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月影の岸辺──触れられないものへの愛
ココナラ限定出品

月影の岸辺──触れられないものへの愛

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yukinechiba12

2025年09月21日 15:44

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東京の喧騒を離れ、蓮は電車を乗り継ぎ、バスを降り、さらに歩いた。

目的地は地図にも載っていない、誰も訪れない海辺。

彼がそこへ向かう理由を、誰にも話したことはなかった。

いや、話せる相手はもういない。

空には満月が浮かんでいた。

雲ひとつない夜空に、銀色の光が静かに降り注ぐ。

その光は海面に反射し、波の揺れとともに、まるで異世界への入り口のようにきらめいていた。

蓮は、岸辺に立ち尽くしていた。

ポケットの中で手を握りしめ、何も言わず、ただ海を見つめていた。

彼の瞳は遠くを見ていた──いや、遠い過去を見ていたのかもしれない。

「澪……」

その名を呼ぶ声は、波に溶けて夜の静寂に吸い込まれていく。

それは、もうこの世にはいない恋人の名だった。

彼女がいなくなってから、蓮は何度もこの海辺に来た。

けれど、何も起こらなかった。

ただ波が打ち寄せ、風が吹き抜けるだけ。

それでも彼は、満月の夜だけはここに立つことをやめなかった。

そして今夜──その奇跡は起きた。

海の中から、光が立ち上がった。

それは人の形をしていた。

半透明に輝く女性──澪だった。

生前と変わらぬ、あの優しい微笑みを浮かべて。

蓮は言葉を失い、ただその姿を見つめた。

胸の奥で何かが軋むように痛んだ。

彼女がそこにいることが、現実なのか幻想なのか、判断できなかった。

けれど、心は確かに震えていた。

彼は一歩、また一歩と近づく。

手を伸ばす。

その指先は、彼女に触れることなく空を切った。

冷たい夜風が、彼の手を包む。

それでも澪は、静かに彼の頬に手を添えた。

冷たくも、どこか温かい幻の感触。

蓮は目を閉じた。

その感触を、記憶に刻みつけるように。

「どうして……今、現れたんだ」

蓮の問いに、澪は静かに答えた。

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