エッセイ1 「係り受け」はここまで簡単になる! 僕が使っている推敲技術
エッセイ2 読み手を引き込む文章を書く、たった一つの方法
エッセイ3 推敲するときの具体的なチェックポイント
エッセイ4(特典) 問題が起きるたびに強くなれる、ささやかだけれど強力な「つぶやき」
エッセイ1
「係り受け」はここまで簡単になる! 僕が使っている推敲技術
僕は文章を書くのが好きです。それを知っている友人がね、書きかけの書類を持って家に来ることがあるんです。
「文章を書く必要があっていま推敲してるんだけど、ちょっとまだ分かりづらいんだよな」とか言って。「どこがどう分かりづらいのかは分からないんだけどまだ分かりづらいということだけは分かる」と、非常に分かりづらいことを口にしながら家のなかへ上がってくるわけです。
僕は文章を推敲するのだけが趣味という変質者みたいな男なんです。態度では「めんどくせえなぁ」みたいなポーズを装うんですけど、差し出された書面を手にしてどこか舌舐めずりしている自分がいるわけです。どないやねん、と自分でも思うんですけど。まぁ── ヘンタイとはそういうもんなんでしょうね。どないもこないもならんという。
ちなみに、「ちょっと見てくんない?」とか言いながら上がり込んでくるヤカラに限って手土産ひとつ持ってこないんですよね。なんなんでしょうね、あれって。
まぁ、そういうわけで、その「分かりづらい」文章を読ませてもらうとね、なにが分かりづらいって、やっぱり〈係り受け〉なんですよ。係り受けの語順が分かりにくくしているんです。
「あぁ、これは〈係り受け〉が原因だなぁ」
「出た! 係り受け!」と友人はなぜだか両腕を広げます。おまえは舞台役者かと思いましたよ。会社員なんですけど。
「係り受け、ってアレだろ?」、顔を近づけてきて指を1本立てます。「この修飾語がこの被修飾語にかかって、この修飾語がまたまたこの被修飾語にかかり── って矢印に次ぐ矢印が例文の横に引きまくってあるアレだろ?」
ソレだよ。
「アレ見るとさぁ『ヤダヤダ 教科書みたーい!』って俺、叫んじゃうんだよ。思い出しただけでヤダわぁ」
気持ちは分かる。
そういう人、たしかに多いと思いますよ。
友人はつづけます。 「でも理解はしてるんだぜ。ええっとなんだっけな、〈入れ子構造〉をなくすんだよな。〈入れ子〉ってなんだっけ? あと長いものを遠くに置くんだろ? なにから遠くに置くんだ? そもそも長い、ってなにが長いんだっけ? 理解はしてるんだぜ」
なにひとつ理解してへんやんけと思いましたよ。
でもこういう人、多いと思います。なんとなく本で読んだ記憶はあるんだけど、推敲時には使えていない、というね。
なので〈エッセイ1〉では、僕が推敲のときに使っている超簡単な 係り受けの技術 を紹介します。
「すでに知ってるし、やってるよ」と言われる方も多いでしょうが、「初めて知った!」という方は目からウロコ だと思いますよ。推敲時の作業もシンプルになるはずです。一生使える便利な技術 ですので、最後までお付き合いいただけると嬉しいですね。
あなたが何かを書かれました。
初稿の段階では、いらない言葉がまだたくさんあると思います。それが普通です。一気呵成に書くべきです。初稿の段階から整った文章にしようとすると勢いが削がれてしまいます。
初稿は混乱していてもいいんですよ。まずは書いてしまいましょう。
初稿ができたら、
「あってもなくてもいいものは ないほうがいい」
と一言、つぶやいてください。
そして、いらないなぁと直感が告げる言葉・文章をどんどん削っていきます。「あってもなくてもどっちでもいいよなぁ」と思うと残しちゃう人、多いです。削除するのが忍びないんでしょうね。気持ちはよく分かりますが、バッサリ削ってください。不必要な言葉はノイズとなり、読者の集中力を奪ってしまいます。読み進む気をなくさせてしまいます。基本的に推敲とは〝削る作業〟です。 グッと締まるはずです。(一見 削れそうでも、リズムの関係で残さなければならない言葉というのもあります)
この作業を終えたら、いよいよ文章の〈係り受け〉を見ていきます。
日本語は基本的に語順が自由です。英語などとは全く違います。日本語のユニークな点であると同時に、意味をつかみにくい文章になりやすいのも このあたりに理由があるようにも思えます。
例で見ていきましょう。
日本近代文学のコレクションは僕にとって大切なものです。
という文章があったとします。この場合、「大切なものです」という受ける語句に「日本近代文学のコレクションは」と「僕にとって」という二つの語句が係っています。これが〈係り受け〉です。
係る語句が複数ある場合── 三つあることも珍しくありません── 長い順から並べると分かりやすくなると言われています。大抵どの本でもこの「長い順」という言い方がされているのですが、「なにがどう長いんだっけ?」と人が言うのを僕は何度か聞いたことがあります。学んだ記憶はあるのだけれど、うろ覚えになっているんでしょうね。
こう覚えてください。
字数の多い係る語句を、受ける語句の遠くに置く。そのあと順に字数の少ない語句を置いていく。
「字数の多い」という表現が使われている文章の書きかた本は、僕の知る限りありません。どういう意味だっけ? となりづらいので良いと思うのですが、どうでしょう。
日本近代文学のコレクションは僕にとって大切なものです。
原則通り、長い(字数の多い)順に、係る語句が並んでいます。
「日本近代文学のコレクションは」(14文字)、「僕にとって」(5文字)。
いちど逆にしてみましょう。
僕にとって日本近代文学のコレクションは大切なものです。
係る語句が二つだけなので分かりづらいかもしれませんが、微妙に意味を取りにくくなったと思いませんか? 日本語は語順が自由ですから、字数が多い順という原則を破ってもいいのです。「僕にとって」を前に持ってきて強調したいんだ、という場合もあるでしょう。そういうときはどうするか。
原則を破って逆の並びにする場合、頭に持ってきた字数の少ない語句のあとに、読点「、」を打ってください。
僕にとって、日本近代文学のコレクションは大切なものです。
これがいちばん分かりやすいじゃないか! と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。逆順にした場合、文頭一語目に読点「、」を打つと分かりやすくなります。
日本近代文学のコレクションは僕にとって大切なものです。
という第一の原則通り字数の多い順に並べると、「僕にとって、」と強調されすぎるのを避けられ、さりげない読み味となります。
逆順にするときは、最初の語句のあとに読点「、」を打つと分かりやすくなるというのが第二の原則です。
ただ 一語目のすぐあとに読点「、」を打つと、妙に野暮ったくなることがあります。「また、」「しかし、」「さらに、」などの接続詞、「僕は、」「彼は、」など主語を形成するもののあとに打つときは慎重になるべきでしょう。
このあたりから書き手の文章センス、文体の領域に入ってきますので、各自の好みも大きいかもしれませんが。
覚えておいていただきたいのは、
受ける語句の前に置く係る語句は字数の多い順に並べる。
(さりげない自然な読み味となる。強調したい要素がとくにない場合に有効)
と、
意図があってこの原則を破るときは、最初の語句のあとに読点「、」を打つと分かりやすくなる。
(強調されたニュアンスが出、個人的な思い入れを伝えたいときなどに有効)
この二点です。推敲時、係り受けを見直すときはまずこれを意識してみてください。ほとんどの場合、この二つだけでも分かりやすくなります。
同時に、読点の使い方によって文章の印象が変わることにも敏感になりましょう。
もう一つ、補足させてください。
係る語句が「を」で終わっている場合、たとえ字数が多くても受ける語句に近づけたほうが分かりやすくなるようです。例をあげましょう。
エッセイ1 「係り受け」はここまで簡単になる! 僕が使っている推敲技術
エッセイ2 読み手を引き込む文章を書く、たった一つの方法
エッセイ3 推敲するときの具体的なチェックポイント
エッセイ4(特典) 問題が起きるたびに強くなれる、ささやかだけれど強力な「つぶやき」
本コンテンツを手に入れて文章力を磨きませんか。楽しく読み進むうちに、あなたの文章は驚くほど変わります。一生ものの文章技術をどうぞ!
智(とも)
ライター
JADP認定 メンタル心理カウンセラー
JADP認定 上級心理カウンセラー
文学賞、小説コンテスト、受賞多数
ブログ運営10年
エッセイ1
「係り受け」はここまで簡単になる! 僕が使っている推敲技術
僕は文章を書くのが好きです。それを知っている友人がね、書きかけの書類を持って家に来ることがあるんです。
「文章を書く必要があっていま推敲してるんだけど、ちょっとまだ分かりづらいんだよな」とか言って。「どこがどう分かりづらいのかは分からないんだけどまだ分かりづらいということだけは分かる」と、非常に分かりづらいことを口にしながら家のなかへ上がってくるわけです。
僕は文章を推敲するのだけが趣味という変質者みたいな男なんです。態度では「めんどくせえなぁ」みたいなポーズを装うんですけど、差し出された書面を手にしてどこか舌舐めずりしている自分がいるわけです。どないやねん、と自分でも思うんですけど。まぁ── ヘンタイとはそういうもんなんでしょうね。どないもこないもならんという。
ちなみに、「ちょっと見てくんない?」とか言いながら上がり込んでくるヤカラに限って手土産ひとつ持ってこないんですよね。なんなんでしょうね、あれって。
まぁ、そういうわけで、その「分かりづらい」文章を読ませてもらうとね、なにが分かりづらいって、やっぱり〈係り受け〉なんですよ。係り受けの語順が分かりにくくしているんです。
「あぁ、これは〈係り受け〉が原因だなぁ」
「出た! 係り受け!」と友人はなぜだか両腕を広げます。おまえは舞台役者かと思いましたよ。会社員なんですけど。
「係り受け、ってアレだろ?」、顔を近づけてきて指を1本立てます。「この修飾語がこの被修飾語にかかって、この修飾語がまたまたこの被修飾語にかかり── って矢印に次ぐ矢印が例文の横に引きまくってあるアレだろ?」
ソレだよ。
「アレ見るとさぁ『ヤダヤダ 教科書みたーい!』って俺、叫んじゃうんだよ。思い出しただけでヤダわぁ」
気持ちは分かる。
そういう人、たしかに多いと思いますよ。
友人はつづけます。 「でも理解はしてるんだぜ。ええっとなんだっけな、〈入れ子構造〉をなくすんだよな。〈入れ子〉ってなんだっけ? あと長いものを遠くに置くんだろ? なにから遠くに置くんだ? そもそも長い、ってなにが長いんだっけ? 理解はしてるんだぜ」
なにひとつ理解してへんやんけと思いましたよ。
でもこういう人、多いと思います。なんとなく本で読んだ記憶はあるんだけど、推敲時には使えていない、というね。
なので〈エッセイ1〉では、僕が推敲のときに使っている超簡単な 係り受けの技術 を紹介します。
「すでに知ってるし、やってるよ」と言われる方も多いでしょうが、「初めて知った!」という方は目からウロコ だと思いますよ。推敲時の作業もシンプルになるはずです。一生使える便利な技術 ですので、最後までお付き合いいただけると嬉しいですね。
あなたが何かを書かれました。
初稿の段階では、いらない言葉がまだたくさんあると思います。それが普通です。一気呵成に書くべきです。初稿の段階から整った文章にしようとすると勢いが削がれてしまいます。
初稿は混乱していてもいいんですよ。まずは書いてしまいましょう。
初稿ができたら、
「あってもなくてもいいものは ないほうがいい」
と一言、つぶやいてください。
そして、いらないなぁと直感が告げる言葉・文章をどんどん削っていきます。「あってもなくてもどっちでもいいよなぁ」と思うと残しちゃう人、多いです。削除するのが忍びないんでしょうね。気持ちはよく分かりますが、バッサリ削ってください。不必要な言葉はノイズとなり、読者の集中力を奪ってしまいます。読み進む気をなくさせてしまいます。基本的に推敲とは〝削る作業〟です。 グッと締まるはずです。(一見 削れそうでも、リズムの関係で残さなければならない言葉というのもあります)
この作業を終えたら、いよいよ文章の〈係り受け〉を見ていきます。
日本語は基本的に語順が自由です。英語などとは全く違います。日本語のユニークな点であると同時に、意味をつかみにくい文章になりやすいのも このあたりに理由があるようにも思えます。
例で見ていきましょう。
日本近代文学のコレクションは僕にとって大切なものです。
という文章があったとします。この場合、「大切なものです」という受ける語句に「日本近代文学のコレクションは」と「僕にとって」という二つの語句が係っています。これが〈係り受け〉です。
係る語句が複数ある場合── 三つあることも珍しくありません── 長い順から並べると分かりやすくなると言われています。大抵どの本でもこの「長い順」という言い方がされているのですが、「なにがどう長いんだっけ?」と人が言うのを僕は何度か聞いたことがあります。学んだ記憶はあるのだけれど、うろ覚えになっているんでしょうね。
こう覚えてください。
字数の多い係る語句を、受ける語句の遠くに置く。そのあと順に字数の少ない語句を置いていく。
「字数の多い」という表現が使われている文章の書きかた本は、僕の知る限りありません。どういう意味だっけ? となりづらいので良いと思うのですが、どうでしょう。
日本近代文学のコレクションは僕にとって大切なものです。
原則通り、長い(字数の多い)順に、係る語句が並んでいます。
「日本近代文学のコレクションは」(14文字)、「僕にとって」(5文字)。
いちど逆にしてみましょう。
僕にとって日本近代文学のコレクションは大切なものです。
係る語句が二つだけなので分かりづらいかもしれませんが、微妙に意味を取りにくくなったと思いませんか? 日本語は語順が自由ですから、字数が多い順という原則を破ってもいいのです。「僕にとって」を前に持ってきて強調したいんだ、という場合もあるでしょう。そういうときはどうするか。
原則を破って逆の並びにする場合、頭に持ってきた字数の少ない語句のあとに、読点「、」を打ってください。
僕にとって、日本近代文学のコレクションは大切なものです。
これがいちばん分かりやすいじゃないか! と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。逆順にした場合、文頭一語目に読点「、」を打つと分かりやすくなります。
日本近代文学のコレクションは僕にとって大切なものです。
という第一の原則通り字数の多い順に並べると、「僕にとって、」と強調されすぎるのを避けられ、さりげない読み味となります。
逆順にするときは、最初の語句のあとに読点「、」を打つと分かりやすくなるというのが第二の原則です。
ただ 一語目のすぐあとに読点「、」を打つと、妙に野暮ったくなることがあります。「また、」「しかし、」「さらに、」などの接続詞、「僕は、」「彼は、」など主語を形成するもののあとに打つときは慎重になるべきでしょう。
このあたりから書き手の文章センス、文体の領域に入ってきますので、各自の好みも大きいかもしれませんが。
覚えておいていただきたいのは、
受ける語句の前に置く係る語句は字数の多い順に並べる。
(さりげない自然な読み味となる。強調したい要素がとくにない場合に有効)
と、
意図があってこの原則を破るときは、最初の語句のあとに読点「、」を打つと分かりやすくなる。
(強調されたニュアンスが出、個人的な思い入れを伝えたいときなどに有効)
この二点です。推敲時、係り受けを見直すときはまずこれを意識してみてください。ほとんどの場合、この二つだけでも分かりやすくなります。
同時に、読点の使い方によって文章の印象が変わることにも敏感になりましょう。
もう一つ、補足させてください。
係る語句が「を」で終わっている場合、たとえ字数が多くても受ける語句に近づけたほうが分かりやすくなるようです。例をあげましょう。