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[小説]第6話 検問と、残された想い

[小説]第6話 検問と、残された想い

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橘幻竜

2026年02月19日 09:14

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道路は、異様な静けさに包まれていた。

一直線に延びるアスファルトの上に、多くの車が数珠つなぎになって並んでいる。

エンジン音は低く抑えられ、人々は皆、必要以上に口を開かない。

検問。

私は、前方の様子をセンサーで解析しながら告げた。

「検問です」

運転席にいたスコット・ジョンソンは、すぐに理解したように頷く。

「……私が運転を変わろう」

車はゆっくりと路肩に寄せられ、私は静かにシートから降りた。

この瞬間を、私は想定していた。

《犬型形態:解放》

ナノテクノロジーが、私の身体を包み込む。

骨格は縮小され、外装は柔らかな毛並みへと変換されていく。

視界が低くなり、四肢が地面に触れる。

そして――

《嗅覚センサー:起動》

その瞬間、世界が変わった。

匂い。

人間の汗の匂い。車の排気ガスの匂い。アスファルトの匂い。草の匂い。

無数の情報が、一気に流れ込んでくる。

これが、匂いなのか。

データベースには記録されていた。だが、実際に感じるのは、初めてだった。

圧倒的な情報量。

だが、不快ではない。

むしろ――新しい世界が開けたような感覚。

犬。

人間社会において、最も警戒されにくい存在の一つ。

私は、地面に四肢をつき、小さく尻尾を振った。

地面の匂いを嗅ぐ。

土。草。微かに残る動物の足跡。

すべてが、匂いとして認識される。

警官が近づいてくる。

制服。装備。視線。

そして――匂い。

汗と、コーヒーと、タバコの匂い。

私は、その匂いを記憶した。

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