住んでいた場所だったらしい。
だが今は朽ち果てていて、街の者が誰も寄り付かない場所となっていた。
時刻は深夜近い。辺りは霧に包まれている。

「此処なのか?」
ロノウェはプラドに確認する。

「ああ。この辺りまで臭いは続いている」
周辺は鴉が飛び交っている。
窓には蜘蛛の巣が張り巡らされていた。

「死者達の戦慄きが強くなっています」
セーレは言う。

「館の中から、血の臭いがする。それから地下から腐敗臭もだ」
夜盗崩れの音ががくがくと震える。

「正直、これ以上、いたくねぇな。やばい、奴は待ち構えてやがる……。俺達三人をずっと館の中からうかがっている…………」

 プラドは今にも逃げ出しそうな顔をしていた。
「お前はそこで待機していくか? 奴は中にいるんだろう、俺が片付ける。セーレ、お前はどうする?」
 ロノウェは帯刀していた剣を引き抜く。

「もちろん、私も戦います! 共に殺人鬼を捕まえましょうっ!」
 セーレは意気込む。
「玄関までだけだぜ。俺は戦闘能力が無いから、後ろで待機してるぜ」
プラドはおどおどと言う。

館の入り口まで三名は辿り着く。
何か煌びやかに、光り輝くものが見えた。
ロノウェとセーレの二人は、それが何なのか即座に判断する事が出来た。
ロノウェは刃で光り輝くものを弾き飛ばした。

セーレは杖で薙ぎ払う。
どん、と。
まるで、あっけなくプラドの頭頂部と喉に数本の矢が刺さり、貫通していた。
プラドはそのまま死んでしまった。
バタバタと、一匹のコウモリが二人と屍となった一人を見下ろしていた。

「おやおや。面倒臭い警察犬を最初に始末出来て、主様も喜ばれるだろうなあ。やはり、以前の旦那様の残しておいた罠を有効に活用するのは良い事だったなあ」
「なんだ? お前は?」
ロノウェは怒りでコウモリの方を見る。

「俺か? 俺はバジュリア。コウモリの魔物で、先代の主様にお仕えしていたが、流行り病で死んでしまって以来、此処に居付くしかなくてな。しかし、吸血鬼ってのも病気には弱いのかねえ。今の主様は王宮の街を騒がす殺人鬼だ。とても楽しい話をしてくれるんだ」
セーレは光の魔法をコウモリへと放った。

コウモリは怯えて、館の奥へと逃げていく。
「セーレ。始末しなくていいよ。中で主様という奴と対面しよう」
「ええっ。プラドの仇を打ちましょう」





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