※数十万円~数百万円という高額な報酬と引き換えに、引きこもりのご家族を強引に自宅から引っ張り出し、強制的に施設入所させる「引き出し屋」というものが存在しています。ご家族の不安や心配につけこんだ悪質な商売であり、重大な人権侵害行為です。
適切な支援がなければ引き出された本人も大変つらい思いをしますので、現在引き出し屋を検討されている方は、絶対に利用しないでください。
各都道府県と指定都市に「ひきこもり地域支援センター」があります。お住まいの地域の相談先を詳しく教えてくれますので、まずはこちらにご連絡ください。
厚生労働省が発表している、ひきこもり地域支援センターの連絡先はこちら↓
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000515493.pdf
はじめに
2025年1月、厚生労働省から「ひきこもり支援ハンドブック」が発表されました。これまでの引きこもり支援は2010 年に策定された「ひきこもり評価・支援に関するガイドライン」を参考に進められてきましたが、昨今の社会情勢や取り巻く社会環境の変化に伴い、新たな指針が15年ぶりに作成されました。
ひきこもり支援の歴史、定義の変更、支援のポイント、事例が詳しく記載されており、支援者の方はぜひ一読していただきたいと思います。
発表されたハンドブックは各都道府県から関係機関宛に送られているほか、2025年2月10日現在、岩手県のホームページで概要をまとめたものが見られます。また、群馬県のホームページでは概要版と完全版(全174ページ)を読むことができますので、ぜひご覧ください。
ハンドブックの正式名称は「ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤~」です。
支援者として、どのように関わり、どのようなアプローチを取るべきか、本記事では、ひきこもりの定義や支援の難しさ、具体的な支援方法について、わかりやすく解説していきます。
ひきこもりの定義
新しいハンドブックによると、ひきこもり支援の対象者は、
「社会的に孤立し、孤独を感じている状態にある人や、様々な生活上の困難を抱え、家族を含む他者との交流が限定的(希薄)な状態であり、かつ、支援を必要とする本人及びその家族。」
とされ、さらに、
「その状態にある期間は問わない」
と明記されています。旧ガイドブックでは、
様々な要因の結果として、就学や就労、交遊などの社会的参加を避けて、原則的には6ヶ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態のこと。(他者と交わらない形での外出をしている場合も含む。)
と定義されていました。
そのため、信じがたい話ですが、支援機関によっては「まだ6か月経っていないのでひきこもり支援対象外です。」と支援を断ってしまうケースもあったようです。
支援対象者に家族が含まれたこと、期間は問わないと明記されたことは、非常に重要なポイントになります。
なぜ引きこもり支援が困難なのか
ひきこもりは病気ではなく「状態」です。精神疾患、発達障害、心理的不安、人間関係、環境要因などが複雑に絡み合った結果、「ひきこもりという状態」になっているのです。
原因は人によって様々ですので、単純に薬を飲めば解決するわけでもなく、家から引っ張り出せば解決するわけでもないのです。
原因を探るためには医療、心理、環境など複数の視点から総合的なアセスメントを行う必要があります。しかし、一つの事業所ですべての視点からのアセスメントを行うことは困難です。そのため複数の支援機関や医療機関との連携が重要になるのですが、その連携が上手くいかないという声も多く聞かれます。
本人が支援を拒否している場合は、さらにアセスメントが困難になります。
信頼関係構築のためには長い時間と根気強い関りが必要ですので、支援者の負担も大きくなります。担当者が一人で抱え込むことがないよう、支援者への支援も必要になります。
このように、引きこもりの支援には高い専門性とスキルが求められます。具体的には、
・社会資源を活用し、関係機関と連携するソーシャルワーク能力
・情報を客観的に分析し、多視点から対象を見ることができるアセスメント能力
・本人や家族、関係者と信頼関係を構築できるコミュニケーション能力
・支援の経験や知識
・あきらめない心
が必要です。
※アセスメント…本人や家族の状態を把握し、今後の援助内容を検討すること。
ひきこもることは、本人にとって心を守るために必要なこと
皆さんは、ひきこもり状態は「悪いこと」だと思いますか?
このように質問すると、支援者やご家族の多くが、当たり前のようにそうだと答えるでしょう。確かに私たち支援者やご家族の立場からすると「悪いこと」かもしれません。しかし、ひきこもっている本人の立場からすると、どうでしょうか。以下の事例をご覧ください。
Aさん(27歳男性、未婚)は、大学時代サッカーに打ち込み、その明るさを買われ営業職に就いた。営業ノルマや顧客からの無茶な要望、職場の人間関係などのストレスに耐えながら3年間必死で頑張ってきた。けれどもなぜかうまくいかない。原因はわからないが、周りから嫌われてしまう。重要な予定を忘れるなどミスが多く、仕事が上手くいかない。同居の両親や上司からは「もっとしっかりしなさい」、「もっと頑張りなさい」と言われてしまう。
だんだんと気分が落ち込むようになり、頭が痛く、朝起きられない、食欲がない、一日中体がだるいといった症状が出るようになった。仕事は休みがちになり、趣味だったはずのサッカー観戦やテレビゲームが楽しいと感じられなくなった。
このままではだめだ、もっとしっかりしなければと考え、無理をして笑い、周りに合わせようとするが、胸の奥がずっしりと重たい。ため息が多くなり、眠れなくなった。日中も頭の中にモヤがかかったようになった。涙が止まらず、ダメな自分は存在する意味がない。こんなにつらい世界なら死んでしまったほうがマシだと思うようになった。
駅のホームから電車に飛び込めば楽になれるかもしれないと考えたが、両親が悲しむと思うと実行には移せなかった。会社に行けなくなり、電話にも出ることができない。家族以外との会話や交流はなくなり、一日のほとんどを自分の部屋で横になって過ごしている。
支援者の皆さんは、一読した時点で原因の予想や、ある程度の支援計画がイメージできていると思いますが、ちょっと待ってください。まずはしっかりとAさんの立場に立って考えてみましょう。
※数十万円~数百万円という高額な報酬と引き換えに、引きこもりのご家族を強引に自宅から引っ張り出し、強制的に施設入所させる「引き出し屋」というものが存在しています。ご家族の不安や心配につけこんだ悪質な商売であり、重大な人権侵害行為です。
適切な支援がなければ引き出された本人も大変つらい思いをしますので、現在引き出し屋を検討されている方は、絶対に利用しないでください。
各都道府県と指定都市に「ひきこもり地域支援センター」があります。お住まいの地域の相談先を詳しく教えてくれますので、まずはこちらにご連絡ください。
厚生労働省が発表している、ひきこもり地域支援センターの連絡先はこちら↓
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000515493.pdf
はじめに
2025年1月、厚生労働省から「ひきこもり支援ハンドブック」が発表されました。これまでの引きこもり支援は2010 年に策定された「ひきこもり評価・支援に関するガイドライン」を参考に進められてきましたが、昨今の社会情勢や取り巻く社会環境の変化に伴い、新たな指針が15年ぶりに作成されました。
ひきこもり支援の歴史、定義の変更、支援のポイント、事例が詳しく記載されており、支援者の方はぜひ一読していただきたいと思います。
発表されたハンドブックは各都道府県から関係機関宛に送られているほか、2025年2月10日現在、岩手県のホームページで概要をまとめたものが見られます。また、群馬県のホームページでは概要版と完全版(全174ページ)を読むことができますので、ぜひご覧ください。
ハンドブックの正式名称は「ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤~」です。
支援者として、どのように関わり、どのようなアプローチを取るべきか、本記事では、ひきこもりの定義や支援の難しさ、具体的な支援方法について、わかりやすく解説していきます。
ひきこもりの定義
新しいハンドブックによると、ひきこもり支援の対象者は、
「社会的に孤立し、孤独を感じている状態にある人や、様々な生活上の困難を抱え、家族を含む他者との交流が限定的(希薄)な状態であり、かつ、支援を必要とする本人及びその家族。」
とされ、さらに、
「その状態にある期間は問わない」
と明記されています。旧ガイドブックでは、
様々な要因の結果として、就学や就労、交遊などの社会的参加を避けて、原則的には6ヶ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態のこと。(他者と交わらない形での外出をしている場合も含む。)
と定義されていました。
そのため、信じがたい話ですが、支援機関によっては「まだ6か月経っていないのでひきこもり支援対象外です。」と支援を断ってしまうケースもあったようです。
支援対象者に家族が含まれたこと、期間は問わないと明記されたことは、非常に重要なポイントになります。
なぜ引きこもり支援が困難なのか
ひきこもりは病気ではなく「状態」です。精神疾患、発達障害、心理的不安、人間関係、環境要因などが複雑に絡み合った結果、「ひきこもりという状態」になっているのです。
原因は人によって様々ですので、単純に薬を飲めば解決するわけでもなく、家から引っ張り出せば解決するわけでもないのです。
原因を探るためには医療、心理、環境など複数の視点から総合的なアセスメントを行う必要があります。しかし、一つの事業所ですべての視点からのアセスメントを行うことは困難です。そのため複数の支援機関や医療機関との連携が重要になるのですが、その連携が上手くいかないという声も多く聞かれます。
本人が支援を拒否している場合は、さらにアセスメントが困難になります。
信頼関係構築のためには長い時間と根気強い関りが必要ですので、支援者の負担も大きくなります。担当者が一人で抱え込むことがないよう、支援者への支援も必要になります。
このように、引きこもりの支援には高い専門性とスキルが求められます。具体的には、
・社会資源を活用し、関係機関と連携するソーシャルワーク能力
・情報を客観的に分析し、多視点から対象を見ることができるアセスメント能力
・本人や家族、関係者と信頼関係を構築できるコミュニケーション能力
・支援の経験や知識
・あきらめない心
が必要です。
※アセスメント…本人や家族の状態を把握し、今後の援助内容を検討すること。
ひきこもることは、本人にとって心を守るために必要なこと
皆さんは、ひきこもり状態は「悪いこと」だと思いますか?
このように質問すると、支援者やご家族の多くが、当たり前のようにそうだと答えるでしょう。確かに私たち支援者やご家族の立場からすると「悪いこと」かもしれません。しかし、ひきこもっている本人の立場からすると、どうでしょうか。以下の事例をご覧ください。
Aさん(27歳男性、未婚)は、大学時代サッカーに打ち込み、その明るさを買われ営業職に就いた。営業ノルマや顧客からの無茶な要望、職場の人間関係などのストレスに耐えながら3年間必死で頑張ってきた。けれどもなぜかうまくいかない。原因はわからないが、周りから嫌われてしまう。重要な予定を忘れるなどミスが多く、仕事が上手くいかない。同居の両親や上司からは「もっとしっかりしなさい」、「もっと頑張りなさい」と言われてしまう。
だんだんと気分が落ち込むようになり、頭が痛く、朝起きられない、食欲がない、一日中体がだるいといった症状が出るようになった。仕事は休みがちになり、趣味だったはずのサッカー観戦やテレビゲームが楽しいと感じられなくなった。
このままではだめだ、もっとしっかりしなければと考え、無理をして笑い、周りに合わせようとするが、胸の奥がずっしりと重たい。ため息が多くなり、眠れなくなった。日中も頭の中にモヤがかかったようになった。涙が止まらず、ダメな自分は存在する意味がない。こんなにつらい世界なら死んでしまったほうがマシだと思うようになった。
駅のホームから電車に飛び込めば楽になれるかもしれないと考えたが、両親が悲しむと思うと実行には移せなかった。会社に行けなくなり、電話にも出ることができない。家族以外との会話や交流はなくなり、一日のほとんどを自分の部屋で横になって過ごしている。
支援者の皆さんは、一読した時点で原因の予想や、ある程度の支援計画がイメージできていると思いますが、ちょっと待ってください。まずはしっかりとAさんの立場に立って考えてみましょう。