編集者のつぶやき その3 ~編集者という生き物~

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コラム

小説の編集をして20年
まぁ、長いですね…。

しかし本人はこんなに長く編集をしているなんて、
あんまり自覚せず、時がたってしまいました。

編集者って、わりと批評家が多いんですよ。
辛辣だな~と思う人も結構います。

でもそれも無理ないかな、と思います。
だって、小説を読んで、「欠点」がすぐにわからないと
編集者って務まりませんもの。

正確に言うと、小説でも漫画でもアニメでも、
「長所と短所」を見抜く癖があるんです。

いいところと悪いところ。
それが見抜けないと、仕事にならない。

どの小説を読んでも、「面白い!」「もう完璧!」
「素晴らしい!」の一点ばりでは、編集者いらないよね…って話です。

どこかに穴がないか、ダメなところはないか。
それを探すようにできています(笑)。
嫌な癖ですよね…。

だから、投稿作なんか読むと、
「ここがダメ」「あれがダメ」「最初からダメ」
とダメ連発で、大変なものです。

しかし、ダメなところも探さなくてはいけませんが、
一番大切なのは、磨けば光る宝石を見つけることです。
人はそれを「才能」と言います。

編集者とは、きらりと光る才能、他の大多数とは違う何か、
それを見つける仕事、ともいえるかもしれません。

「この才能を絶対に世に広めたい」
そういう純粋な想いが、編集者の原動力の原点かなと思ったりします。

編集者は「これが好きだ」「これが素晴らしい」
と思わないといい仕事ができないので、
かなり感覚的に仕事をしている、かもしれません。

好き嫌いがダイレクトに仕事に出る、というか、
むしろその好き嫌いが仕事になっている、という感じ。

売れている作品でも、「これはすごくいいよね」と思うものと、
「うーん、なんで売れてるんだろう?」と思ってしまうものがあるので、
編集者にもやっぱり好みや嗜好って、あるんですよね。
人によって見つけられる「才能の形」が違うということでしょうか。
面白いですよね。

もう一つ編集者の大事な仕事の一つに、
「作家をその気にさせる」というのがあります。
作家がとにかく気分よく書けるように、
あれこれ気を配ります

褒めておだてたり、時には叱ったり、
作家の「やる気」を高めるように、
一番のパフォーマンスを見せてくれるように、
細かい部分に配慮したりします。

そういう意味では、編集者は「気配り」や「細やかさ」も
大切になってくるかなと思います。
まぁ、社交性のあまりない方も多い業界ですので、
なかなか難しい資質ですが。
私自身も得意とはいいがたいです。

最後に、編集者の喜びとは。
それは、「光る才能」を見つけた時
そしてその「才能」が結晶化した時
つまり、本ができた時です。

それはそれは、感慨深いものがあります。
作家も、自分の本をわが子のように
慈しむ方がいらっしゃると思いますが、
編集者だって、自分が編集した本は
わが子のように大切です。

20年も編集者をしていると、自分が編集した本が
山ほどあって、正直、書棚を圧迫しておりますが、
20年前の本も捨てられず、すべて取ってあります。
棺桶に入れるには多すぎますかね(笑)。




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