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2026年10月30日 11:51

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「まさか、私だったとは……」

私たちの緊張が伝わったのだろうか。

占い師さんは、穏やかな口調で言った。

「大丈夫。すぐ視てあげるからね」

彼女は霊感もあるらしく、まずは霊視をしてもらえることになった。

……あぁ。

まだ何も解決していないというのに。

それでも、不思議と少しだけ心が軽くなった。

ようやく、この出来事の原因がわかるかもしれない。

そう思ったからだろうか。

誰かに相談できるということが、こんなにも心強いものだとは思わなかった。

一人で抱えていた不安を、ようやく誰かと分かち合えたような気がした。

私は、そっと胸を撫で下ろした。

やがて彼女は静かに目を閉じた。

呼吸を整えながら、何かを感じ取ろうとしている。

数十秒ほどだっただろうか。

その間、私たちは身じろぎひとつできなかった。

唾を呑み込むことさえ躊躇われる。

ただ静かに、彼女の言葉を待っていた。

そして——。

「あなたに憑いてるね」

……は?

一瞬、頭の中が真っ白になった。

さらに彼女は、続けてこう言った。

「けっこう好かれているよ、ドア開けて初めて見た時に旦那さんにおんぶしてたからびっくりしちゃったよ笑」

……どういうことでしょうか。

つまり、こういうことだった。

家の中で何かの気配を感じ、恐怖に怯えていた妻。

しかし、実際に取り憑かれていたのは——

私自身で今もおんぶしているとのこと💦

気配を感じ取っていた妻ではなく、私だったのだ。

「旦那さん、優しいでしょ。受け入れてもらえると思ってるよ」

「あぁ……まぁ……」

思わず、曖昧な返事をしてしまった。

自慢するつもりはないけれど、私は昔から「平等」という言葉を大切にしてきた。

相手が誰であろうと、できるだけ分け隔てなく接する。

そんな私の周りには、自然といろいろな人が集まってくる。

……いやいやいや、ちょっと待って。

幽霊もですか……?

思わず、心の中で笑ってしまった。

怖い、という気持ちよりも先に、妙に納得している自分がいた。

なるほど。

私の優しさは、どうやら人間だけに適用されるものではないらしい。

まさか、こんなところにまで影響しているとは。

……いやいや、さすがにそれは想定外だ。

私は苦笑いしながら、心の中でそうつぶやいた。

彼女は、視えたものを淡々と語り続けた。

その正体は、やはり…妻が見えたものだった…

だが、思いもよらない展開に発展するとは

この時の私は知る由もなく

ただただ手を膝の上で握りしめながら聞いていた。

「この幽霊ね、最初は職場から旦那さんに憑いてきたみたい」

「職場から……?」

私が聞き返すと、彼女は続けた。

「旦那さんの方が帰りが早いでしょ? だから、先に家にいる旦那さんと幽霊が二人きりになるわけ」

「……はい」

「そこへ奥さんが帰ってくるもんだから、幽霊からしたら、もう……」

彼女は少し間を置いて、苦笑いしながら言った。

「何よあの女!!」
って状態になってるのよ

……え?

ちょっと待ってくれ。

ちなみに、この幽霊は30代の女性。

交通事故で亡くなった方らしい。

どうやら私は、知らず知らずのうちに幽霊との同棲生活を始めていたようだ。

そして妻はというと……。

まさかの不倫相手、あるいは愛人という立場に追いやられていたのである。

いや、笑っちゃいけない。

いけないんだが……。

ごめん。

ちょっと面白い…おかしな展開になってきた。

どうやらその幽霊には、自分の見たいものしか見えていないらしい。

私と妻が夫婦であることも分かっていない。

いや、そもそも幽霊の中では、私と彼女が一緒に暮らしていることになっているのだろうか。

だとしたら、妻の立場があまりにも不憫すぎる。

そんなことを考えながら、私は彼女に尋ねた。

「こういうことって、あるんですか?」

「稀ではあるけどね。気に入られてしまうケースは普通にあるよ」

なるほど。

……いや、なるほどじゃない。

とにかく、今は妻を安心させることが先決だった。

「それで、どうすれば家から出ていってくれるんですか?」

私がそう尋ねると、彼女は少し考えてから答えた。

「すぐには無理そうだけど……少しずつ分かってもらおうか」

話によると、こうした霊を強制的に引き離すこともできるらしい。

ただ、彼女自身の身体への負担もある。

それに、彼女は除霊を専門としているわけではなかった。

できることなら、無理に力を使わず、穏便に解決したい。

そんな考えがあるようだった。

私としても、相手に悪意がないのであれば、問答無用で成敗する必要まではないと思っていた。

そもそも、こちらから何かした覚えもない。

ただ普通に生活していただけなのだ。

それなのに、いつの間にか見知らぬ女性との同棲生活が始まり、妻が不倫相手扱いされている。

……冷静に考えると、やっぱりおかしい。

こうして私たちは、占い師さんを通じて、彼女に少しずつ事情を伝えてもらうことにした。

その後もいくつか助言をいただき、私たちはお礼を告げて帰路についた。

帰りの車内。

行きの張り詰めた空気とは違い、私たちの気持ちは少しだけ軽くなっていた。

もちろん、問題が解決したわけではない。

家に帰れば、あの幽霊が待っているかもしれないのだ。

……いや、待っているという表現も、なんだか妙な話だが。

そんなことを考えているうちに、妻との会話は自然と、ひとつの話題へと移っていった。

「……で、どうやったら出ていってくれるんだろうね?」

「うーん……」

私たちは顔を見合わせた。

そして始まったのは――

幽霊を追い払うための、夫婦会議だった。

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