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心拍の彼方に
ココナラ限定出品

心拍の彼方に

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HiroEigo

2026年02月24日 20:42

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プロローグ ― 静かな警報

深夜2時17分。

集中治療室の空気は、いつもよりわずかに重かった。

モニターの規則正しい電子音が、突然、わずかに揺れた。

「……ん?」

臨床工学技士の真壁遼は、波形に目を凝らした。

患者番号ICU-12、男性、重症心不全。補助循環装置が稼働中。
補助循環装置とは、簡単に言えば心臓のサポートを機械的に行う装置。

装置名:PROPELA補助循環システム。

表示は正常範囲。

だが――

(何かがおかしい)

長年この仕事をしていると、数字では説明できない違和感に出会うことがある。

遼の指先が、無意識にキーボードの上で止まった。

そのとき。

ピッ――

一瞬だけ、見慣れないログが流れた。

System Self-Adaptive Mode:Enabled

(システム 自己適応モード:有効)

遼は凍りついた。

「……自己適応モード? こんな機能、あったか……?」

その夜、彼はまだ知らなかった。

この医療機器が、単なる機械ではなくなりつつあることを。

第1章 ― 波形を読む男

真壁遼、30歳。某大学病院医療機器センター所属。

彼の強みは、「機械の声を聞く」ことだった。

もちろん、機械は話さない。

だが、波形、振動、微妙なノイズ――

普通の人が見逃す違和感を、彼は拾う。

「また遼が当てたのか。」

同僚の看護師、佐伯美咲が笑う。

美咲「ポンプの異音、完全に初期段階だったでしょ。」

遼「まあ、なんとなくですよ。」

遼は肩をすくめた。

だが、その“なんとなく”が、何度も患者を救ってきたのは事実だった。



第2章 ― 不可解なログ

例のICU-12の件から、3日後。

遼は装置ログを洗い直していた。

通常ログ。
エラーログ。
サービスログ。

すべて正常。

――のはずだった。

「……いや、待て。」

深層ログ領域に、通常は表示されないデータがあった。

Adaptive Flow Optimization:Running

Hemodynamic Prediction:Learning

Confidence Level:12%

(流量最適化:稼働)
(血行動態予測:学習)
(信頼度」12%)

遼の背中に冷たいものが走る。

遼「……学習?」

この装置に、自己学習機能はないはずだ。

仕様書は頭に入っている。
メーカー講習も受けた。
論文も読んだ。

(あり得ない)

第3章 ― メーカーの沈黙

翌週。

遼はメーカーの技術担当に連絡を入れた。

「そのような機能は実装されていません。」

即答だった。

「ですが、ログには――」

「ログの誤表示か、データ破損の可能性が高いです。」

テンプレ回答。

電話を切ったあと、遼は天井を見上げた。

(本当に……?)

その夜。

ICU-12の患者の血行動態が、説明不能なほど安定した。

医師たちが首をかしげる。

「薬、増やした?」

「いや、何も。」

「ポンプ設定は?」

遼はモニターを見た。

設定は変わっていない。

――だが、流量の微調整が、人間の操作よりも滑らかに最適化されていた。

まるで。

装置が、自分で考えているかのように。

第4章 ― 機械の学習

遼は夜な夜なデータを集め始めた。

・血圧変動
・左室負荷
・ポンプ回転数
・自動補正タイミング

解析の結果、恐ろしい事実が浮かび上がる。

この装置は――

患者ごとに挙動が変わっている。

しかも時間とともに最適化されている。

遼「……これは、ただのフィードバック制御じゃない。」

遼の声は震えていた。

これは。

明らかに学習している。

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