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ごりっち|親子の心守る20年の現場専門家

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君に渡す、生き方

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ごりっち|親子の心守る20年の現場専門家

2026年02月18日 06:08

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プロローグ


――さくらへ

さくら。
この話は、君に渡すために書いている。

でも最初から、
「これは君のための物語だ」とは言わないことにした。

理由は簡単だ。
君にはまず、一人の父親と、一人の男の子の話として読んでほしいからだ。

この物語に出てくる「パパ」は、
君のおじいちゃんだ。

そして「はじめ」は、
……昔の僕だ。

君がもう少し大きくなって、
人を好きになることや、
誰かを守ることの意味が分かり始めた頃、
もう一度、最初から読み返してほしい。

きっとそのとき、
同じ文章なのに、
まったく違うものに見えるはずだから。

これは、
僕が父から受け取った「生き方」の話だ。

そして、
いつか君に手渡したいと思っている話でもある。

第1章 達也とはじめ


「余命半年かと思われます」

医師の言葉が静かな診察室に響く。


今は2026年の6月。半年後といえば、12月……はじめと一緒に年を越すことさえ、難しいということか。

はじめの顔が脳裏に浮かんだ。元気いっぱいに駆け回り、パパ、パパと無邪気に笑う、あの笑顔。

(どうすればいい……?)

返事ができないまま、医師の説明は続いていた。

頭の中が真っ白になる。

つい半年前までは、そんなこと考えたこともなかった。

はじめの成長を、これからもずっと見ていけると思っていたのに——。



半年前——2025年12月

「パパ、おはよう!」

はじめの元気な声で目を覚ました。

「うぅ……寒い……」

「もう朝だよ! 起きて!」

達也が布団にくるまると、はじめは容赦なく引っ張る。

「お兄さんだから、朝ごはん手伝うの!」

「……わかった、起きるよ」

キッチンへ行くと、はじめが冷蔵庫から卵を取り出していた。

「今日の朝ごはんは?」

「目玉焼き! パパの好きな半熟にする!」

「お、頼もしいな。でも火は危ないから、パパと一緒にな?」

「うん!」

「パパ、これでいい?」

はじめがフライパンを覗き込む。

「お、いい感じだな。でも、もうちょっと焼いた方がパパ好みかも?」

「じゃあ、あと10秒!」

そんなやりとりをしながら朝食を作り、二人で食卓につく。

「はじめ、小学生になったら何がしたい?」

「うーん、いっぱい遊びたい!」

「遊びかぁ。でも勉強もしないとだぞ?」

「わかってるよ!」

はじめは唐揚げを頬張りながら元気に答えた。

はじめは最近、小学生になる準備として、いろんなことに挑戦したがるようになった。

「ねえ、パパ。小学生になったら、もっとお兄さんになれる?」

「もちろん。ランドセルも背負うし、勉強もするしな」

「楽しみ!」

はじめは屈託のない笑顔を見せる。

(この子がどんな小学生になるのか、楽しみだな)

達也は、はじめの未来に思いを馳せた。


達也はシングルファーザーだ。

妻の美春がいなくなってから、男手ひとつで息子を育ててきた。最初は不安で仕方なかったが、はじめはそんな不安を吹き飛ばすほど明るく、元気に育ってくれている。

現在達也は在宅のWEBデザイナーをしている。

もともとは広告代理店で働いていたが、はじめが生まれたのをきっかけに転職した。長時間労働の職場では育児との両立が難しく、思い切って独学でデザインを学び、フリーランスとして独立した。

最初は仕事を取るのに苦労したが、優しい雰囲気のデザインが評判となり、今では安定した収入を得られるようになった。

朝食の片付けを済ませると、達也は仕事の準備を始めた。

「今日はどんなお仕事?」

「新しいカフェのホームページを作るんだ。可愛くて、優しい雰囲気にしてほしいって言われてる」

「パパの作るやつ、みんな優しい感じだもんね!」

「お、わかってるじゃん」

はじめは、達也の作るデザインを気に入ってくれている。はじめの笑顔が、達也にとって何よりの励みだった。

「パパのお仕事、ぼくもやってみたいな!」

「いいね! はじめが大きくなったら、一緒にやるか?」

「うん!」

はじめは嬉しそうに頷いた。

(いつか、一緒に仕事する日が来るかもしれないな)

そう思うと、未来が楽しみになった。


週末、達也とはじめは近くの公園へ出かけた。

「パパ、サッカーしよう!」

「おっしゃ、負けないぞ!」

二人はボールを追いかけながら笑い合った。

「パパ、もっと本気でやっていいよ!」

「いや、もう十分本気だけどな……」

「じゃあ、もっと頑張って!」

はじめは無邪気に笑う。

こうして一緒に過ごせる時間が、何よりも楽しかった。


夜、はじめが寝静まったあと、達也はふとスマホを取り出した。

画面には、妻の美春の写真が映っている。

「お前がいなくなって、もう6年か……」

美春が突然いなくなったあの日から、達也はシングルファーザーとして生きてきた。


はじめも小さいながらに、それを受け入れているようだった。

「パパ、ママってどんな人だった?」

と聞かれたことがある。そのとき達也は、

「ママは優しくて、明るくて、お前のことをとても愛してたよ。」

とだけ答えた。

それ以上、話すことはできなかった。

(はじめが大きくなったら、もっと話してやらないとな)

そう思いながら、達也はスマホの画面をそっと閉じた。


年末が近づき、街はイルミネーションで彩られていた。

はじめはクリスマスを心待ちにしている。

「サンタさん、来てくれるかな?」

「もちろん。はじめがいい子にしてたらな」

「えへへ、じゃあお手伝いもっとする!」

はじめの成長が嬉しかった。

(来年は小学生か……)

入学式、運動会、夏休みの旅行——。

(これからも、はじめと一緒にたくさんの思い出を作っていくんだろうな)

未来は明るい。

達也は、はじめの手を握りながら、笑顔で歩いた。

 
第2章 幼稚園の日常と卒園親子遠足

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