ジャンル:現代×サイコホラー×ミステリー
廃校の保存施設で記録を管理する警備隊長・風間。異動してきたばかりの彼は、前任者の残した「警備日報」の404号に違和感を覚える。そこには「この校舎には“数”が合わない場所がある」と書かれていた。やがて風間の周囲でも、人数が合わない奇妙な現象が起こりはじめる――。
「声なき声に、耳を澄ませろ」
― 無視された過去、記録から消された真実は、必ず誰かの心の底で叫び続けている。
人間の「記憶」と「忘却」、そして現代社会における「無関心」の恐怖物語
廃校の保存施設で記録を管理する警備隊長・風間。異動してきたばかりの彼は、前任者の残した「警備日報」の404号に違和感を覚える。そこには「この校舎には“数”が合わない場所がある」と書かれていた。やがて風間の周囲でも、人数が合わない奇妙な現象が起こりはじめる――。
「声なき声に、耳を澄ませろ」
― 無視された過去、記録から消された真実は、必ず誰かの心の底で叫び続けている。
人間の「記憶」と「忘却」、そして現代社会における「無関心」の恐怖物語
主要登場人物
● 有馬 崇(たかし)
年齢:45歳
性別:男性
職業:警備会社・統括警備隊長
性格:冷静沈着だが、過去にこだわりやすい執着気質
役割・関係性:物語の主人公。10年前の「未解決事件」の現場責任者でもあり、心に傷を抱える。真相を追う過程で次第に現実と幻覚の境界が揺らぐ。
● 村上 奏(かなで)
年齢:27歳
性別:女性
職業:若手警備員(夜勤担当)
性格:明るく論理的。幽霊などは信じない現実主義者
役割・関係性:主人公・有馬の部下。ある夜の「通報現場」にて奇妙な体験をし、恐怖と好奇心の狭間で揺れながらも事件に関わっていく。
● 葉山 稔(みのる)
年齢:60歳
性別:男性
職業:元施設管理人(退職後は沈黙していた)
性格:無口で頑固。何かを強く恐れている
役割・関係性:かつての未解決事件の関係者。有馬に接触し、「あのボタンがまた鳴ってるのか」とつぶやく。キーパーソン的存在。
● 三宅 仁
年齢:34歳
性別:男性
職業:センター勤務のオペレーター
性格:皮肉屋で神経質。
役割・関係性:最初に「見えない通報」の存在に気づく。だが徐々に不安定になり、異常な行動を起こし始める。
● 相原 美樹
年齢:当時16歳(10年前に行方不明)
性別:女性
職業:女子高生(当時)
性格:写真や記録の中にのみ登場。
役割・関係性:10年前、今と同じ場所で忽然と消えた少女。彼女の「助けて」という通報が、今もどこかで鳴っている。
各章タイトル
第1章:通報記録404
第2章:封鎖フロア
第3章:あの音を聞いた
第4章:沈黙の証言者
第5章:押されたままのボタン
第6章:記録なき叫び
最終章:見えない通報の終わりに
第1章:通報記録404
第一節:深夜2時の警報
クロスタワー防災警備センター内、午前2時を回った。夜勤担当の警備員・村上奏は、無人の監視モニター群の中に、ひとつだけ赤いランプが点滅しているのに気づいた。
「……旧倉庫から? このフロア、使用停止じゃなかった?」
確認のために端末を操作する。表示された通報ログには、確かに『第4区・旧サービス階段脇』と書かれている。しかしその場所は数年前から封鎖され、定期巡回の対象からも外れていたはずだ。
村上は咄嗟に無線で呼びかけた。「センター、こちら村上。旧サービス階段脇に異常通報あり。現場確認に向かいます」
『……了解。慎重に』
オペレーターの三宅が短く応答したが、その声にわずかに戸惑いの気配が滲んでいた。
村上は手元の懐中電灯を確認しながら、エレベーターで地下へ降りていく。普段は足を踏み入れることのない静謐な空間。長い廊下にひとりきりの気配が、鼓膜に自分の呼吸音を大きく響かせた。
旧サービス階段の脇──そこには確かに、かつて非常通報ボタンが設置されていた鉄製の盤面があった。しかし、今は電源も切られ、押しても何の反応も返ってこないはずだ。
「……点いてない、な」
赤い点滅はすでに消えていた。現場は静まり返っており、床にも壁にも異常は見当たらない。
そのとき、背後から──気配がした。
カツン……カツン……
足音。だが、振り返っても誰もいない。
「おい、誰かいるのか?」
返事はない。だが、足音は確かに自分の背後にいた。あの一瞬だけ、風が動いたように感じた。
村上は拳を握りしめたまま、ゆっくりと後ずさるようにしてその場を離れた。
そしてセンターに戻ると、モニターの記録を確認しようと三宅に声をかけた。
「三宅さん、あの通報……録画されてる?」
三宅は険しい表情でキーボードを叩きながら首を振る。
「ない。いや、“ない”っていうか……ログはあるのに映像が空白なんだよ。エラーじゃない。最初から、そこには何も写ってなかったような感じでな……」
「ログは誰かが押したって示してる。でも、カメラには写ってない……」
村上は自分の腕に浮かぶ鳥肌に気づきながら、深く息を吐いた。
「三宅さん、こんなこと前にもありました?」
「……ああ。実はな、去年の今頃、全く同じ場所で……しかも“同じ日”に、同じような通報があったんだよ」
「それ、なんで記録に残ってないんです?」
三宅は無言のまま、ふっと笑ってから、こう言った。
「たぶん、消されたんだろ。誰かが、“何か”を見なかったことにしようとしてさ」
「……何を?」
三宅は村上をまっすぐ見た。
「まだ、知らない方がいい。だがな、あの非常ボタン……本当に“誰か”が押してるんだ」
第二節:無音のログ
その夜、村上は妙に寝つけなかった。ベッドに横になっても、旧フロアで感じた“気配”が頭を離れない。
朝方、目を閉じたまま耳を澄ますと、どこからともなくあの足音が──カツン、カツンと──近づいてきているようにさえ感じられた。
翌夜、村上は出勤するなり三宅のもとへ駆け寄った。
「三宅さん、あのログ、もう一度確認できますか? 音声データ、残ってましたよね?」
「おう。……ただし、聞きたくないなら今のうちに引き返せ」
「もう、気になってしょうがないんですよ。何か、おかしいって身体が言ってる」
三宅は端末を操作し、ファイル名《LOG404_A》を呼び出した。
「再生開始。こいつが“通報の直前30秒”だ」
スピーカーからは、ただのノイズが流れ出した。
ザ……ガ……キ……チ、……ザア……
金属が擦れるような耳障りな音が続き、その中に、何かが混ざっている。
「……待って、それ……人の声、ですよね?」
村上が言った。
三宅は頷き、モニターの横に置かれた外部ソフトを立ち上げる。
「この解析ソフトは“音の下層構造”を可視化できる。ノイズの奥にある周波数域を抽出する」
バーン、とソフトがログを走査し、音声波形が浮かび上がった。
そして再生された──
『……たすけて……』
少女のようなか細い声。それは間違いなく、人間の声だった。
村上は震えた指で、音量を少し下げながら呟いた。
「こんな……まさか……こんなはずない」
三宅もまた表情をこわばらせていた。
「俺たちは、何かを“見逃してる”んじゃない。……最初から、“見ないようにされてる”んだよ」
「どういう意味ですか?」
「この通報、最初から“ログにしか残らない構造”になってる可能性がある。誰かが記録だけを残して、映像と音声は“意図的に”外されたんだ」
「でも、なんのために……?」
三宅は深く息を吸い、答えた。
「それを知ってるのは、おそらく──あのボタンを“本当に押した誰か”だよ」
ジャンル:現代×サイコホラー×ミステリー
廃校の保存施設で記録を管理する警備隊長・風間。異動してきたばかりの彼は、前任者の残した「警備日報」の404号に違和感を覚える。そこには「この校舎には“数”が合わない場所がある」と書かれていた。やがて風間の周囲でも、人数が合わない奇妙な現象が起こりはじめる――。
「声なき声に、耳を澄ませろ」
― 無視された過去、記録から消された真実は、必ず誰かの心の底で叫び続けている。
人間の「記憶」と「忘却」、そして現代社会における「無関心」の恐怖物語
廃校の保存施設で記録を管理する警備隊長・風間。異動してきたばかりの彼は、前任者の残した「警備日報」の404号に違和感を覚える。そこには「この校舎には“数”が合わない場所がある」と書かれていた。やがて風間の周囲でも、人数が合わない奇妙な現象が起こりはじめる――。
「声なき声に、耳を澄ませろ」
― 無視された過去、記録から消された真実は、必ず誰かの心の底で叫び続けている。
人間の「記憶」と「忘却」、そして現代社会における「無関心」の恐怖物語
主要登場人物
● 有馬 崇(たかし)
年齢:45歳
性別:男性
職業:警備会社・統括警備隊長
性格:冷静沈着だが、過去にこだわりやすい執着気質
役割・関係性:物語の主人公。10年前の「未解決事件」の現場責任者でもあり、心に傷を抱える。真相を追う過程で次第に現実と幻覚の境界が揺らぐ。
● 村上 奏(かなで)
年齢:27歳
性別:女性
職業:若手警備員(夜勤担当)
性格:明るく論理的。幽霊などは信じない現実主義者
役割・関係性:主人公・有馬の部下。ある夜の「通報現場」にて奇妙な体験をし、恐怖と好奇心の狭間で揺れながらも事件に関わっていく。
● 葉山 稔(みのる)
年齢:60歳
性別:男性
職業:元施設管理人(退職後は沈黙していた)
性格:無口で頑固。何かを強く恐れている
役割・関係性:かつての未解決事件の関係者。有馬に接触し、「あのボタンがまた鳴ってるのか」とつぶやく。キーパーソン的存在。
● 三宅 仁
年齢:34歳
性別:男性
職業:センター勤務のオペレーター
性格:皮肉屋で神経質。
役割・関係性:最初に「見えない通報」の存在に気づく。だが徐々に不安定になり、異常な行動を起こし始める。
● 相原 美樹
年齢:当時16歳(10年前に行方不明)
性別:女性
職業:女子高生(当時)
性格:写真や記録の中にのみ登場。
役割・関係性:10年前、今と同じ場所で忽然と消えた少女。彼女の「助けて」という通報が、今もどこかで鳴っている。
各章タイトル
第1章:通報記録404
第2章:封鎖フロア
第3章:あの音を聞いた
第4章:沈黙の証言者
第5章:押されたままのボタン
第6章:記録なき叫び
最終章:見えない通報の終わりに
第1章:通報記録404
第一節:深夜2時の警報
クロスタワー防災警備センター内、午前2時を回った。夜勤担当の警備員・村上奏は、無人の監視モニター群の中に、ひとつだけ赤いランプが点滅しているのに気づいた。
「……旧倉庫から? このフロア、使用停止じゃなかった?」
確認のために端末を操作する。表示された通報ログには、確かに『第4区・旧サービス階段脇』と書かれている。しかしその場所は数年前から封鎖され、定期巡回の対象からも外れていたはずだ。
村上は咄嗟に無線で呼びかけた。「センター、こちら村上。旧サービス階段脇に異常通報あり。現場確認に向かいます」
『……了解。慎重に』
オペレーターの三宅が短く応答したが、その声にわずかに戸惑いの気配が滲んでいた。
村上は手元の懐中電灯を確認しながら、エレベーターで地下へ降りていく。普段は足を踏み入れることのない静謐な空間。長い廊下にひとりきりの気配が、鼓膜に自分の呼吸音を大きく響かせた。
旧サービス階段の脇──そこには確かに、かつて非常通報ボタンが設置されていた鉄製の盤面があった。しかし、今は電源も切られ、押しても何の反応も返ってこないはずだ。
「……点いてない、な」
赤い点滅はすでに消えていた。現場は静まり返っており、床にも壁にも異常は見当たらない。
そのとき、背後から──気配がした。
カツン……カツン……
足音。だが、振り返っても誰もいない。
「おい、誰かいるのか?」
返事はない。だが、足音は確かに自分の背後にいた。あの一瞬だけ、風が動いたように感じた。
村上は拳を握りしめたまま、ゆっくりと後ずさるようにしてその場を離れた。
そしてセンターに戻ると、モニターの記録を確認しようと三宅に声をかけた。
「三宅さん、あの通報……録画されてる?」
三宅は険しい表情でキーボードを叩きながら首を振る。
「ない。いや、“ない”っていうか……ログはあるのに映像が空白なんだよ。エラーじゃない。最初から、そこには何も写ってなかったような感じでな……」
「ログは誰かが押したって示してる。でも、カメラには写ってない……」
村上は自分の腕に浮かぶ鳥肌に気づきながら、深く息を吐いた。
「三宅さん、こんなこと前にもありました?」
「……ああ。実はな、去年の今頃、全く同じ場所で……しかも“同じ日”に、同じような通報があったんだよ」
「それ、なんで記録に残ってないんです?」
三宅は無言のまま、ふっと笑ってから、こう言った。
「たぶん、消されたんだろ。誰かが、“何か”を見なかったことにしようとしてさ」
「……何を?」
三宅は村上をまっすぐ見た。
「まだ、知らない方がいい。だがな、あの非常ボタン……本当に“誰か”が押してるんだ」
第二節:無音のログ
その夜、村上は妙に寝つけなかった。ベッドに横になっても、旧フロアで感じた“気配”が頭を離れない。
朝方、目を閉じたまま耳を澄ますと、どこからともなくあの足音が──カツン、カツンと──近づいてきているようにさえ感じられた。
翌夜、村上は出勤するなり三宅のもとへ駆け寄った。
「三宅さん、あのログ、もう一度確認できますか? 音声データ、残ってましたよね?」
「おう。……ただし、聞きたくないなら今のうちに引き返せ」
「もう、気になってしょうがないんですよ。何か、おかしいって身体が言ってる」
三宅は端末を操作し、ファイル名《LOG404_A》を呼び出した。
「再生開始。こいつが“通報の直前30秒”だ」
スピーカーからは、ただのノイズが流れ出した。
ザ……ガ……キ……チ、……ザア……
金属が擦れるような耳障りな音が続き、その中に、何かが混ざっている。
「……待って、それ……人の声、ですよね?」
村上が言った。
三宅は頷き、モニターの横に置かれた外部ソフトを立ち上げる。
「この解析ソフトは“音の下層構造”を可視化できる。ノイズの奥にある周波数域を抽出する」
バーン、とソフトがログを走査し、音声波形が浮かび上がった。
そして再生された──
『……たすけて……』
少女のようなか細い声。それは間違いなく、人間の声だった。
村上は震えた指で、音量を少し下げながら呟いた。
「こんな……まさか……こんなはずない」
三宅もまた表情をこわばらせていた。
「俺たちは、何かを“見逃してる”んじゃない。……最初から、“見ないようにされてる”んだよ」
「どういう意味ですか?」
「この通報、最初から“ログにしか残らない構造”になってる可能性がある。誰かが記録だけを残して、映像と音声は“意図的に”外されたんだ」
「でも、なんのために……?」
三宅は深く息を吸い、答えた。
「それを知ってるのは、おそらく──あのボタンを“本当に押した誰か”だよ」