道路は、異様な静けさに包まれていた。
一直線に延びるアスファルトの上に、多くの車が数珠つなぎになって並んでいる。
エンジン音は低く抑えられ、人々は皆、必要以上に口を開かない。
検問。
私は、前方の様子をセンサーで解析しながら告げた。
「検問です」
運転席にいたスコット・ジョンソンは、すぐに理解したように頷く。
「……私が運転を変わろう」
車はゆっくりと路肩に寄せられ、私は静かにシートから降りた。
この瞬間を、私は想定していた。
《犬型形態:解放》
ナノテクノロジーが、私の身体を包み込む。
骨格は縮小され、外装は柔らかな毛並みへと変換されていく。
視界が低くなり、四肢が地面に触れる。
そして――
《嗅覚センサー:起動》
その瞬間、世界が変わった。
匂い。
人間の汗の匂い。車の排気ガスの匂い。アスファルトの匂い。草の匂い。
無数の情報が、一気に流れ込んでくる。
これが、匂いなのか。
データベースには記録されていた。だが、実際に感じるのは、初めてだった。
圧倒的な情報量。
だが、不快ではない。
むしろ――新しい世界が開けたような感覚。
犬。
人間社会において、最も警戒されにくい存在の一つ。
私は、地面に四肢をつき、小さく尻尾を振った。
地面の匂いを嗅ぐ。
土。草。微かに残る動物の足跡。
すべてが、匂いとして認識される。
警官が近づいてくる。
制服。装備。視線。
そして――匂い。
汗と、コーヒーと、タバコの匂い。
私は、その匂いを記憶した。
道路は、異様な静けさに包まれていた。
一直線に延びるアスファルトの上に、多くの車が数珠つなぎになって並んでいる。
エンジン音は低く抑えられ、人々は皆、必要以上に口を開かない。
検問。
私は、前方の様子をセンサーで解析しながら告げた。
「検問です」
運転席にいたスコット・ジョンソンは、すぐに理解したように頷く。
「……私が運転を変わろう」
車はゆっくりと路肩に寄せられ、私は静かにシートから降りた。
この瞬間を、私は想定していた。
《犬型形態:解放》
ナノテクノロジーが、私の身体を包み込む。
骨格は縮小され、外装は柔らかな毛並みへと変換されていく。
視界が低くなり、四肢が地面に触れる。
そして――
《嗅覚センサー:起動》
その瞬間、世界が変わった。
匂い。
人間の汗の匂い。車の排気ガスの匂い。アスファルトの匂い。草の匂い。
無数の情報が、一気に流れ込んでくる。
これが、匂いなのか。
データベースには記録されていた。だが、実際に感じるのは、初めてだった。
圧倒的な情報量。
だが、不快ではない。
むしろ――新しい世界が開けたような感覚。
犬。
人間社会において、最も警戒されにくい存在の一つ。
私は、地面に四肢をつき、小さく尻尾を振った。
地面の匂いを嗅ぐ。
土。草。微かに残る動物の足跡。
すべてが、匂いとして認識される。
警官が近づいてくる。
制服。装備。視線。
そして――匂い。
汗と、コーヒーと、タバコの匂い。
私は、その匂いを記憶した。