はじめに
いつだったか、ふと思い立って古い外付けハードディスクを繋いでみたところ、バンド時代の音源ファイルが丸ごと残っているのを見つけました。あの頃はスタジオにこもり、何時間も、いえ何日もかけて一つのデモ音源を仕上げるのが当たり前でした。
しかし、時代は移り変わりました。今や音楽を聴くといえば、CDでもMP3でもなく、いつの間にかSpotifyで探して流すのが習慣になっていたのです。そうして気がつくと、自分がかつて作った曲だけが、その流れから取り残されていたのでした。
もちろん、iTunesにMP3ファイルを追加すれば、自分のプレイリストに組み込むことはできます。でも、それはどこか「内輪の思い出アルバム」のようなもので、広がりが感じられません。せっかくなら、誰かの耳に届く可能性のある「販売」という形で残しておきたい——そんな気持ちが芽生えたのです。
最近ではAIを使って音楽を生成することもできます。テンポやコード進行、曲の雰囲気を指示するだけで、ほんの数分で1曲が完成します。バンド時代には何時間もかかっていた作業が、たった5分足らずで仕上がるのです。そして、その完成度も驚くほど高い。これを使わない手はないと感じました。
そこで私は、「かつて音楽を作ったことのある人」や「これから挑戦してみたい人」のために、AIを活用して作った楽曲をSpotifyで販売するまでの手順をまとめておこうと思いました。難しい専門知識は必要ありません。求められるのは、ほんの少しの興味と、もう少しの勇気だけです。
第一章:アイデアが形になる瞬間
「こんな感じの曲を作りたい」から始まる魔法
音楽を始めた頃のあの感覚を、あなたは覚えているでしょうか。ギターを構えたり、キーボードの前に座ったりして、ふと湧いてきたメロディーを頼りにコードを探る。具体的な形がないまま、「こんな感じの曲を作りたい」という曖昧な欲求が、じわじわと音になっていく。そんな時間が、かつての創作には確かに存在していました。
ところが今、そのプロセスは驚くほど変化しています。AI楽曲生成アプリを使えば、僅かな言葉の指示だけで音楽が生まれます。ジャンル、テンポ、雰囲気――それだけで、数十秒後には試聴可能な音源が手元に届くのです。徹夜していた初期デモの作成が、今ではコーヒーを淹れる間に完了する。時間も手間も、まるで魔法のように短縮されているのです。
この創作はもはや、一人の孤独な作業ではありません。「対話」に近いのです。AIとやり取りしながら、浮かんだ音の断片が次第に形を取る。記憶の中の旋律が再構成され、「これだ」と思える瞬間に出会える。それは、人間の創造とAIの演算が交差する、新しい創作の現場です。
「でも、そんなアプリは高価なのでは?」とよく尋ねられます。実のところ、無料または低価格で試せるツールが増えているのです。例えば「Boomy」「Soundraw」「Amper Music」といったサービスは、登録するだけで即座に作曲を始められます。無料プランでも基本機能は充実しており、最初の1曲を作るには十分な性能です。
特に「Boomy」は初心者向けに設計されており、ジャンルや雰囲気を選ぶだけで作曲が始まります。操作も直感的で、音楽理論が分からなくても「曲」として成り立つ点が魅力です。
一方、「Soundraw」は動画制作用の音楽に特化しており、ビートや構成の細かい調整が可能です。用途に応じて、自作の雰囲気に合わせた曲作りがしやすく、後述するマスタリングや配信にも適しています。
これらのツールを触っていると、自分のスタイルが自然と浮かび上がってきます。まるで音のスケッチブックに描き込むように、自由に音を試せる。それがAI作曲の醍醐味です。
最初から「完成品」を作ろうとする必要はありません。思いついた方向に気軽に舵を切れるのです。例えば最初は「ローファイなヒップホップ」を作るつもりだったのに、聴いているうちに「シネマティックなアンビエント」へと気持ちが傾く。そんなときでも、即座に別のパターンを生成し直せる柔軟さがある。
試作を重ねるうちに、「これは自分らしい」と思える音が必ず見えてきます。誰かに届ける前に、自分自身が納得できる。その実感こそが、次のステップ――つまり販売へと進むエネルギーになります。
Boomy:数クリックで世界に通じる1曲を
最初にご紹介したいのは、「Boomy」です。実際に使ってみてまず驚かされるのは、その手軽さでした。ジャンルを選び、ムードを設定し、「曲を作る」ボタンを押すだけで、ほんの数十秒後にはBGMとして成立する音源が出来上がります。しかも、そのままSpotifyで配信する機能まで備わっているのですから、驚きは倍増です。
Boomyの最大の魅力は、操作に説明がほとんど不要な点にあります。楽器の知識も音楽理論も不要で、まるでインスタグラムでフィルターを選ぶような感覚で、誰でも楽曲を生み出せます。ボーカルの追加や構成の再生成も数クリックで完了。初心者が最初に選ぶ一歩として、これ以上敷居の低いツールは他に見当たりません。
次にご紹介するのは、「Soundraw」です。「構成を自分でコントロールしたい」と感じている方には、こちらの方が適しています。メロディーや展開、楽曲の長さなどを細かく調整できるのが特長で、BGMやサウンドトラック制作を目的とした動画制作者に人気があります。
楽曲全体を再生成する必要はなく、「サビだけを変更したい」「Bメロを短くしたい」といった細かい編集が可能で、動画編集との相性も抜群。実際、多くのYouTuberやVloggerたちにも愛用されています。ジャンルの幅も広く、EDMやローファイから壮大なオーケストラ風の楽曲まで網羅しており、「自分らしい構成を持った曲を手に入れたい」と考える方には、信頼できるパートナーとなるでしょう。
さらに、ジャンルに特化したAIツールも選択肢として見逃せません。「Amper Music」は映画やゲームのサウンドトラック制作に特化しており、緊張感やドラマ性のある構成を得意としています。一方、「Ecrett Music」はYouTube向けの著作権フリー音源を大量に生成できる機能が魅力で、著作権を気にせずに使用できる点が大きな利点です。
用途ごとにAIの個性は異なります。だからこそ、幾つかのアプリを実際に試してみて、自分にとって「しっくりくる」ツールを見つけることが大切です。これは、数ある中から最良のギターを選ぶような感覚に近いかもしれません。初めて音を鳴らした瞬間に「これだ」と感じる、その出会いが、創作の未来を大きく切り開いていくのです。
構想を言葉にする:プロンプトの準備
まず、頭の中にある「こんな感じの曲」というイメージを、出来るだけ具体的な言葉にしてみることから始めましょう。「夜の都会をドライブしているような」「切なさと疾走感が交差するロック」「ラジオで流れそうなチル系ジャズ」など、映像や気分を思い浮かべて表現してみて下さい。
プロンプトを作成する際に有効なのは、「ジャンル」「テンポ」「雰囲気」「使いたい楽器」の4つの要素です。無理に専門用語を使う必要はありません。日常の言葉で「こういう気分の曲」と表現するだけで、AIは想像以上に的確な音を返してくれます。ここで大切なのは、完璧を目指し過ぎないことです。まずは「方向性を定めるためのラフスケッチ」だと考えて、気楽に言葉を選んでみましょう。
そして、プロンプトをどう書けばいいか分からない場合は、単に自分の中のイメージをChatGPTに打ち込んでみましょう。「夜に聴きたい、しっとりしたピアノ」「ギターが切ない青春のような曲」など、自分の頭の中の感覚をそのまま打ち込むとChatGPTが形にしてくれます。プロンプトはイメージをAIに伝えて設計してもらうための、最初の一歩なのです。
また同様に「歌詞も合わせて書いて下さい」と打ち込むと、Aメロ、Bメロ、サビとセクションごとに歌詞を書いてくれます。その歌詞とプロンプトを音楽生成AIのプロンプト欄にコピペすれば完成です。
プロンプトを入力すると、数十秒から数分でAIが候補となる楽曲を提示してくれます。そのまま再生して聴いてみましょう。すると、思い描いていた雰囲気とのズレや、新たな発見があるかもしれません。もし違和感があれば、プロンプトの一部を変更して再生成してみて下さい。ジャンルを変えてみたり、テンポを遅くしてみたり、「雨音っぽく」といった抽象的なニュアンスを加えてみたり——そのたびに、音は違う表情を見せてくれます。
この「作っては聴く」「変えてはまた作る」という反復には、創作の醍醐味があります。自分の手応えと結果が即座に返ってくる感覚は、昔カセットMTRで一晩中録音と上書きを繰り返していたあの夜にも似ているかもしれません。
何度か生成と修正を繰り返していくうちに、「これだ」と思える瞬間が訪れるでしょう。頭の中の映像と音がぴたりと重なったような、奇跡的な一致。それが、あなたにとっての「完成形」です。
ただし、AIはどれだけでも生成できるからこそ、迷い過ぎないことも重要です。ある程度納得できたら、「完成」と決める勇気を持ちましょう。完成した音源は、アプリからそのまま書き出すことができます。多くのアプリではMP3またはWAV形式での出力が可能です。マスタリングや配信の予定がある場合は、可能であればWAV形式を選んでおくと安心です。
第二章:言葉が音に変わる
イメージは「言葉」で渡す
AIに曲を作らせようとすると、最初に直面するのが「どのように指示を出すか」という問題です。頭の中には確かなイメージがあるにもかかわらず、それを言葉にする方法がわからない——このような戸惑いは、創作の第一歩で誰もが一度は経験するものです。
しかし、逆に言えば、「言葉にすることができれば、それは既に音楽になる」ということでもあります。AIに伝える言葉は、抽象的でかまいません。「静かな夜の街」「懐かしさのあるポップス」「緊張感のあるシンセ音」——こうした表現でも、AIはきちんと音に変換してくれます。
音楽は目に見えないため、言語化が難しいと思われがちですが、実際には誰もが日常的に「音のある情景」を感じ取っています。映画のワンシーン、雨の日の車内、深夜ラジオのBGM——これらをそのまま言葉にすれば、それは十分に有効なプロンプトになります。
より具体的な楽曲を目指す場合は、次の4つの要素を含めると良いでしょう。
ジャンル(例:ジャズ、ローファイ、EDM)
雰囲気や感情(例:切ない、高揚感のある、眠気を誘う)
テンポ感(例:ミディアムテンポ、BPM90〜100)
使用したい楽器(例:ピアノ主体、シンセ多め、ドラムなし)
これら4つの要素が揃うことで、AIが生成する音楽は自分のイメージにぐっと近づきます。言い換えれば、「自分の聴きたい音を自分自身で定義する」という作業なのです。つまり、AIに任せているようでいて、実は自分自身が曲の設計者であると言えます。
良いプロンプトとは、詩や絵画に似ています。そこに唯一の正解はなく、寧ろ曖昧さの中にこそ創造の可能性が広がっています。そのため、「雨上がりの午後のような」「ラジオから流れる昭和歌謡のような」といった抽象的で情緒的な表現こそが、AIの反応を豊かにしてくれるのです。
AIは単語だけでなく、文脈全体から意図を汲み取ろうとします。ですから、多少まわりくどくても構いません。寧ろ、言葉に温度や香りが込められている程、生成される音楽には「味わい」が出やすくなります。
思い出を語るように、あるいは風景を描くように——AIへのプロンプトとは、誰かに「どんな曲を聴きたいの?」と尋ねられたときの、あなた自身の答えそのものなのです。
ジャンルで方向性を決める:最初の「土台」を選ぶ
はじめに
いつだったか、ふと思い立って古い外付けハードディスクを繋いでみたところ、バンド時代の音源ファイルが丸ごと残っているのを見つけました。あの頃はスタジオにこもり、何時間も、いえ何日もかけて一つのデモ音源を仕上げるのが当たり前でした。
しかし、時代は移り変わりました。今や音楽を聴くといえば、CDでもMP3でもなく、いつの間にかSpotifyで探して流すのが習慣になっていたのです。そうして気がつくと、自分がかつて作った曲だけが、その流れから取り残されていたのでした。
もちろん、iTunesにMP3ファイルを追加すれば、自分のプレイリストに組み込むことはできます。でも、それはどこか「内輪の思い出アルバム」のようなもので、広がりが感じられません。せっかくなら、誰かの耳に届く可能性のある「販売」という形で残しておきたい——そんな気持ちが芽生えたのです。
最近ではAIを使って音楽を生成することもできます。テンポやコード進行、曲の雰囲気を指示するだけで、ほんの数分で1曲が完成します。バンド時代には何時間もかかっていた作業が、たった5分足らずで仕上がるのです。そして、その完成度も驚くほど高い。これを使わない手はないと感じました。
そこで私は、「かつて音楽を作ったことのある人」や「これから挑戦してみたい人」のために、AIを活用して作った楽曲をSpotifyで販売するまでの手順をまとめておこうと思いました。難しい専門知識は必要ありません。求められるのは、ほんの少しの興味と、もう少しの勇気だけです。
第一章:アイデアが形になる瞬間
「こんな感じの曲を作りたい」から始まる魔法
音楽を始めた頃のあの感覚を、あなたは覚えているでしょうか。ギターを構えたり、キーボードの前に座ったりして、ふと湧いてきたメロディーを頼りにコードを探る。具体的な形がないまま、「こんな感じの曲を作りたい」という曖昧な欲求が、じわじわと音になっていく。そんな時間が、かつての創作には確かに存在していました。
ところが今、そのプロセスは驚くほど変化しています。AI楽曲生成アプリを使えば、僅かな言葉の指示だけで音楽が生まれます。ジャンル、テンポ、雰囲気――それだけで、数十秒後には試聴可能な音源が手元に届くのです。徹夜していた初期デモの作成が、今ではコーヒーを淹れる間に完了する。時間も手間も、まるで魔法のように短縮されているのです。
この創作はもはや、一人の孤独な作業ではありません。「対話」に近いのです。AIとやり取りしながら、浮かんだ音の断片が次第に形を取る。記憶の中の旋律が再構成され、「これだ」と思える瞬間に出会える。それは、人間の創造とAIの演算が交差する、新しい創作の現場です。
「でも、そんなアプリは高価なのでは?」とよく尋ねられます。実のところ、無料または低価格で試せるツールが増えているのです。例えば「Boomy」「Soundraw」「Amper Music」といったサービスは、登録するだけで即座に作曲を始められます。無料プランでも基本機能は充実しており、最初の1曲を作るには十分な性能です。
特に「Boomy」は初心者向けに設計されており、ジャンルや雰囲気を選ぶだけで作曲が始まります。操作も直感的で、音楽理論が分からなくても「曲」として成り立つ点が魅力です。
一方、「Soundraw」は動画制作用の音楽に特化しており、ビートや構成の細かい調整が可能です。用途に応じて、自作の雰囲気に合わせた曲作りがしやすく、後述するマスタリングや配信にも適しています。
これらのツールを触っていると、自分のスタイルが自然と浮かび上がってきます。まるで音のスケッチブックに描き込むように、自由に音を試せる。それがAI作曲の醍醐味です。
最初から「完成品」を作ろうとする必要はありません。思いついた方向に気軽に舵を切れるのです。例えば最初は「ローファイなヒップホップ」を作るつもりだったのに、聴いているうちに「シネマティックなアンビエント」へと気持ちが傾く。そんなときでも、即座に別のパターンを生成し直せる柔軟さがある。
試作を重ねるうちに、「これは自分らしい」と思える音が必ず見えてきます。誰かに届ける前に、自分自身が納得できる。その実感こそが、次のステップ――つまり販売へと進むエネルギーになります。
Boomy:数クリックで世界に通じる1曲を
最初にご紹介したいのは、「Boomy」です。実際に使ってみてまず驚かされるのは、その手軽さでした。ジャンルを選び、ムードを設定し、「曲を作る」ボタンを押すだけで、ほんの数十秒後にはBGMとして成立する音源が出来上がります。しかも、そのままSpotifyで配信する機能まで備わっているのですから、驚きは倍増です。
Boomyの最大の魅力は、操作に説明がほとんど不要な点にあります。楽器の知識も音楽理論も不要で、まるでインスタグラムでフィルターを選ぶような感覚で、誰でも楽曲を生み出せます。ボーカルの追加や構成の再生成も数クリックで完了。初心者が最初に選ぶ一歩として、これ以上敷居の低いツールは他に見当たりません。
次にご紹介するのは、「Soundraw」です。「構成を自分でコントロールしたい」と感じている方には、こちらの方が適しています。メロディーや展開、楽曲の長さなどを細かく調整できるのが特長で、BGMやサウンドトラック制作を目的とした動画制作者に人気があります。
楽曲全体を再生成する必要はなく、「サビだけを変更したい」「Bメロを短くしたい」といった細かい編集が可能で、動画編集との相性も抜群。実際、多くのYouTuberやVloggerたちにも愛用されています。ジャンルの幅も広く、EDMやローファイから壮大なオーケストラ風の楽曲まで網羅しており、「自分らしい構成を持った曲を手に入れたい」と考える方には、信頼できるパートナーとなるでしょう。
さらに、ジャンルに特化したAIツールも選択肢として見逃せません。「Amper Music」は映画やゲームのサウンドトラック制作に特化しており、緊張感やドラマ性のある構成を得意としています。一方、「Ecrett Music」はYouTube向けの著作権フリー音源を大量に生成できる機能が魅力で、著作権を気にせずに使用できる点が大きな利点です。
用途ごとにAIの個性は異なります。だからこそ、幾つかのアプリを実際に試してみて、自分にとって「しっくりくる」ツールを見つけることが大切です。これは、数ある中から最良のギターを選ぶような感覚に近いかもしれません。初めて音を鳴らした瞬間に「これだ」と感じる、その出会いが、創作の未来を大きく切り開いていくのです。
構想を言葉にする:プロンプトの準備
まず、頭の中にある「こんな感じの曲」というイメージを、出来るだけ具体的な言葉にしてみることから始めましょう。「夜の都会をドライブしているような」「切なさと疾走感が交差するロック」「ラジオで流れそうなチル系ジャズ」など、映像や気分を思い浮かべて表現してみて下さい。
プロンプトを作成する際に有効なのは、「ジャンル」「テンポ」「雰囲気」「使いたい楽器」の4つの要素です。無理に専門用語を使う必要はありません。日常の言葉で「こういう気分の曲」と表現するだけで、AIは想像以上に的確な音を返してくれます。ここで大切なのは、完璧を目指し過ぎないことです。まずは「方向性を定めるためのラフスケッチ」だと考えて、気楽に言葉を選んでみましょう。
そして、プロンプトをどう書けばいいか分からない場合は、単に自分の中のイメージをChatGPTに打ち込んでみましょう。「夜に聴きたい、しっとりしたピアノ」「ギターが切ない青春のような曲」など、自分の頭の中の感覚をそのまま打ち込むとChatGPTが形にしてくれます。プロンプトはイメージをAIに伝えて設計してもらうための、最初の一歩なのです。
また同様に「歌詞も合わせて書いて下さい」と打ち込むと、Aメロ、Bメロ、サビとセクションごとに歌詞を書いてくれます。その歌詞とプロンプトを音楽生成AIのプロンプト欄にコピペすれば完成です。
プロンプトを入力すると、数十秒から数分でAIが候補となる楽曲を提示してくれます。そのまま再生して聴いてみましょう。すると、思い描いていた雰囲気とのズレや、新たな発見があるかもしれません。もし違和感があれば、プロンプトの一部を変更して再生成してみて下さい。ジャンルを変えてみたり、テンポを遅くしてみたり、「雨音っぽく」といった抽象的なニュアンスを加えてみたり——そのたびに、音は違う表情を見せてくれます。
この「作っては聴く」「変えてはまた作る」という反復には、創作の醍醐味があります。自分の手応えと結果が即座に返ってくる感覚は、昔カセットMTRで一晩中録音と上書きを繰り返していたあの夜にも似ているかもしれません。
何度か生成と修正を繰り返していくうちに、「これだ」と思える瞬間が訪れるでしょう。頭の中の映像と音がぴたりと重なったような、奇跡的な一致。それが、あなたにとっての「完成形」です。
ただし、AIはどれだけでも生成できるからこそ、迷い過ぎないことも重要です。ある程度納得できたら、「完成」と決める勇気を持ちましょう。完成した音源は、アプリからそのまま書き出すことができます。多くのアプリではMP3またはWAV形式での出力が可能です。マスタリングや配信の予定がある場合は、可能であればWAV形式を選んでおくと安心です。
第二章:言葉が音に変わる
イメージは「言葉」で渡す
AIに曲を作らせようとすると、最初に直面するのが「どのように指示を出すか」という問題です。頭の中には確かなイメージがあるにもかかわらず、それを言葉にする方法がわからない——このような戸惑いは、創作の第一歩で誰もが一度は経験するものです。
しかし、逆に言えば、「言葉にすることができれば、それは既に音楽になる」ということでもあります。AIに伝える言葉は、抽象的でかまいません。「静かな夜の街」「懐かしさのあるポップス」「緊張感のあるシンセ音」——こうした表現でも、AIはきちんと音に変換してくれます。
音楽は目に見えないため、言語化が難しいと思われがちですが、実際には誰もが日常的に「音のある情景」を感じ取っています。映画のワンシーン、雨の日の車内、深夜ラジオのBGM——これらをそのまま言葉にすれば、それは十分に有効なプロンプトになります。
より具体的な楽曲を目指す場合は、次の4つの要素を含めると良いでしょう。
ジャンル(例:ジャズ、ローファイ、EDM)
雰囲気や感情(例:切ない、高揚感のある、眠気を誘う)
テンポ感(例:ミディアムテンポ、BPM90〜100)
使用したい楽器(例:ピアノ主体、シンセ多め、ドラムなし)
これら4つの要素が揃うことで、AIが生成する音楽は自分のイメージにぐっと近づきます。言い換えれば、「自分の聴きたい音を自分自身で定義する」という作業なのです。つまり、AIに任せているようでいて、実は自分自身が曲の設計者であると言えます。
良いプロンプトとは、詩や絵画に似ています。そこに唯一の正解はなく、寧ろ曖昧さの中にこそ創造の可能性が広がっています。そのため、「雨上がりの午後のような」「ラジオから流れる昭和歌謡のような」といった抽象的で情緒的な表現こそが、AIの反応を豊かにしてくれるのです。
AIは単語だけでなく、文脈全体から意図を汲み取ろうとします。ですから、多少まわりくどくても構いません。寧ろ、言葉に温度や香りが込められている程、生成される音楽には「味わい」が出やすくなります。
思い出を語るように、あるいは風景を描くように——AIへのプロンプトとは、誰かに「どんな曲を聴きたいの?」と尋ねられたときの、あなた自身の答えそのものなのです。
ジャンルで方向性を決める:最初の「土台」を選ぶ