第39回:理論株価計算 ~ DCF法、前提条件の整合性チェック

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第39回:理論株価計算 ~ DCF法、前提条件の整合性チェック

この度はお読み頂きまして誠に有難うございます。Taskaruです。本ブログではコーポレート・ファイナンスに関わる話題を幅広く取り上げていきたいと考えています。

理論株価を計算する方法としてDCF法が活用されることが多いですが、DCF法においては前提条件が重要になり、また、ターミナルバリュー(Terminal Value、以下「TV」)はDCFの結果に大きな影響を及ぼすものであることから、TVの計算に使用されるパラメーターが適切であるか、ということを検証することは重要になります。

今回は少し深掘りをして、こうした前提条件の整合性の検証を行う方法について、紹介したいと思います。

【過去記事紹介】
DCF法の概要や計算テンプレートの紹介

TVが理論株価評価に及ぼす影響に関する紹介

さて、まずは復習となりますが、TVの計算方法においては、①永続成長率法②Exit Multiple法、という2つがあります(※尚、Taskaruが出品しているテンプレートは基本的には①のアプローチのみを採用しています)

各々の計算式は次の通りとなります:

①永続成長率法では、

【計算式①】
TV.png

②Exit Multiple法(EV/EBITDA倍率ベース)では、

【計算式②】
Terminal Value = Terminal Year の EBITDA x EV/EBITDA倍率

検算のポイントとしては、

(A)永続成長率法から計算されるTVを用いて、Exit Multiple(※②の計算で使用されるEV/EBITDA倍率)を逆算する、
とともに、
(B)Exit Multiple法から計算されるTVを用いて、永続成長率(※①の計算で使用される成長率g)を逆算する

というクロスチェックを行うことが有効になります。

具体的な計算方法を見ていきます。

まず(A)から。ここの計算式はシンプルです。
例えば以下に示したケースにおいて、永続成長率を3%と仮定したうえで、永続成長率法からTVは 6,683.2と計算されます。この数字を、Terminal Year EBITDA 929.2で割ることによって、Implied Exit Multiple (EV/EBITDA) = 7.2xと計算されます。

つまり、計算式②において、永続成長率法によって計算されるTVを左辺に代入し、EV/EBITDA倍率を逆算するという流れになります。
PGR_TV_ImpliedMultiple.png

次に(B)について。同じように、Terminal Year EBITDA 929.2に対して、EV/EBITDA倍率7倍を仮定して、TVを計算した場合、TVは6,504.4になります。

今度は、計算式①において、このTVを左辺に代入し、計算式①を永続成長率(g)について解きます。
Implied_G.png
上記の計算式に基づいて、Implied 永続成長率(g)が計算され、今回の場合は、2.8%となり、永続成長率法でTVを求める際の前提条件/パラメーター設定と整合的であることが確認できます。

EMM_TV_ImpliedG.png

以上の結果の解釈の方法ですが、ポイントとしては、「永続成長率とExit Multipleのバランスが取れているので、前提条件の設定は悪くなさそう」ということが言えることになります。

つまり、DCF分析をゼロから作成する際においては、永続成長率とExit Multipleを少し別々に考えがちになるところもありますが、「この永続成長率の設定に対して、果たしてExit Multipleが適切かどうか(並びにその逆も)」という点を検証しながら進めることが肝要になります。
⇒ 上記の方法を用いて、「永続成長率」と「Exit Multiple」が整合的であることを確認することによって、DCF分析の前提設定は”大きく外してはいなさそう”ということが言えることになるかと考えています。

本日は以上となります。お読み頂きまして有難うございます。どうぞ引き続き宜しくお願い致します。

【ディスクレーマー】
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