『新平治物語』
第一章 信西入道最期
平治元年十二月十三日(1160年1月23日)
1
此処は京の大内裏。三十町の大きさ。天気は快晴で月夜が美しい。源氏と平氏の合戦が行われている。所々で武者が刃を交える音が響く。死体がバタバタ積み重なる。
庭も勾欄も源氏と平氏の武者の死骸で埋め尽くされている。逃げ惑う女官や殿上人たち。激戦の中を夫婦が獅子奮迅の働きで平氏の武者を押している。
六尺二寸の偉丈夫で若武者たる源義平が「帝と院には手を出すな」と悪罵しながら指揮を執っている。勇猛果敢な姿は東国で悪源太と称された。慈悲深く知恵鋭く正義感が強い。
激怒した時は不動の化身と見間違うほどの暴れぶり。赤糸威の鎧を纏い齢は十九になる。義平は人が羨む程の美男子たる顔立ちだ。もう一人は義平の妻で実加。
義平以上の真っ赤な大鎧を纏っている。東国の源氏の名族たる新田義重の娘で歳は十九になる。背丈は五尺五寸までに届く。東国の楊貴妃と称されたほど。
二人は平氏の武者を脇差で何人も蹴散らす。義平と実加は、将門を退治した下総にある成田山の新勝寺の不動明王を深く信仰している。今まさに不動明王が恰も暴れたが如し。
大内裏の奥に義平と実加は殺到していく。奥に入れば入る程、大内裏の荒れが酷くなる。
義平と実加は「信西入道よ。どこにおる」と叫んで平氏の武者を脇差でなぎ倒す。義平はどしどしと清涼殿に近づいた。信西入道は当時の実力者でもとは藤原信西。
官職は少納言。歳は五十四になる。厳つい顔をして頭の良さは切れ者と名高い。
2
「悪源太だな? 女武者も討ち取ってくれん。噂に聞く不動の化身と東国の楊貴妃か?」
四十路の西国風の白と黒と黄の大鎧を纏った平氏の武者が現れた。それぞれ頬、顎、額に傷がある。西国訛で喋る。平氏の家人だとはっきりとわかる。背丈はみな五尺七寸。
「討ち取ってくれん。帝(二条天皇)と院(後白河院)に歯向かう輩」と襲い懸ってきた。
『新平治物語』
第一章 信西入道最期
平治元年十二月十三日(1160年1月23日)
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此処は京の大内裏。三十町の大きさ。天気は快晴で月夜が美しい。源氏と平氏の合戦が行われている。所々で武者が刃を交える音が響く。死体がバタバタ積み重なる。
庭も勾欄も源氏と平氏の武者の死骸で埋め尽くされている。逃げ惑う女官や殿上人たち。激戦の中を夫婦が獅子奮迅の働きで平氏の武者を押している。
六尺二寸の偉丈夫で若武者たる源義平が「帝と院には手を出すな」と悪罵しながら指揮を執っている。勇猛果敢な姿は東国で悪源太と称された。慈悲深く知恵鋭く正義感が強い。
激怒した時は不動の化身と見間違うほどの暴れぶり。赤糸威の鎧を纏い齢は十九になる。義平は人が羨む程の美男子たる顔立ちだ。もう一人は義平の妻で実加。
義平以上の真っ赤な大鎧を纏っている。東国の源氏の名族たる新田義重の娘で歳は十九になる。背丈は五尺五寸までに届く。東国の楊貴妃と称されたほど。
二人は平氏の武者を脇差で何人も蹴散らす。義平と実加は、将門を退治した下総にある成田山の新勝寺の不動明王を深く信仰している。今まさに不動明王が恰も暴れたが如し。
大内裏の奥に義平と実加は殺到していく。奥に入れば入る程、大内裏の荒れが酷くなる。
義平と実加は「信西入道よ。どこにおる」と叫んで平氏の武者を脇差でなぎ倒す。義平はどしどしと清涼殿に近づいた。信西入道は当時の実力者でもとは藤原信西。
官職は少納言。歳は五十四になる。厳つい顔をして頭の良さは切れ者と名高い。
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「悪源太だな? 女武者も討ち取ってくれん。噂に聞く不動の化身と東国の楊貴妃か?」
四十路の西国風の白と黒と黄の大鎧を纏った平氏の武者が現れた。それぞれ頬、顎、額に傷がある。西国訛で喋る。平氏の家人だとはっきりとわかる。背丈はみな五尺七寸。
「討ち取ってくれん。帝(二条天皇)と院(後白河院)に歯向かう輩」と襲い懸ってきた。