はじめに|「下肢」だけ見ていませんか?
「この子、立てるのに歩き出せないんです。」
そんな場面に出会ったことはありませんか?
特にGMFCSレベルIIやIIIの子どもたちでよく見られる、「立位は安定しているけれど、一歩目がなかなか出ない」ケース。多くの療法士が「筋力が足りないのかな?」と考えるかもしれません。
けれど今回紹介するBalzerらの論文(2018)は、それに“待った”をかけます。
歩行能力に最も強く関係していたのは、なんと下肢の筋力や選択的運動制御ではなく、体幹機能でした。
✅ TCMSスコア(体幹機能の評価スケール)が12点下がると、Timed Up & Go Testのタイムは6.6秒も遅くなる
✅ 下肢の筋力や痙縮以上に、体幹の機能が歩行を左右する
この研究結果を出発点に、今回は「なぜ体幹がそんなに大切なのか?」「どんなアプローチが有効なのか?」をわかりやすく解説します。
① 論文の概要と主な結果
📘 Balzer J, et al. (2018)
Influence of trunk control and lower extremity impairments on gait capacity in children with cerebral palsy
Disability and Rehabilitation, 40(26):3164–3170
DOI: 10.1080/09638288.2017.1380719
📝研究のポイント
この研究では、脳性麻痺(CP)の中でも痙直型と呼ばれるタイプの子ども52名を対象に、
「歩行能力にどんな要素が関係しているのか?」を調べました。
対象の子どもたちは、GMFCSレベルI〜IV(軽度〜重度)まで幅広く含まれています。
📝評価に使われた主な指標
体幹機能:Trunk Control Measurement Scale(TCMS):座った状態などで、体を安定させたり、動かしたりする力を見る評価です(図1)。
下肢の筋力:Manual Muscle Testing(MMT)
選択的運動制御:Selective Control Assessment of the Lower Extremity(SCALE):下肢の一部を“単独で”動かす力があるかを見る評価です。
痙縮:Modified Ashworth Scale(MAS)
歩行能力:Modified Timed Up and Go test(mTUG):椅子から立ち、3m先を回って戻ってくるまでの時間を測る歩行テストです。
図1 体幹機能:Trunk Control Measurement Scale(TCMS)で用いられる運動課題
このような評価をもとに、「どの能力が歩く力に一番関係しているか」を統計的に調べました。
📝結果のまとめ
1. 評価項目同士の関係性
まず、評価項目どうしの関連を見たところ、
筋力(MMT)は、歩行能力(mTUG)や体幹機能(TCMS)と一番強く関係していました。
その次に、選択的運動制御(SCALE)も歩行能力と強く関係。
痙縮(MAS)は、他のどの評価と比べても関係性が弱いという結果でした。
👉 結論:筋力と選択的運動制御は歩行と関係が強いけれど、痙縮はそれほど影響していないことがわかりました。
2. 歩行能力(mTUG)と各評価の関係性
歩行能力に一番強く関係していたのは…
体幹機能(TCMS) → 歩行の54%を説明
選択的運動制御(SCALE) → 43%
筋力(MMT) → 40%
痙縮(MAS) → 31%
👉 体幹機能が最も強く歩行能力に関係していたことがわかりました。
3. 最後に残った“最重要な予測因子”とは?
複数の評価をまとめて分析する「重回帰分析」では、
最終的に体幹機能(TCMS)だけが“歩行能力の有意な予測因子”として残りました。
実際には、TCMSの点数が12点低くなると、mTUGが6.6秒遅くなるという結果も出ています。
② 論文の背景|なぜ体幹が歩行に大切なのか?
はじめに|「下肢」だけ見ていませんか?
「この子、立てるのに歩き出せないんです。」
そんな場面に出会ったことはありませんか?
特にGMFCSレベルIIやIIIの子どもたちでよく見られる、「立位は安定しているけれど、一歩目がなかなか出ない」ケース。多くの療法士が「筋力が足りないのかな?」と考えるかもしれません。
けれど今回紹介するBalzerらの論文(2018)は、それに“待った”をかけます。
歩行能力に最も強く関係していたのは、なんと下肢の筋力や選択的運動制御ではなく、体幹機能でした。
✅ TCMSスコア(体幹機能の評価スケール)が12点下がると、Timed Up & Go Testのタイムは6.6秒も遅くなる
✅ 下肢の筋力や痙縮以上に、体幹の機能が歩行を左右する
この研究結果を出発点に、今回は「なぜ体幹がそんなに大切なのか?」「どんなアプローチが有効なのか?」をわかりやすく解説します。
① 論文の概要と主な結果
📘 Balzer J, et al. (2018)
Influence of trunk control and lower extremity impairments on gait capacity in children with cerebral palsy
Disability and Rehabilitation, 40(26):3164–3170
DOI: 10.1080/09638288.2017.1380719
📝研究のポイント
この研究では、脳性麻痺(CP)の中でも痙直型と呼ばれるタイプの子ども52名を対象に、
「歩行能力にどんな要素が関係しているのか?」を調べました。
対象の子どもたちは、GMFCSレベルI〜IV(軽度〜重度)まで幅広く含まれています。
📝評価に使われた主な指標
体幹機能:Trunk Control Measurement Scale(TCMS):座った状態などで、体を安定させたり、動かしたりする力を見る評価です(図1)。
下肢の筋力:Manual Muscle Testing(MMT)
選択的運動制御:Selective Control Assessment of the Lower Extremity(SCALE):下肢の一部を“単独で”動かす力があるかを見る評価です。
痙縮:Modified Ashworth Scale(MAS)
歩行能力:Modified Timed Up and Go test(mTUG):椅子から立ち、3m先を回って戻ってくるまでの時間を測る歩行テストです。
図1 体幹機能:Trunk Control Measurement Scale(TCMS)で用いられる運動課題
このような評価をもとに、「どの能力が歩く力に一番関係しているか」を統計的に調べました。
📝結果のまとめ
1. 評価項目同士の関係性
まず、評価項目どうしの関連を見たところ、
筋力(MMT)は、歩行能力(mTUG)や体幹機能(TCMS)と一番強く関係していました。
その次に、選択的運動制御(SCALE)も歩行能力と強く関係。
痙縮(MAS)は、他のどの評価と比べても関係性が弱いという結果でした。
👉 結論:筋力と選択的運動制御は歩行と関係が強いけれど、痙縮はそれほど影響していないことがわかりました。
2. 歩行能力(mTUG)と各評価の関係性
歩行能力に一番強く関係していたのは…
体幹機能(TCMS) → 歩行の54%を説明
選択的運動制御(SCALE) → 43%
筋力(MMT) → 40%
痙縮(MAS) → 31%
👉 体幹機能が最も強く歩行能力に関係していたことがわかりました。
3. 最後に残った“最重要な予測因子”とは?
複数の評価をまとめて分析する「重回帰分析」では、
最終的に体幹機能(TCMS)だけが“歩行能力の有意な予測因子”として残りました。
回帰係数 β = -0.624(p < 0.001)
→ これは、体幹機能が低くなるほど、歩行にかかる時間が増える(歩行が遅くなる)ことを示します。
実際には、TCMSの点数が12点低くなると、mTUGが6.6秒遅くなるという結果も出ています。
② 論文の背景|なぜ体幹が歩行に大切なのか?