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あろえ|福祉現場のAI・業務効率化

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『きみと わたしの リズム』― ASDのある子どもたちの心を描いた6つの物語と支援のヒント
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『きみと わたしの リズム』― ASDのある子どもたちの心を描いた6つの物語と支援のヒント

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あろえ|福祉現場のAI・業務効率化

2025年07月12日 05:40

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『わたしは すこし ちがうリズムで 生きている』

—— この小さな物語が、誰かのまなざしを変えるきっかけになりますように

📝 この作品について

この小説は、ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもたちの心の中を、

静かな一人称で描いた6つのフィクションストーリーです。

朝の音が「痛い」と感じる感覚過敏、

予定の変更で心が追いつかなくなる不安、

言葉にできない思いを抱えたまま過ごす教室の時間。

それでも「わたしは、ここにいる」と静かに立ち続ける子どもたちの姿を、

ていねいに、やさしく紡ぎました。

💡 各章のあとに、支援者・保護者向けの解説つき

物語のあとには、それぞれのシーンから見えてくる発達特性と支援のヒントを掲載しています。

感覚や認知、行動の背景にある「特性」を専門的に整理し、

TEACCHや応用行動分析(ABA)の視点をふまえて、現場で活かせる視点を盛り込んでいます。

  • 支援者:読み聞かせ教材・事例検討・新人研修などに

  • 保護者:わが子の「気持ち」に寄り添い直すきっかけに

  • 当事者支援:本人に読んでもらう/一緒に読むことで共感と安心を

物語としても、支援教材としても。

“わかりあいたい”と願うすべての人の手に届けたい一冊です。



目 次

■ 第1章 朝の音が痛い
  - この物語から見える発達特性と支援のヒント

■ 第2章 スケジュールが変わった日   - この物語から見える発達特性と支援のヒント

■ 第3章 ことばが うまく でてこない   - この物語から見える発達特性と支援のヒント

■ 第4章 わたしのことを わかってくれた人
  - この物語から見える発達特性と支援のヒント

■ 第5章 わたしの中の“もうひとりのわたし”
  - この物語から見える発達特性と支援のヒント

■ 第6章 わたしのリズム、きみのリズム
  - この物語から見える発達特性と支援のヒント

■ あとがき


【第1章 朝の音が痛い】

チチチチチッ。

鳥の声がする。  

朝になると、毎日同じように聞こえるその声が、わたしには、まるでガラスのかけらを耳の中に入れられたみたいに痛い。  

やさしい音のはずなのに、耳がぎゅっと閉じたくなる。

わたしはおふとんの中で、そっと耳をふさぐ。  

両手で耳をおさえると、少しだけ安心する。  

でも、手が熱くなってくると、今度は肌がチクチクして、手を離したくなる。  

だからまた耳を開いて、音がじかに飛びこんでくるのをがまんする。  

このくりかえしが、わたしの朝のはじまり。

カーテンのすきまから、朝の光がさしこんでくる。  

その光は、わたしにとっては「まぶしい」じゃなくて、「痛い」。  

目を開けたとたんに、まぶたのうらがチカチカして、  

頭の中で光がバラバラにひろがって、何かにぶつかる音が聞こえるような気がする。

——「もうすぐ朝ごはんよー!」

リビングからお母さんの声がする。  

お母さんの声は好き。だけど、大きな声で呼ばれると、心がぎゅっとつまってしまう。  

起こしてくれるのはありがたいけど、静かに、そっと声をかけてくれたほうが、わたしにはうれしいのにな。

わたしは、そっとふとんをめくる。  

今日も、がんばって起きなきゃ。  

学校がある日は、できるだけ「いつもどおり」にしないと、不安になってしまう。

廊下を歩くと、スリッパの音が「ペタ、ペタ」って鳴って、それも少し気になる。  

でも、今日はまだマシな日。  

昨日は、お父さんがリビングでテレビの音を大きくしていて、それが頭の奥でガンガン鳴って、朝から泣きそうだった。

台所に行くと、お母さんが目玉焼きを焼いていた。  

「ジュウッ」というフライパンの音が、体の中まで響く。

音なのに、まるで体を押されてるみたいに感じる。  

その音にびっくりして、わたしは思わず目をぎゅっと閉じた。  

でも、お母さんは気づかない。  

「パン焼くね〜」って明るく言いながら、トースターをガチャンと押した。

音が重なってくると、頭の中がわちゃわちゃしてくる。  

何から守ればいいのか、わからなくなる。  

だから、わたしは自分の部屋に戻って、しばらくタイマーを見つめる。

このタイマーは、わたしの味方。  

あと何分で家を出るか、ピカピカ光って教えてくれる。  

「あと12分」。そう表示されたその数字が、わたしの中を少しだけ落ちつかせてくれる。

制服に着がえるときは、まず靴下。  

次にズボン。そのあとシャツ。  

順番が変わると、体がうまく動かなくなるから、わたしは毎日同じ手順でやる。  

お母さんが「今日はシャツから着たら?」って言うことがあるけど、それはできない。

「制服を着たら、かならず鏡を見る」っていうのも、わたしの決まり。  

前と後ろを見て、ボタンがちゃんと留まっているか、えりが曲がっていないか確認する。

それが終わったら、ランドセル。  

前の日に準備したはずなのに、今日の朝もう一度ぜんぶ出して、また入れなおす。  

プリント、連絡帳、筆箱。  

入っているとわかっていても、入れなおさないと気がすまない。  

「そんなに確認しなくても大丈夫よ」と、お母さんは言うけど、  

わたしにとっては、それが「大丈夫」のために必要なこと。

朝ごはんのパンは、ちょっとだけ耳を残した。  

お母さんは「耳も食べたほうがいいよ」と言うけど、耳のカリカリが苦手。  

口の中がギシギシして、頭がキーンってなる。

わたしはそれを言葉で説明するのが苦手だから、  

「ちょっとお腹いっぱい」とだけ伝えた。

お母さんは、少し困った顔をしたけれど、「そっか」と言ってくれた。  

その「そっか」が、今日はなんだか優しくて、ほっとした。

タイマーが「あと3分」って光る。  

わたしは深呼吸をして、くつ下をもう一度なおす。

今日も朝をクリアできた。  

わたしは毎日、静かに戦ってる。  

だれにも見えないところで、自分の中のざわざわと、音と、光と。  

でも、それでもちゃんと今日もスタートできたことを、わたしはわたしに伝えてあげたい。

「だいじょうぶ。今日もちゃんと歩き出せたよ」

■ この物語から見える発達特性と支援のヒント

🧠 第1章「朝の音が痛い」から見えること

この章では、ASDのある子どもが「一日のはじまり」で感じている困難や工夫が、静かに、しかしとてもリアルに描かれています。特に、以下の特性領域が関係しています。

🔊【感覚の特性】

  • 聴覚過敏:鳥の声やフライパンの音、目覚ましなど、通常の生活音であっても「痛い」「びっくりする」といった強い刺激として受け取ってしまう。

  • 視覚過敏:朝の光やカーテンのすき間から入る日差しも「チカチカ」「まぶしすぎる」と感じる。
    → 支援視点:本人にとっては「不快」ではなく「苦痛」に近い刺激であることを理解し、環境調整(照明・音量)や予防的配慮が求められます。

🧩【時間の整理統合の特性】

  • 時計やスケジュールを「不安の軽減手段」として使っている。

  • 「あと何分か」がわかる視覚的なタイマーが、安心のために必要な支援ツールになっている。
    → 支援視点:抽象的な“時間”を視覚化することで、不安の軽減・行動の予測可能性を高めています。タイマーやスケジュールボードは「見せる支援」として極めて有効。

🔁【ルーティン行動・構造化の必要性】

  • 着替えの順番、ランドセルの再チェックなど、「決まった手順」を守ることで安心感を得ている。

  • 順序が崩れると「うまく動けない」状態になりやすい。
    → 支援視点:「こだわり」と見るのではなく、**“自分を整えるための順序性”**と理解することが重要。
    日常生活動作の構造化(ToDo表・視覚指示など)も有効です。

🤐【表出コミュニケーションの特性】

  • パンの耳が苦手でも、うまく理由を伝えられず「お腹いっぱい」と言ってしまう場面が描かれている。
    → 支援視点:感覚特性や不快感の「理由」を言語で説明するのが難しいことがあるという視点を持ち、**行動から察する視点・代替手段(カード・表情スケールなど)**の活用が大切です。

📝 支援者・保護者へのメッセージ

朝は、その日のコンディションに大きく影響する時間帯です。

この子にとっての「朝」は、目覚めと同時に戦いが始まる時間でもあります。

だからこそ、

  • 静かな声かけ

  • 予定の可視化

  • 手順の安定化

  • 感覚刺激の調整

といった「先回りの支援」が、その子にとっての一日を“歩きやすくするリズム”になります。

「ただ起きて、準備して、学校へ行く」という日常の中にも、見えない努力と工夫がたくさんある。

それを知ったうえで、「よくがんばってるね」と伝えることが、なによりの支援になるのかもしれません。

【第2章 スケジュールが変わった日】

教室の空気が、ちょっとだけちがっていた。

朝の会がはじまる前、先生が黒板の左うえにある「今日の予定表」を消しゴムで消しているのを見たとき、わたしの心の中に、小さな不安のかけらが落ちた。

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