「いっぱい撮る」「念のために撮る」はNG 下手なカメラマンへの道をまっしぐら

記事
写真・動画
「いっぱい撮っておきましょう」。全くの初心者に対して、自分は撮れるつもりの写真趣味の人がするアドバイスで、たまに見かけることがあります。

被写体やシチュエーションにもよりますが、やめたほうがいいです。そこには、「シャッターチャンスを狙う」と「シャッターを切るには集中力が要る」の視点が欠けています。

野球に例えると、ピッチャーの投球に対し、漫然とバットを振るようなものです。まぐれ当たりなどありません。場数を踏んでも上達しません。

シャッターチャンスはどこへ行った?

そのアドバイスをする人のうちのひとりは、仕事としても撮っているので、何度か写真を見たことがあります。最も欠点がはっきり見えたのが、インタビュー写真でした。手がだらんと下がって、ポーズらしいポーズはありません。表情も笑っているわけでもなく、なにか話している様子でもありません。

インタビュー写真の場合、狙うべきタイミングは、手の動きと表情があったときです。ほおに当てる・顔の前で振るなどが手の動きの代表でしょう。表情ならば、とにもかくにも笑顔が浮かんだときです。その次ぐらいに、集中しているのがわかるときや、まさしく言葉を発しているときなどです。

相手がもともと表情の豊かな人かどうか、ボディーランゲージを多用する人かどうかで、タイミングの多い少ないは左右されます。何も工夫しなければ、20 分、30分待っても、ほとんどタイミングがない人も珍しくありません。中には、カメラを向けると、わざわざ体をこわばらせ、無表情になる人までいます。

ですから、こちらからあれこれ話しかけたり、目線の方向を指定したりするのです。その上で、カメラを構えたまま、シャッターボタンにも指を掛けて半押しにしたまま、手ぶれにつながらないように息も殺し気味にしながら、何秒・何十秒も待つのです。そうやって、ようやく1回か2回シャッターを切ると、「プファー」と水中から浮かんできたような状況になることも、よくあります。

タイミングを待つのは、風景写真でもありえます。「人が通り掛かるのを待つ」「混雑する様子が撮りたいので、狙っているアングルの中で人が密集するのを待つ」あたりがその代表でしょう。

これらの「タイミング」とは、言い換えると「シャッターチャンス」です。あくまで教科書的な建前ですが、シャッターを切っていいのはシャッターチャンスのときだけです。

シャッターを切るには、判断力と集中力が要る

_M023257_TP_V.jpg
「いっぱい撮っておきましょう」が必要になる理由は、「念のために」であるようです。インタビュー写真ならば「目をつぶっていることがある」、物や風景を撮った写真ならば「ピントが外れていたり、手ぶれしていることがある」ので、「何枚も撮っておいたほうがいい」というのです。

それも間違いではないとは思います。ただ、「念のために」では、なかなか集中力は発揮できないのではないでしょうか。

シャッターを切る直前や瞬間に気にしなければいけないことは、シャッターチャンス以外にもいくつもあります。構図、シャッタースピード、絞り値、ホワイトバランスなどなどです。さらには、「首切り写真・くし刺し写真」「関節切り写真」にしてしまわない配慮も必要です。
「念のため」でやると、集中力もないままに、だらだらやるのが落ちです。逆に集中力を高いまま続けようとしたところで、次第に疲れていき、結果として集中力の低い状態で撮った写真を乱発してしまうでしょう。

精神論になってしまいますが、シャッターを切るときは、「いっぱい撮る」前提ではなく、「この1 枚で決める」覚悟でやるべきです。それで、うまく撮れていないのがわかって、結果として何枚も撮ることはあります。ただ、そうなったとき、私ならば「こりゃあ、早く決めてしまわないと、体力を消耗するだけで、いっそうまともに撮れなくなっていくぞ」と焦りを感じるのが常です。

 「いっぱい撮る」ではなく、「いろいろなシーンを撮る」が必要な場合はある

ここまでの話は、「『いっぱい撮る』が『同じシーンでも何枚も撮っておけ』の意味になっている」が前提です。アドバイスする人と受ける人のやり取りから、そう判断しました。

しかし、これが「いろいろなシーンを撮っておけ」ならば別の話です。どういったところに使う写真か次第ですが、必要なことです。「念のために」ならばなおさらです。

たとえば、インタビュー写真ならば、バストアップ(胸から上)・上半身・全身、それも左右向きの6種類があって、ワンセットでしょう。あるいは、ドアップ(顔面中心)も撮っておけば、事前の予定にはなくても「記事の中で使ってみよう」となるかもしれません。

仮に予定している使用枚数が2枚ならば、記事に採用するのは「バストアップの右向きか左向きを1枚、上半身で逆向きを1枚」あたりが定番でしょうか。実際の撮影としては、それらをまず押さえ、あとは、そのときの余裕と、事前の予定がどのくらい変更される可能性があるか次第でしょう。もし「その人ひとりで、5枚でも10枚でも使う」予定ならば、ドアップまで撮ったり、背景を変えたりするのは必須です。

上半身のものばかり、しかもポーズらしいポーズはなく、無表情な写真を撮って「いっぱい撮った」つもりになっていたら、あとのやりくりに困るだけです。実際に、それらをひとつのWEB記事に何枚も使っているのも、しばしば見かけますが……

 「いっぱい撮る」はデジカメのせい?

cameraIMGL9940_TP_V.jpg
「だらだら撮るのを気にしなくなったのはいつからか。なぜか」と考えてみると、デジカメやスマホが当たり前になったのが影響しているように思えてきました。

フィルムカメラの一般的なものであれば、使うフィルムは24枚撮りか36枚撮りです。使い切ったら、次の1本に入れ替えればいいのですが、ある程度手間がかかり、そこで一区切りになるのは確かです。また、現像代もかかります。プロかよほどの上級者でもない限り、サービスプリントも半ば自動的に依頼し、その分のお金もかかります。

シャッターを1回切るのは、今とは比べものにならないぐらい、大事(おおごと)だった気がします。私自身の周囲の人を思い出しても、「丸一日、カメラをぶら下げて歩いても、1本使わなかった。フィルムが余った」は当たり前にありました。

デジカメならば、数百枚かそれ以上撮らないと記録メディアはいっぱいになりません。プリントサービス店に出すわけでもないので、お金もほとんど気にせずに済みます。

「大事」でなくなったのは悪いとはいいません。ただ、撮る人間には、集中力と根気の限界があるのは、覚えておいてもいいのではないでしょうか。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す