仕事の問題はチームワークでは解決しないものです

記事
ライフスタイル
ある日の事務室
岡田課長「松木くん、さっき頼んだコピーは終わっていないのかい」
松木「あ、すみません。まだできていません。急ぎますか」
岡田「午後の会議に使うから、早めに仕上げてくれよ」
松木「はーい」
岡田「前園くん、先方に持っていくワインは用意できているかい」
前園「あれ、まだ発注していませんよ。急ぎますか」
岡田「出張は週末だぞ。間に合うかい」
前園「やってみます」
岡田「おいおい、しっかりしてくれよ。先方からの大事な依頼だからね」
前園「はーい」
岡田「本田係長、出張先のホテルは予約できているかい」
本田係長「大丈夫です。できています。部長と課長の2人分、どちらもシングルで予約済です」
岡田「ありがとう。あとで、ホテルの場所とか、分かるようにしておいてね」
本田「わかりました」

出張.jpg

松木「課長、コピーできました」
岡田「ありがとう。これと、これと、ホチキスで止めておいてね」
松木「これからですか。最初に言ってくださいよ」

いつの間にか、川渕部長が事務室に来ていた。
川渕部長「松木くん、そう言わずに急いで止めてくれ。岡田課長、これから最終的な打ち合わせをするぞ。本田係長も一緒に来てくれ。松木くん、できあがったら、僕の部屋に持ってきてくれよ。よろしく頼んだよ」
松木「しょうがないなぁ。わかりました」

川渕部長と岡田課長は、川渕部長の部屋で打ち合わせを始めた。
岡田「何か、問題、出ていますか」
川渕「本田くん、彼らは、いつも、あぁなのか」
本田「あぁなのかと言われましても、何のことでしょうか」
川渕「与えられた仕事の期限の確認や、出来上がったときの報告は、当たり前のことだろう」
本田「そのことでしたか。でも、課長が彼らに指示するときに、そうやって言ってもらわないと、彼らには分からないと思います」
川渕「そのようだな。本田くんも、ホテルを予約していることを報告していなかったよな」
本田「はい、そうです。なぜ、報告が必要になりますか」
岡田「俺が君たちに報告するよう指示しなかったことが悪いのかもしれないけど、報告を受けると、それが処理できていることを把握できるだろう。そうすると、安心できるし、うまく進められていないときには対処法を指示することもできる。それに、終わっているのなら、他の仕事を頼めるじゃないか」
川渕「そのとおりだ。だから、報告は部下の大事な役割だぞ」
本田「そうでした。そうやって学んでいましたが、身についていませんね。申し訳ありません」
重役の会議.jpg

そのとき、トントンと部屋の扉を叩く音がした。
川渕「はい、どうぞ」
松木「失礼します。コピーできました」
川渕「おぉ、松木くん、ありがとう」
松木「お安いご用です」
本田「こら、部長に、そんな…」
川渕「いやいや、それは良いんだ。そんなことより、松木くん、課長は、君なら素早くできると思って頼んだの分かっているだろう。これからも、素早く頼みますよ」
松木「あいたっ。了解です。気をつけます」
本田「だから部長に、そんな…」
川渕「係長、良いんだって。それじゃ、午後の会議、みんな、よろしく頼むぞ」
岡田「分かりました」
本田係長、松木は事務室に戻った。岡田課長は、川渕部長の部屋に残った。

岡田「部長、すみません。お恥ずかしいところをお見せしました」
川渕「いや、今の若いものは、こんな感じなんだと思っているよ。でも、本田くんには、そろそろ責任を持たせないとダメだろう。スタッフの教育は係長の大事な役割だ。スタッフは本田くんの行動を見ているもんだぞ」
岡田「そうですね。私も、本田への指導を強化しなければなりません」
川渕「まぁ、そういうことだ」

岡田課長は事務室に戻った。本田係長はパソコンに向かい、そのまま仕事を続けていた。
岡田課長は、このタイミングで、本田係長が自分のところへ来て反省の言葉を伝えて欲しいと思っていた。そのとき、松木が席に来て小さな声で「課長、ごめんなさい」と言ってきた。
岡田課長は「部長の言っていたとおりだよ。松木くん、これからも、素早くするよう頼みますよ」
松木「はーい。お任せください」

謝罪.jpg

岡田課長は、本田係長に声をかけた。「午後の会議のあと、時間を空けてくれ」
岡田課長は、スタッフが処理する仕事に対し、正確ではないことや対応が遅い点に問題を感じていた。そして、改善しなければならないと以前から考えており、その原因は本田係長にあると考えていた。

労働基準法などが厳しくなっているので、手荒な指導ができないことは理解している。しかし、このままでは、仕事の質が下がる一方だ。松木くんや前園くんが、第2、第3の本田係長のようにならないよう、何か対処しなければならない。人は変わることは難しい。本田係長の仕事振りが変わるとは考えにくい。一番、望ましいのは、本田係長が自ら身を引いてくれることなのは明白だった。
辞表.jpg

法を遵守していては、管理職は務まらない。それが、現実だということを官僚や労働組合に訴えたい。

私は、こうした悩みを多くの管理職が感じているだろうと常々思っている。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す