ココナラ スキルマーケットココナラ スキルマーケットココナラ コンテンツマーケット
ココナラ スキルマーケットココナラ スキルマーケットココナラ コンテンツマーケット
UserIcon

Theolia

販売実績215
評価4.9

※ココナラスキルマーケットにおける実績です。

プロフィール詳細へコンテンツ一覧へ
【2026年版】bulk RNA-seq解析の一次解析を徹底解説
ココナラ限定出品

【2026年版】bulk RNA-seq解析の一次解析を徹底解説

お気に入り0
評価

0

販売実績

0件

UserIcon

Theolia

2026年04月07日 20:10

コンテンツ一覧へ

1,000

円

この記事の対象読者と読み方ガイド

本記事は、bulk RNA-seq(バルクRNA-seq)の一次解析について、初心者にもわかりやすく、かつ中級者にとっても実践的な知見が得られるように構成しています。

想定する読者

  • 🔰 初心者 / RNA-seqのデータ解析をこれから始めたい方、FASTQファイルを受け取ったがどう処理すればよいかわからない方 / 導入セクション(トランスクリプトーム解析とは?〜用語集)から順番に読み進めてください

  • 🔧 中級者 / 一通りの解析経験はあるが、パラメータの根拠やツール選択の判断基準をより深く理解したい方 / 目次から必要なステップに飛んで、各セクション冒頭の「このセクションで学ぶこと」を確認してください

記事の全体構成

本記事は、大きく 3つのパート で構成されています。

📘 パート1:背景知識(初心者の方はここから)

├─ トランスクリプトーム解析とは何か?

├─ bulk RNA-seqとは何か?

├─ RNA-seqの実験から解析までの全体像

└─ 本記事で使う用語集

🔬 パート2:一次解析の実践(本記事のメイン)

├─ 解析開始前に確認すべき実験情報

├─ Step 0〜6:各解析ステップの詳細

├─ 推奨ツール構成と実践パイプライン例

└─ よくある失敗とその回避策

📦 パート3:まとめと次のステップ

├─ 一次解析の成果物一覧

├─ 二次解析への接続方法

└─ 参考文献・根拠

💡 初心者の方へ:パート1の背景知識から読むことを強くおすすめします。用語や概念を先に理解しておくと、パート2の実践パートがぐっと理解しやすくなります。

⚠️ 中級者の方へ:パート1は既知の内容かもしれませんが、「用語集」セクションではアラインメントとマッピングの使い分けなど、混同しやすい概念も整理しています。必要に応じてご確認ください。


パート1:背景知識


トランスクリプトーム解析とは何か?

📖 このセクションで学ぶこと:トランスクリプトームの定義、セントラルドグマとの関係、そしてトランスクリプトーム解析がなぜ生命科学研究で重要なのかを理解します。

セントラルドグマとRNAの役割

生物の細胞の中では、遺伝情報は次のような流れで機能しています。これをセントラルドグマ(中心教義)と呼びます。

DNA  ──→  RNA  ──→  タンパク質
(設計図)  (転写産物)  (実際に働く分子)
  転写        翻訳

ここで重要なポイントは、DNAはすべての細胞でほぼ同じですが、RNAはどの遺伝子がどれだけ「読まれて」いるかによって細胞ごとに大きく異なるという点です。

たとえば、肝臓の細胞と脳の神経細胞は同じDNAを持っていますが、実際に発現している(=RNAに転写されている)遺伝子のセットはまったく違います。つまり、RNAを調べることで「いま、この細胞で何が起きているか」がわかるのです。

トランスクリプトームとは

トランスクリプトーム(transcriptome)とは、ある時点・ある条件下で細胞や組織に存在するRNA転写産物の総体のことです。

  • 用語:意味

  • ゲノム(genome):ある生物が持つDNA配列の全体

  • トランスクリプトーム(transcriptome):ある時点で転写されているRNA全体(条件や組織で変わる)

  • プロテオーム(proteome):ある時点で存在するタンパク質の全体

ゲノムが「設計図のすべて」だとすれば、トランスクリプトームは「いま、どの設計図が使われているか」を示すスナップショットです。

トランスクリプトーム解析とは

トランスクリプトーム解析とは、このRNA転写産物の全体像を網羅的に測定・解析する手法の総称です。具体的には、以下のような問いに答えるために使われます。

  • ある疾患の患者と健常者で、どの遺伝子の発現が変化しているか?

  • 薬剤を投与した前後で、細胞内のどの経路が活性化・抑制されたか?

  • 発生過程の各段階で、どの遺伝子がオン・オフされるか?

  • がん細胞と正常細胞で、特異的に発現している遺伝子は何か?

トランスクリプトーム解析の代表的な手法が、次のセクションで説明するRNA-seq(RNA sequencing)です。

なぜゲノム解析だけでは不十分なのか

「ゲノムを読めばすべてわかるのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、ゲノム配列は基本的に「静的な情報」であり、以下のことはゲノムだけでは直接わかりません。

  • 知りたいこと / ゲノム / トランスクリプトーム

  • 遺伝子の配列・構造 / ✅ / ❌

  • 遺伝子の発現量(いまどれだけ使われているか) / ❌ / ✅

  • 条件による発現変動 / ❌ / ✅

  • スプライシングバリアント(同じ遺伝子由来の異なるRNA) / △(予測のみ) / ✅

  • 組織・細胞種ごとの違い / ❌ / ✅

このように、トランスクリプトーム解析は「遺伝子がどれだけ活動しているか」というダイナミックな情報を捉えるための手法であり、ゲノム解析とは相補的な関係にあります。

bulk RNA-seqとは何か?

📖 このセクションで学ぶこと:RNA-seqの基本原理、bulk RNA-seqとsingle-cell RNA-seq(scRNA-seq)の違い、そしてbulk RNA-seqが適している場面と限界を理解します。

RNA-seqの基本原理

RNA-seq(RNA sequencing)とは、細胞や組織から抽出したRNAを次世代シーケンサー(NGS: Next-Generation Sequencer)で網羅的に読み取る技術です。基本的な流れは以下の通りです。

1. RNA抽出
   細胞や組織からRNAを取り出す
2. ライブラリ調製
   RNAをcDNA(相補的DNA)に逆転写し、
   アダプター配列を付加してシーケンス可能な形にする
3. シーケンシング
   NGSでcDNA断片を大量に読み取り、
   短い配列(リード)として出力する → FASTQファイル
4. データ解析
   リードを参照ゲノムにマッピングし、
   各遺伝子の発現量を定量する → カウント行列

この「大量のリードを使って遺伝子発現を網羅的に測定する」のがRNA-seqの本質です。以前はマイクロアレイが主流でしたが、RNA-seqはダイナミックレンジが広く、未知の転写産物も検出できるため、現在ではトランスクリプトーム解析の標準手法となっています。

bulk RNA-seqとは

bulk RNA-seqとは、多数の細胞をまとめて(バルクで)RNA抽出し、その集団全体の遺伝子発現プロファイルを測定するRNA-seqのことです。

🔬 bulk RNA-seq のイメージ
  組織サンプル(数千〜数百万の細胞)
        │
        ▼
  まとめてRNA抽出 ← すべての細胞のRNAが混合される
        │
        ▼
  シーケンシング
        │
        ▼
  遺伝子発現プロファイル ← 細胞集団の「平均的な」発現量

つまり、bulk RNA-seqの結果は「その組織(または細胞集団)に含まれるすべての細胞のRNA発現の平均値」を反映しています。

bulk RNA-seq と single-cell RNA-seq(scRNA-seq)の違い

近年注目されているsingle-cell RNA-seq(scRNA-seq)との違いを整理しておきましょう。

  • 比較項目: 解析単位 / bulk RNA-seq: 細胞集団(組織全体) / scRNA-seq: 個々の細胞

  • 比較項目: 得られる情報 / bulk RNA-seq: 集団の平均的な発現プロファイル / scRNA-seq: 細胞ごとの発現プロファイル

  • 比較項目: 1サンプルあたりのコスト / bulk RNA-seq: 比較的低い / scRNA-seq: 高い

  • 比較項目: 必要なRNA量 / bulk RNA-seq: 比較的少量でOK / scRNA-seq: 極微量(1細胞分)

  • 比較項目: データ解析の複雑さ / bulk RNA-seq: 標準的なパイプラインが確立 / scRNA-seq: より複雑(次元削減、クラスタリング等)

  • 比較項目: 細胞種の不均一性 / bulk RNA-seq: 検出しにくい(平均化される) / scRNA-seq: 検出できる

  • 比較項目: 生物学的反復 / bulk RNA-seq: 複数サンプルで統計的検定が容易 / scRNA-seq: サンプル数の確保が課題になりやすい

  • 比較項目: 主な用途 / bulk RNA-seq: 群間比較(疾患 vs 正常、処理 vs 未処理) / scRNA-seq: 細胞タイプの同定、細胞状態の解析

bulk RNA-seqが適している場面

bulk RNA-seqは「古い技術」ではありません。以下のような場面では、2026年時点でも第一選択となります。

  • 群間の差次的発現解析(DEG解析):疾患群と対照群、薬剤処理群と未処理群の比較など

  • 多数のサンプルを効率的に処理したい場合:臨床コホート研究、タイムコース実験など

  • 統計的に堅牢な比較を行いたい場合:生物学的反復を十分に確保した上での検定

  • パスウェイ解析やGSEAなどの下流解析に接続したい場合

  • コストや計算リソースに制約がある場合

bulk RNA-seqの限界

一方で、以下のような限界があることも理解しておく必要があります。

  • 細胞種の不均一性を直接解像できない:異なる細胞種が混在する組織では、少数派の細胞の発現変化が平均化されて見えなくなることがある

  • 希少な細胞集団の検出が困難:腫瘍微小環境中の免疫細胞サブセットなど

  • 空間的な情報が失われる:組織のどの位置にどの遺伝子発現パターンがあるかは、spatial transcriptomicsの領域

💡 初心者の方へ:まずはbulk RNA-seqの解析手法をしっかり身につけることをおすすめします。bulk RNA-seqで学ぶ品質管理、マッピング、発現定量の概念は、scRNA-seqやspatial transcriptomicsを学ぶ際にも基盤となります。


RNA-seqの実験から解析までの全体像

📖 このセクションで学ぶこと:RNA-seq実験のウェット(実験操作)とドライ(データ解析)の全体の流れを俯瞰し、本記事で扱う「一次解析」が全体のどこに位置するかを理解します。

RNA-seqプロジェクトは、大きくウェット工程(実験操作)とドライ工程(データ解析)に分かれます。以下に、サンプル採取から生物学的知見の獲得までの全体像を示します。

全体フロー

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  ウェット工程(実験操作)         ← 実験者・シーケンス施設が担当
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  1. 実験デザイン
     ├─ 比較群の設定(疾患 vs 正常、処理 vs 未処理 など)
     ├─ 生物学的反復数の決定(※統計的検出力に直結)
     └─ サンプル採取・保存方法の決定
  2. RNA抽出
     └─ 組織・細胞からtotal RNAを抽出
  3. ライブラリ調製
     ├─ mRNA選択(poly(A) selection)or rRNA除去(rRNA depletion)
     ├─ cDNAへの逆転写
     ├─ 断片化
     └─ アダプター付加・PCR増幅
  4. シーケンシング
     ├─ シーケンサーにライブラリをロード(例:Illumina NovaSeq, NextSeq)
     └─ 出力:BCLファイル → FASTQ変換
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  ドライ工程(データ解析)          ← バイオインフォマティシャンが担当
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  5. 一次解析 ★本記事の対象★
     ├─ FASTQ品質確認(FastQC / MultiQC)
     ├─ アダプタ除去・トリミング(必要時のみ)
     ├─ リードのマッピング(STAR)or 擬似アラインメント(Salmon)
     ├─ 遺伝子発現定量(featureCounts / Salmon)
     ├─ マッピング後QC(RSeQC等)
     └─ 出力:遺伝子発現カウント行列
  6. 二次解析
     ├─ 正規化(DESeq2 / edgeR内部で実施)
     ├─ サンプルQC(PCA、階層クラスタリング)
     └─ 差次的発現解析(DEG解析)
  7. 三次解析
     ├─ Gene Ontology(GO)解析
     ├─ パスウェイ解析(KEGG等)
     ├─ GSEA(Gene Set Enrichment Analysis)
     └─ 生物学的解釈・論文化

ウェット工程のポイント

実験操作の詳細は本記事の範囲外ですが、ドライ解析を行ううえで以下の情報は実験者から必ず受け取ってください。一次解析のパラメータ設定に直接影響します。

  • 実験者から受け取るべき情報: ライブラリ調製キット名 / なぜ必要か: stranded/unstrandedの判断に必要 / 一次解析での影響箇所: featureCountsの-sオプション、Salmonのlibtype

  • 実験者から受け取るべき情報: single-end / paired-end / なぜ必要か: FASTQ入力方法が変わる / 一次解析での影響箇所: すべてのツールの入力設定

  • 実験者から受け取るべき情報: read長 / なぜ必要か: STARのsjdbOverhang設定等 / 一次解析での影響箇所: STARのindex作成、マッピング精度

  • 実験者から受け取るべき情報: 生物種 / なぜ必要か: 参照ゲノム・アノテーションの選択 / 一次解析での影響箇所: genome FASTA、GTFの取得元

  • 実験者から受け取るべき情報: poly(A) selection / rRNA depletion / なぜ必要か: 期待されるリード組成が変わる / 一次解析での影響箇所: QC結果の解釈、rRNA残存率の評価

ドライ工程の3段階

ドライ工程は以下の3段階に分かれます。本記事のパート2で詳しく解説するのは一次解析です。

  • 段階: 一次解析 / 入力: FASTQファイル / 出力: 遺伝子発現カウント行列 / 主なツール: FastQC, STAR, Salmon, featureCounts

  • 段階: 二次解析 / 入力: カウント行列 / 出力: DEGリスト、PCAプロット等 / 主なツール: DESeq2, edgeR, limma-voom

  • 段階: 三次解析 / 入力: DEGリスト等 / 出力: 生物学的知見 / 主なツール: clusterProfiler, fgsea, DAVID

一次解析の位置づけ(なぜ最も重要か)

一次解析は「地味な前処理」に見えるかもしれませんが、実は解析全体の信頼性を決定づける最も重要な工程です。

理由は明確です。一次解析で作られるカウント行列の品質が悪ければ、その後の二次解析・三次解析でどれほど高度な統計手法を使っても、正しい結論は得られません。具体的には、参照ゲノムの選択ミス、strandedness設定の誤り、不適切なトリミングなどが一次解析で発生すると、下流のDEG解析で偽陽性や偽陰性が大量に発生します。

逆に、一次解析が正確であれば、二次解析以降は統計的手法の選択に集中でき、結果の解釈もスムーズになります。

💡 初心者の方へ:「とりあえずパイプラインを回せばOK」と思われがちですが、各ステップでなぜその設定にするのかを理解していることが、トラブルシューティングや結果の解釈で大きな差になります。本記事のパート2では、各ステップの「なぜ」を丁寧に解説します。


本記事で使う用語集

📖 このセクションで学ぶこと:本記事で頻出する専門用語を一覧で整理します。初心者の方は一読しておくとパート2以降の理解がスムーズになります。中級者の方は、混同しやすい用語の整理にご活用ください。

基本用語

  • 用語: リード(read) / 英語表記: read / 意味: シーケンサーが読み取った短いDNA/RNA配列の断片。1回の読み取りで得られる1本の配列。典型的には75〜150塩基程度

  • 用語: FASTQ / 英語表記: FASTQ / 意味: シーケンサーの出力ファイル形式。各リードの塩基配列とその品質スコア(Phredスコア)がセットで記録されている

  • 用語: 参照ゲノム / 英語表記: reference genome / 意味: リードのマッピング先となる、その生物種の標準的なゲノム配列(例:ヒトならGRCh38)

  • 用語: アノテーション(注釈) / 英語表記: annotation / 意味: ゲノム上のどこにどの遺伝子があるかを記述した情報。GTF/GFF形式で提供される

  • 用語: カウント行列 / 英語表記: count matrix / 意味: 行が遺伝子、列がサンプルで構成される表。各セルにはその遺伝子のリード数(発現量)が入る。一次解析の最終成果物

シーケンシング関連用語

  • 用語: NGS / 英語表記: Next-Generation Sequencing / 意味: 次世代シーケンサーの総称。大量のDNA/RNA断片を並行して読み取る技術

  • 用語: paired-end(PE) / 英語表記: paired-end sequencing / 意味: 1つのDNA断片の両端からリードを取得する方式。R1とR2の2本のリードが得られる

  • 用語: single-end(SE) / 英語表記: single-end sequencing / 意味: 1つのDNA断片の片端からのみリードを取得する方式

  • 用語: read長 / 英語表記: read length / 意味: 1本のリードの塩基数(例:150 bp)

  • 用語: アダプター / 英語表記: adapter / 意味: ライブラリ調製時にDNA断片の両端に付加される短い人工配列。シーケンサーが断片を認識するために必要だが、解析時には除去が必要な場合がある

  • 用語: stranded library / 英語表記: stranded library / 意味: 元のRNAがどちらの鎖(sense/antisense)由来かの情報を保持するライブラリ。発現定量の正確性向上に寄与

  • 用語: シーケンス深度 / 英語表記: sequencing depth / 意味: 1サンプルあたりに得られるリード数の総量。一般的にbulk RNA-seqでは数千万リード/サンプルが目安

マッピング・定量関連用語

  • 用語: マッピング / 英語表記: mapping / 意味: リードを参照配列上の位置に対応付ける処理の総称

  • 用語: アラインメント / 英語表記: alignment / 意味: リードと参照配列の塩基レベルでの対応付け。ギャップやミスマッチを考慮した厳密な位置合わせ

  • 用語: スプライスアラインメント / 英語表記: splice-aware alignment / 意味: RNA-seqのリードがイントロンをまたぐ場合に対応するアラインメント。STARなどが対応

  • 用語: 擬似アラインメント / 英語表記: pseudoalignment / 意味: リードを転写産物に高速に対応付ける手法。厳密な塩基アラインメントは行わず、k-merベースで帰属先を推定。Salmonなどが使用

  • 用語: BAM / 英語表記: Binary Alignment Map / 意味: アラインメント結果を格納するバイナリ形式のファイル。ゲノム座標、マッピング品質などを含む

  • 用語: 発現定量 / 英語表記: quantification / 意味: 各遺伝子(または転写産物)に帰属するリード数を数える処理

  • 用語: raw counts / 英語表記: raw counts / 意味: 正規化前のリードカウント数。DESeq2やedgeRへの入力に使用

混同しやすい用語の整理

マッピング vs アラインメント

日常的にはほぼ同義で使われますが、厳密には以下のような使い分けがあります。

  • : 意味 / マッピング(mapping): リードを参照配列上の位置に対応付ける処理全般 / アラインメント(alignment): 塩基レベルでの厳密な位置合わせ

  • : 範囲 / マッピング(mapping): 広い(擬似アラインメント等も含む) / アラインメント(alignment): 狭い(マッピングの一手法)

  • : 例 / マッピング(mapping): 「Salmonでマッピングする」 / アラインメント(alignment): 「STARでアラインメントする」

本記事では、位置合わせの処理全般を指すときはマッピング、STARなどによる厳密な位置合わせを指すときはアラインメントと表記します。

TPM vs FPKM vs raw counts

発現量の表現方法には複数の種類があり、用途によって使い分けが必要です。

  • 指標: raw counts / 正式名称: — / 特徴: 遺伝子に帰属したリードの生カウント数 / 主な用途: DESeq2/edgeRへの入力(DEG解析)

  • 指標: TPM / 正式名称: Transcripts Per Million / 特徴: 遺伝子長とライブラリサイズで正規化。サンプル内比較に適する / 主な用途: 可視化、サンプル内の相対比較

  • 指標: FPKM/RPKM / 正式名称: Fragments/Reads Per Kilobase per Million / 特徴: 遺伝子長とライブラリサイズで正規化(TPMとは計算順序が異なる) / 主な用途: 古い論文で使用。現在はTPMが推奨

⚠️ 重要:DEG解析(DESeq2/edgeR)にはraw countsまたはtximport経由のcount相当量を使います。TPMやFPKMをDEG解析に直接入力するのは不適切です。DESeq2やedgeRは内部で独自の正規化を行うため、事前に正規化された値を渡すと統計モデルの前提が崩れます。

QC(Quality Control)

QCは「品質管理」を意味しますが、RNA-seq解析では複数の段階でQCを行います。

  • QCの段階: FASTQ QC / タイミング: シーケンシング直後 / 確認する内容: リードの塩基品質、アダプター混入、GC含量の偏り / 主なツール: FastQC, MultiQC

  • QCの段階: マッピング後QC / タイミング: アラインメント後 / 確認する内容: マッピング率、遺伝子body coverage、strandedness / 主なツール: RSeQC, MultiQC

  • QCの段階: サンプルQC / タイミング: 二次解析の冒頭 / 確認する内容: サンプル間の類似性、外れ値サンプルの検出 / 主なツール: PCA、階層クラスタリング



トランスクリプトーム解析の記事第一弾として、本記事ではbulk RNA-seq 一次解析(primary analysis)に焦点を当てます。

対象は、FASTQファイルから遺伝子発現カウント行列を作るまでです。

2026年時点で広く受け入れられている実務・ガイドライン・主要ツールの動向に基づき、正確性と再現性を重視して整理します。


目次

パート1:背景知識(初心者の方はここから)

1. [この記事の対象読者と読み方ガイド](#この記事の対象読者と読み方ガイド)

2. [トランスクリプトーム解析とは何か?](#トランスクリプトーム解析とは何か)

3. [bulk RNA-seqとは何か?](#bulk-rna-seqとは何か)

4. [RNA-seqの実験から解析までの全体像](#rna-seqの実験から解析までの全体像)

5. [本記事で使う用語集](#本記事で使う用語集)

パート2:一次解析の実践

6. [はじめに:一次解析とは何か](#はじめに一次解析とは何か)

7. [bulk RNA-seq全体像の中での一次解析の位置づけ](#bulk-rna-seq全体像の中での一次解析の位置づけ)

8. [解析開始前に必ず確認すべき実験情報](#解析開始前に必ず確認すべき実験情報)

9. [一次解析の標準ワークフロー](#一次解析の標準ワークフロー)

10. [Step 0: 解析環境と再現性の確保](#step-0-解析環境と再現性の確保)

11. [Step 1: FASTQの品質評価(QC)](#step-1-fastqの品質評価qc)

12. [Step 2: アダプタ除去・トリミングは本当に必要か](#step-2-アダプタ除去トリミングは本当に必要か)

13. [Step 3: リードのアラインメント or 擬似アラインメント](#step-3-リードのアラインメント-or-擬似アラインメント)

14. [Step 4: 発現定量(gene-level quantification)](#step-4-発現定量gene-level-quantification)

15. [Step 5: マッピング後QCで見るべき指標](#step-5-マッピング後qcで見るべき指標)

16. [Step 6: カウント行列作成時の注意点](#step-6-カウント行列作成時の注意点)

実践ガイド・リファレンス

17. [2026年時点での推奨ツール構成](#2026年時点での推奨ツール構成)

18. [日本発の自動パイプライン:ikra](#日本発の自動パイプラインikra)

19. [実践例:推奨パイプライン(構成B:STAR型)](#実践例推奨パイプライン構成bstar型)

20. [よくある失敗とその回避策](#よくある失敗とその回避策)

21. [一次解析の成果物一覧](#一次解析の成果物一覧)

22. [二次解析へどうつなぐか](#二次解析へどうつなぐか)

23. [まとめ](#まとめ)

24. [参考文献・根拠](#参考文献根拠)


パート2:一次解析の実践


はじめに:一次解析とは何か

📖 このセクションで学ぶこと:RNA-seq解析における一次解析・二次解析・三次解析の区分と、一次解析で具体的に何を行うのかを理解します。

ここからが本記事のメインパートです。パート1で学んだ背景知識をもとに、bulk RNA-seqの一次解析を一つずつ見ていきましょう。

RNA-seq解析の3段階

RNA-seq解析は大きく次の3段階に分けられます。パート1の「RNA-seqの実験から解析までの全体像」でも触れましたが、ここで改めて各段階の役割を整理します。

  • 段階: 一次解析(本記事の対象) / 目的: 生データを遺伝子発現量に変換する / 入力: FASTQファイル / 出力: カウント行列

  • 段階: 二次解析 / 目的: 統計的に発現変動を検出する / 入力: カウント行列 / 出力: DEGリスト、PCAプロット等

  • 段階: 三次解析 / 目的: 生物学的な意味を解釈する / 入力: DEGリスト等 / 出力: パスウェイ、機能アノテーション

一次解析で行うこと

本記事で扱う一次解析では、具体的に以下の6つのステップを実行します。

  FASTQファイル(シーケンサーの出力)
        │
        ▼
  Step 1: FASTQ品質評価(QC)         ← データの状態を把握する
        │
        ▼
  Step 2: アダプタ除去・トリミング     ← 必要な場合のみ実施
        │
        ▼
  Step 3: マッピング / 擬似アラインメント  ← リードをゲノムや転写産物に対応付ける
        │
        ▼
  Step 4: 発現定量                     ← 遺伝子ごとのリード数を数える
        │
        ▼
  Step 5: マッピング後QC              ← マッピング結果の品質を確認する
        │
        ▼
  Step 6: カウント行列作成             ← 二次解析への入力データを整える
        │
        ▼
  遺伝子発現カウント行列(一次解析の成果物)

一次解析の目的を一言で表すと

「実験由来のシーケンスデータを、統計解析可能な遺伝子発現行列へ正確に変換すること」

「正確に」というのがポイントです。単にカウント行列を作れればよいのではなく、参照ゲノムの選択、strandedness設定、アノテーションの整合性など、各ステップの設定が適切であってはじめて、信頼性のある結果が得られます。

パート1の「RNA-seqの実験から解析までの全体像」で述べたとおり、一次解析の品質が二次解析・三次解析の信頼性をすべて決定づけます。ここからの各ステップを、「なぜその設定にするのか」を意識しながら見ていきましょう。

bulk RNA-seq全体像の中での一次解析の位置づけ

📖 このセクションで学ぶこと:一次解析が生み出す具体的なファイルと、それが二次・三次解析でどのように使われるかを理解します。

前のセクションで一次解析の全体像を示しました。ここでは、各段階で実際にどのようなファイルが生まれ、どこへ渡されるかをより具体的に見ていきます。

データの流れとファイル形式

  シーケンサー
    │
    ▼
  BCLファイル → bcl2fastqで変換
    │
    ▼
  ┌─────────────────────────────────────────────┐
  │  FASTQファイル(.fastq.gz)                    │
  │  └ 各リードの塩基配列 + 品質スコア             │
  └─────────────────────────────────────────────┘
    │
    │  ★ 一次解析ここから ★
    ▼
  ┌─────────────────────────────────────────────┐
  │  QCレポート(FastQC HTML, MultiQC HTML)       │
  │  └ 品質の可視化・集約レポート                   │
  └─────────────────────────────────────────────┘
    │
    ▼
  ┌─────────────────────────────────────────────┐
  │  BAMファイル(STAR使用時)                      │
  │  └ ゲノム座標へのアラインメント結果             │
  │  または                                        │
  │  quant.sf(Salmon使用時)                      │
  │  └ 転写産物ごとの定量結果                      │
  └─────────────────────────────────────────────┘
    │
    ▼
  ┌─────────────────────────────────────────────┐
  │  カウント行列(gene_counts.txt / tximport出力) │
  │  └ 行:遺伝子、列:サンプル、値:リード数      │
  │  ★ 一次解析ここまで ★                          │
  └─────────────────────────────────────────────┘
    │
    │  二次解析へ
    ▼
  ┌─────────────────────────────────────────────┐
  │  DESeq2 / edgeR                                │
  │  └ 正規化 → DEG検出 → 結果テーブル            │
  └─────────────────────────────────────────────┘
    │
    │  三次解析へ
    ▼
  ┌─────────────────────────────────────────────┐
  │  パスウェイ解析 / GSEA                          │
  │  └ 生物学的解釈                                │
  └─────────────────────────────────────────────┘

一次解析が「正しくない」とどうなるか

一次解析は「単なる前処理」ではなく、後続の全解析の信頼性を決定づける工程です。ここでのミスは下流で取り返しがつきません。

  • 一次解析のミス: 参照ゲノムの生物種を間違える / 発生する問題: マッピング率が極端に低下し、カウントがほぼゼロになる / 影響の深刻さ: 🔴 致命的

  • 一次解析のミス: strandedness設定を誤る / 発生する問題: sense/antisenseの発現量が入れ替わり、カウントが半減〜崩壊する / 影響の深刻さ: 🔴 致命的

  • 一次解析のミス: genome FASTAとGTFのバージョンが不一致 / 発生する問題: 染色体名不一致でカウントが欠損する / 影響の深刻さ: 🟠 重大

  • 一次解析のミス: 過剰なトリミング / 発生する問題: リードが短くなりすぎてマッピング率が低下する / 影響の深刻さ: 🟡 中程度

このように、一次解析の各ステップには「なぜその設定にするのか」という明確な根拠があります。次のセクション以降で、各ステップの詳細と判断基準を順番に見ていきましょう。

解析開始前に必ず確認すべき実験情報

このセクションで学ぶこと

  • 一次解析に入る前に確認すべき 4つの実験情報 とその理由

  • stranded / unstranded ライブラリの違いと解析への影響

  • single-end / paired-end の選び方と使い分け

  • 参照ゲノム・アノテーションのバージョン管理の重要性

  • シーケンス深度とサンプル数のバランス

一次解析に入る前に、以下の4つの実験情報を必ず整理しましょう。これらを把握していないと、ツールの設定ミス → 結果の信頼性低下 という事態に直結します。

┌─────────────────────────────────────────────────────────┐
│          解析前に確認すべき 4つの実験情報                │
├──────────────┬──────────────────────────────────────────┤
│ 1. ライブラリ │ stranded? unstranded? キット名は?       │
│ 2. リード構成 │ single-end? paired-end? リード長は?     │
│ 3. 参照配列   │ genome build? annotation version?        │
│ 4. 深度目安   │ 何 million reads/sample? 複製数は?      │
└──────────────┴──────────────────────────────────────────┘
         ↓ すべて揃ったら一次解析スタート!

💡 初心者向けTip: これらの情報は、実験担当者やシーケンス受託会社からもらえる「サンプルシート」「納品レポート」に記載されていることがほとんどです。解析を始める前に必ず手元に用意しましょう。


残り:43070文字 / 0画像

1,000

円

1
1

出品者

UserIcon

Theolia

販売実績215
評価4.9

※ココナラスキルマーケットにおける実績です。

プロフィール詳細へ

1,000

円