真夏の怪談2021~其の壱~

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音声・音楽
真夏の夜に相応しく、怪談を語っていきましょう。

■真夏の怪談其の壱『謎の声』■

あれは俺が十ニ歳の頃…。
古いラジカセを手に入れたので、家中にあるカセットテープを片っ端から聴いてみた。
自分でCDから録った好きな曲の入ったカセット。
兄から貰った洋楽の入ったカセット。
両親が持っていた古いヒット曲の入ったカセット。
ありとあらゆるカセットテープを片っ端から再生しては聴いていた。
ふと見ると、カセットの山の中に一つ古めかしいものがあった。
「これは何が入っているのだろう…?」
気になった俺はそのカセットもデッキに入れて再生ボタンを押した。
すると、流れて来たのは音楽ではなく人の声だった…。
「…は…で…じゃない…、…は…るけど…じゃない…きっと…になるけど…じゃない…。」
籠った音、虚ろな声、所々聴き取れないけれど何かを訴えかけている。
「…!!」
俺は思わず血の気が引いた。
何故ならそれは紛れもなく俺自身の声だったからだ。
籠った音だけれど、はっきり分かる、自分の声だ。
けれど、こんなものを録った覚えはない…。
録ったはずのない自分の声…。
何かに憑り依かれたように、ひたすら謎の言葉を発し続けている…。
俺は思わず悲鳴を上げて停止ボタンを押した。
それから三日ほど経って、友人が家に遊びに来た。
俺はラジカセを自慢しながら色々な話をしていた。
ふと、あの謎の声の入ったカセットの事を思い出し、友人に話した。
「それは何かの聞き間違えじゃないか?」
「いや、そんなはずはない!試しに聴いてみるか?」
「あぁ、是非聴かせてくれ。」
半笑いで返す友人に腹を立てながらも、俺は恐る恐る件の古めかしいカセットテープをデッキに入れた。
息を飲んで再生ボタンを押す…。
しかし…そこから流れたのは大昔のヒット曲だった。
「これがお前の声だって?」
ますます笑みを浮かべる友人に俺は反論する。
「違う!この前は本当に俺の声が流れたんだ!」
けれど、友人は笑うばかりで結局信じてはくれなかった。
あの時聴いた自分の声…あれは結局なんだったのか分からない。
その後、その古めかしいカセットテープを聴いた事はない。
なぜなら、その日以来、あったはずの場所にそのカセットテープが無くなってしまったからだ。
今でも、自分の声を録音する時にふとその時の事を思い出す事がある…。
俺が自分の声を録る事が苦手な理由の一つだ…。
<終>

■童ノ聲■
「童ノ聲」ジャケット.jpg



■音源の聴き方■

※ココナラブログでは直リンクが貼れないので説明します。
①「Dark core.-Web site-」で検索!
②トップに出る「Music」ページ行く!
③曲名が一覧で並んでいるのでそこから聴きたい曲のタイトルをクリック!
…これで聴けます!^^


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