気楽に読んでください、呼吸のおはなし ~その76~

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本日もお読みくださり誠にありがとうございます。
昨日は体に任せることの安全性に付いて書いた積もりです。
俗に言う火事場の馬鹿力などというものは、常識的な思考の範疇では絶対に起こり得ない現象です。
そして少なくとも現代社会では滅多に起きない現象とも言えます。
逆に頭は体の声を覆い隠すように勢力争いを仕掛けて来ているようです。
頭は保守的で、潔い結果が出ることを直視したがらない癖を持ち合わせています。
ここを見誤ると、体の不調に一生振り回され続ける羽目になりかねません。
例えば腰痛に関して、腰椎の大小何らかの損傷に原因があると当たり前のように未だに考えられている場合もありますが、健常者も腰痛持ちも含めて完全無作為に腰椎の検査をしたところ、腰痛を全く訴えたことが無い人にも同じ割合で、腰椎に何らかの異常が認められたという調査結果は割と有名です。
そうです、エックス線写真などだけで判断すると腰痛が起きていてもおかしくないような人でも、必ずしもそうでない、腰が痛いの痒いの言わない人の事例がその辺にゴロゴロあることが分かったということです。
きっと極端な例ではその逆、何にも異常らしき影は写って無いのに腰が痛い人も居るのでしょう。
このような現象が、大嫌いなことを目の前にして起こる分には誰でも納得がいきます。
やりたくないこと、例えば子供の頃に体育の時間で苦手な種目の日にはお腹が痛くなったりとかと同じレベルの話ですから分かり易いですよね。
ところが、自分の夢に向かって寸分のズレも無いように頑張る人、大好きなことを半生掛けてやろうとするアスリートのような人にも、原因不明の痛みやその他不調が影を落とすことがあります。それはそれは本当によくあることです。イップスなどというのはそのような事例の最たるもので、それが原因で引退するスポーツ選手もたくさん居ると聞きます。
突然原因不明の(診断名は心因性ですが)失声症になってしまったテノール歌手に僕はお会いしたこともあります。その方は当時、音楽一筋オペラ一筋の人生だったものが突如変更を余儀無くされて、新聞配達で生計を立てておられました。
これらの不調、事象の、もしも改善に取り組むのだとしたら、頭がそのことで何か得をしている面が無いかを探してみる必要があると僕は感じます。
そう、その痛みがあることによって、そんなもの百害あって一利無しとしか到底考えられない不調、損100%としか思えない厄介者を抱えることによって、実はその裏で何か頭が得を感じていることがある。
体はただ単純に今を表現したいだけ。それが出来たかどうかが結果の全てであるのに対して、頭はきっと、その先の結果、勝ち負けや成功不成功といった評価基準まで見越した結果を体の持つ純粋さに混入させて来ます。
全力を出したのに、本気を出したのに、万全のコンディションで臨めたのに、もしも勝てなかったら、もしも成功しなかったら、そんな勘定(感情)を先回りさせてしまうのも頭です。きっと原始時代から脳の進化という名の下に、その先回りして予測を立てることで生き延びられた経験も多く蓄積されているのでしょうから、これも無理もないことです。
こんな時、腰痛などの不調は災厄であるどころか、その人の大切なプライドを守るお守りとなってしまっているようです。
それをやらなくて済む理由、だれがどう見ても言い訳になど見えないリアルな原因を、頭が作り出しているということです。
大切な大会を前にすると決まったように事故のような怪我をする選手も、このような頭のアイデアによって、並の選手では受け得ないような強大な重圧から心を守り、均衡を保とうとしていのかも知れません。負けたとしても同情してもらえる、更に負けて元々の精神が湧いて来て寧ろ怪我の無い万全な時よりも心にゆとりが生まれる。
本当は、体は、そんな評価や結果以前の、純粋な楽しさ、表現することの意味をちゃんと知っている筈なのに。
こんな込み入った状態にある人に、例えば僕のクライアントさんに向けてであれば、生半可な発声練習、ヴォイストレーニングなどが何の役にも立たないのは何方にもご理解頂けるかと思います。
考えてみれば僕らが受けて来た教育というものは、そんな頭が大活躍する格好の世界観への誘いであったように感じてしまいます。
点数、比較、優劣、勝ち負け、傾向と分類、十把一絡げの仕分け(クラス分け)作業・・・。
この延長上にあるのであれば、避難訓練も空手の型も、本当の意味での命を守る術にはなり得ないことをここ数回で書いて来ました。
表示では賞味期限切れの食品でも実際には何の問題も無く食べられる場合もあれば、逆に買って間もない物でも口に入れた瞬間に異変を感じれば吐き出すのが体です。
話題のお勧めワクチン、頭で受け取る情報の量と影響力は計り知れないものですが、体はどう感じてますか?
今、深い呼吸と即興の力、体の声を聞く能力が試される時なのかも知れません。

つづく
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