『コーチングよりも大切なカウンセリングの技術』小倉広著

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学び
今回はカウンセリングの基礎を学ぶためにこの本をチョイスしました。
この本はカウンセリングの技術を管理職やリーダー向けに書いた部分もありましたので、その部分は割愛、またはクライエントに読み替えていきます。
それでは簡単に抜粋・要約していきたいと思います。

第1章 カウンセリングが引き起こした五つのミラクル

カウンセリングが先、コーチング、ティーチングは後
受容・共感により部下や後輩の緊張が緩むと、これまで硬直化していた思考が活発に動き出します。

ネガティブな事柄や感情も受容・共感する
ネガティブな感情を感じることは心身の健康にとって必要なことなのです。そのため、カウンセリングでは、抑圧している感情をしっかりと感じ、表出してもらうことを大切にします。

所属が満たされないと、争いが起こり問題は解決しなくなる。
人間性心理学の源流と呼ばれるアドラー心理学では、人間が持つ究極目標は社会への「所属」であると考えます。

所属が満たされると心がゆるみ、冷静に現状が見えてくる
人は自分に対してしていることを他者にする動物です。自分を責めている人は他者を責めます。自分を許せない人は他者を許しません。自分のダメな点ばかり見る人は他者のダメな点ばかり見てしまいます。

レポートではなくエピソードで聞くと互いに見えてくる
私たちが職場で行う会話のほぼ100%はレポートです。レポートとはできごとを抽象的に要約し左脳(言語、数学を扱う論理的な脳)的にまとめたものです。カウンセリング型コミュニケーションではあ、このレポートを「何月何日何時何分」に起きた一度きりの一瞬のエピソードに転換して右脳(映像、イメージを扱う感覚的な脳)的に映像化します。

しっかりと共感した後ならばコーチングの質問が効いてくる
外在化とは、人が悩みtくっつき過ぎて一体化しわからなくなっている状態から悩みそのものを引き離し、いったん外に置くことで冷静に眺められるようにすることです。エピソードを聴くことでそれが起きるのです。

具体策は言わず、視点や考え方だけを提案し、自己決定を大切にする
カウンセリング型コミュニケーションで提案を行う際は相手の自己決定を重視します。人は自分で決めた時にだけそれを継続し結果に責任を負います。

図星を指されると人は笑い出す。認識反射とは?
アドラー心理学における教育理論を体系化したルドルフ・ドライカースは認識反射について言及しています。人は図星を指されるとニヤリと笑う、というのです。

近すぎると見えない。虫の視点、鳥の視点
私たちは悩みを抱えている時、多くの場合視座が低くなり、視野が狭くなっています。問題とくっつき過ぎていると、問題が見えなくなります。いったん距離を取って、クローズアップではなく俯瞰でものを見ることが大切です。

コンフロンテーション(対決・直面化)し、焦点をあてる
人間性心理学を中心としつつも、特定の学派に柔軟な折衷主義によりさまざまな心理療法・カウンセリングの技法を統合し体系化したのがマイクロカウンセリングの提唱者アレン・アイビィです。アイビィがまとめたように、多くの学派ではコンフロンテーション(対決・直面化)や焦点をあてる、などの技法を用います。

思考、感情、行動、身体反応はビリーフが決める
古典的な学習理論パラダイムでは、刺激が反応を生むというS-R理論(Stimulus(刺激)-Response(反応))を人間に当てはめ、条件づけという学習により行動を変えようとしました。
現在、うつ病へのカウンセリングなどで最も多く使われているのが認知行動療法です。この心理療法をお体系化したアーロン・ベックらは、認知理論パラダイムという大きな潮流を作りました。
私たちの悩みのもとである感情(情動)や行動、身体反応はできごとや刺激が作り出すのではなく、それをどのように捉えるかという認知が引き起こす、という考えです。

信念・価値観に触れると気づきが起きる
認知理論パラダイムの考え方は、できごとや刺激を引き起こさないようにするのではなく、捉え方、認知を柔軟にすることで症状を和らげていきます。
この認知(以下信念・価値観と呼びます)は「考え方の癖」であり、「性格」「人格」「パーソナリティー」に限りなく近い存在です。ですから、自分でも気づいていいなかった信念・価値観に触れることで人は「自分でも気づいていなかった自分」に気づきます。
すると、心理学派の一大潮流である人間性心理学の治療目的である「自己一致」が起き、心の健全さがもたらされる。

気づきを統合すると全人格的な成長が起きる
このように、今まで気づいてもいなかった自分の奥底にある信念・価値観に気づき、それを受け容れ統合することで善ん人格的な成長が起きます。すると、これまで人生の中で何度も繰り返されてきた問題や失敗が少しずつ起きなくなります。それにより生きづらさが減り、穏やかな人生、幸福感を感じることが増えてきます。カウンセリングとは心の病を抱える人の治療を行うだけが目的ではなく、ちょっとした生きづらさを抱える健常者に人生の穏やかさと全人格的な成長をもたらすものなのです。

第2章 職場で使える三つの技術 カウンセリング、コーチング、ティーチング

<省略>

第3章 カウンセリングに何が起きているのか

1.すべてに共通する バイスティックの七原則
(1)個別化原則
(2)意図的な感情表出の原則
(3)統制された情緒的関与の原則
(4)受容原則
(5)非審判的態度の原則
(6)自己決定原則
(7)守秘原則

2.ただ聴くだけで変化が起きる クライエント中心療法
中核3条件
 1 無条件の肯定的配慮
 2 共感的理解
 3 自己一致

3.言葉にならない「何か」がわかるah!ha!体験 フォーカシング指向心理療法
人間性心理学の中で中心的な概念の一つである自己一致は、ロジャーズがカウンセラーに必要な条件として提唱しましたが、クライエント側っでどのような変化が起きているのかを説明しませんでした。また、ロジャーズは、クライエント中心療法をマニュアル的に手順化することを嫌ったために、自己位置に至る手順は曖昧なままでした。
そこで、そのミッシング・リンクを埋めるように、ロジャーズの研究パートナーのジェンドリンが提唱したのが、フォーカシングと呼ばれるクライエントの中で起きていることを解説した現象であり、具体的な手順として示されたフォーカシング指向心理療法です。
フェルトセンスと呼ばれる「言葉にならない身体の感覚」に意識の焦点(フォーカス)をあて、それをしっくりくる言葉で表現することで意味を感じていくというプロセスを歩みます。このフェルトセンスこそがリアルな体験であり、しっくりくる言葉で表現することが自己概念を体験に重ね自己一致する、ということなのです。
そして、この言葉にならないフェルトセンスに言葉を与えていく過程で気づきが起き、刻々と体験そのものが変化していき、それが自己概念と一致していきます。それこそがフェルトシフトであり、自己一致において起きているプロセスそのものであります。
このプロセスを自分自身で行うこともできますが、一般的にはカウンセラーにお手伝いをしてもらうことが多いようです。
このようにフェルトシフトが起きると、気がかりなモヤモヤへの考え方がポジティブに変化したり、ふと解決策が浮かんでくることもあります。
このようにジェンドリンによるフォーカシングはロジャーズのクライエント中心療法とあたかも鏡のように相対し、自己一致へ向けてカウンセラーとクライエントの中で起きていくことを教えてくれます。

4.未完了が完了することで地が図へと浮かんでくる ゲシュタルト療法
フレデリック・パールズが提唱したゲシュタルト療法は、今ここでの気づきにより、気がかりである未完了を完了させ、「ルビンの杯」にある図と地の反転を起こす心理療法です。
ゲシュタルト療法では、私たちが日常生活の中で、ルビンの杯全体(杯と人の顔の両方)ではなく、どちらか片方(図)にばかり意識を傾け、他(地)の存在を無視してしまっているために気づきが起きない、と考えます。
そこで、ゲシュタルト療法では、地に沈み込み、意識されなくなっている無意識下の気掛かりを呼吸や表情、手足の動き、声色などから感じ取り、図に浮かび上がらせ、今ここで十分に感じきること(未完了の完了)で、図と地の反転、すなわち気づきを起こすプロセスを行います。
また、このプロセスを体験することは、クライエントが他者や自分自身との失われかけていたコンタクトを取り戻し、有機的な生物が本来持つホメオスタシス(恒常性維持機能)を取り戻す、とも考えます。
しかし、このホメオスタシスは「人が有機的(オーガニック)である時」だけ働き、「べき論に縛られて頭でばかり考えている時」には働かなくなる、と、パールズの盟友でありゲシュタルト療法共同開発者の一人である作家のポール・グッドマンは言いました。そのコンタクトを促すためにカウンセラーはクライエントによる過去や未来についての思考をストップさせ、“今、ここ”にある身体感覚へ意識を向けるようにお手伝いを行うのです。

5.あらゆる行動や感情には目的があり、究極目標は所属である アドラー心理学カウンセリング
アドラー心理学の「目的論」とは、あらゆる行動や感情には「原因」ではなく「目的」がある、というアドラー心理学の根幹を成す基本前提の一つです。
アドラーは原因論では問題解決は不可能である、と考えました。従来の原因論でアプローチする限り、常に問題探しと犯人探しになってしまい、クライエントを追い詰める形になり、カウンセリングが成立しづらい、と考えました。
そこでアドラーは原因論的なアプローチをやめ、目的論に立ってカウンセリングを進めることで大きな成果を得るようになったのです。
行動や感情の目的を探し出し、それを他者に迷惑をかける競合的な縦の関係で実現するのではなく、協力的な横の関係での実現を探す、というカウンセリングを行うのです。
また、アドラーはあらゆる目的にはさらに上位の目的が階層的に存在し、その頂点には全人類に共通する目的がある、とし、それを究極目標と呼びました。それは「社会への所属」です。それは社会の中に居場所があると実感し安心していられることです。
人間は哺乳類に属します。羊や猿やうまを見ればわかるように、哺乳類の多くは群れを作って暮らします。その哺乳類に共通する脳の働きが「愛、仲間、群れ」の有無を感知する哺乳類脳と呼ばれる大脳辺縁系です。私たちは、職場で同僚に「所属」し、社会から必要とされ社会へ「所属」し、家族と仲良く暮らし家庭に「所属」している時にだけ、幸せを感じ、大脳辺縁系がゆったりとくつろぎます。
それこそが、対人関係での安心安全であり、それはアドラー心理学でいう所属であり、ハーバードビジネススクール教授のエイミー・エドモンドソンが提唱し、Google社で最重要目標とされている「心理的安全性」の確率なのです。

第4章 今すぐ使えるカウンセリングの技術

1.壁になる
「壁になる」で用いる技術
(1)相づち
(2)オウム返し
(3)述語的会話
(4)理解の確認

2.エピソードを聴く
「エピソードを聴く」で用いる技術
(1)映像化
(2)THE MOST(あなたが一番◯◯と感じたのは)
(3)入れ子構造
(4)自己内対話

3.(感情に)共感する
「(感情に)共感する」で用いる技術
(1)内的世界(内的準拠枠)に入り味わう
(2)Use of Self(自分を使う) 相手の感情→自分の感情
(3)感情の反射(感情の明確化)
(4)一次感情と二次感情
(5)個別化した上での共感
(6)我ー汝関係(↔︎我ーそれ関係)

4.(信念・価値観に)共感する
「(信念・価値観に)共感する」で用いる技術
(1)ABCD理論(Activating Event(できごと)-Belief(信念、思い込み)-Consequence(結果)-Dispute(反芻))
(2)イラショナル・ビリーフ(非合理的な思い込み)
(3)認知療法

5.解決を提案する
「解決を提案する」で用いる技術
 Iメッセージ(↔︎YOUメッセージ)

第5章 職場でカウンセリングを活かす具体策

<省略>

【感想】

思った以上に専門的で、学ぶことが多い一冊でした。マンガも一部挟んでおり、イメージしやすく理解が深まりました。
フォーカシングや心理的安全性はぜひ今後扱いたいと思っていたのですが、まさかこの本で出てくるとは思わず驚きました。
職場でのカウンセリング的コミュニケーションを学びたい方は、省略した部分に参考になる記述がたくさんありますので、ぜひ読んでみてください。

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心理セラピストtakashi

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