ちょっとドジでおっちょこちょいな女性のお化けだとおもったら……なお話:ゴーストにもう怯えない+【朗読動画】

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 今回ご紹介の朗読動画は、ちょっとドジでおっちょこちょいな女性のお化けだとおもったら……なお話です。
 良かったら聴いていただけると嬉しいです。

・朗読動画もご用意しております。
・文字をお読みになりたい方は、動画の下に小説(文字)がございます。
◉ゴーストにもう怯えない
 作者:紗月ゆき
 朗読:Meg

「いや、出たんですよ」
「はい?」
 私は必死にバイト先の先輩である賢太に訴えるも、彼は呆れた顔をしている。
「幽霊です、私見たんです。昨日何気なく窓から外を見たら大きな影が見えましたし、家の中の配置も変わってるんです」
「寝ぼけてる時の話なら聞きたくないぞ」
「冷たくないですか!真剣に考えて!」
「この間だって家に何か出た!って騒いでたら自分の影だったんだろ」
「うっ……それは、でも今回は絶対おかしいんです!」
 今のアパートに引っ越してきて少ししたところでその現象は起き始め、家賃が安かったこともあり私は事故物件ではないかと思い始めていた。賢太は一年年上の先輩で、同じ大学に通っている。私のお兄ちゃん的存在で、困ったことは全部相談してきた。
「一人じゃ不安なんで見に来てくださいよ~」
「はあ?!なんで俺が」
「こんなこと頼めるのケン先輩しかいないんです!友達に話したら幽霊とか怖いと言われて」
「そりゃ普通怖いだろ」
 私が必殺技のお願いモードに移行すると、賢太は大きなため息をついて仕方なく了承してくれたのだった。彼はなんだかんだいつもこうやって私の頼み事は聞いてくれる。この関係が心地よくて安心できた。

 早速その日のバイト上がりに一緒に私の家に向かう。賢太と一緒に上がるためにバイト仲間にお願いして勤務を交代して早めにあがらせてもらった。家に入ろうとガチャリと鍵を回すと中でガタンと音がする。
「え、今なんか音がしました」
「気のせいだろ、誰も家にいないんだろ?」
「だから幽霊がポルターガイストしてるんですって……!やっぱり風呂トイレ別で家賃6万なんてやめときゃよかった……」
「いやいや土地によるだろそんなん」
 話しながら扉をそっと開けると、特に変わったところはない。
「お邪魔します……」
 落ち着かない様子で家に賢太は上がると、そのままワンルームの奥まで入っていく。ぐるりと部屋を見回すと思案しているようだった。私はお茶を出そうとして、部屋の乱れに気付き不安になる。
「あーっ……やだ、おかしいな、出掛けた時は綺麗に畳んだのに」
 私はベッドの上にある部屋着がぐちゃぐちゃに置かれ、ベッドの下にある洋服をしまってある収納も開きかかかっていることにショックを受ける。この間はキッチンの扉が開けっ放しになっていた。
 賢太はおもむろに部屋の隅に置いてある小さな観葉植物を持ち上げて私を呼んだ。
「……なあ、これ、買った覚えある?」
「えっ、なんですかこれ、私これ知らないです」
「だろうな、植物枯らすタイプだろお前」
「ひどい!……そうですけど」
 賢太は観葉植物を持ち上げるとくるくると回して顔をしかめる。
「おい、幽霊なんかじゃないぞ、お前これは」
「これがなんですか?」
 言いかけて賢太は急に押し黙る。静かに廊下からバスルームに移動すると勢いよく扉を開けた。するとそこにはうずくまってこちらの様子を見ている男がいた。賢太はあまりの衝撃に目を見開くと、すぐさま扉を勢いよく閉め直してがっちりと扉を押さえる。中の男は日必死で負けじとドアを開けようと暴れている。
「ふっざけんなお前これ幽霊とかじゃなくてガチでやばい奴だろ警察だ警察!」
「はっ、はいぃ……!」
 賢太が叫んで通報するよう言ったので私は震える手で警察に連絡し、バスルームに閉じ込めた何者かが到着までに出てこないよう祈る。賢太は顔を真っ赤にして力比べを変質者と続けた。

 警察が来てあっけなく男は捉えられ、事情を説明させられた。どうやら彼は以前この部屋に住んでいた男で、退去の際スペアキーを隠し持っていたらしい。本来退去後は鍵も付け替えるものだが、このアパートの大家がスボラなので変えなかったそうだ。今日は私が遅くまでバイトだと思って家に入り込んでいたらしかった。
「金に下着に食いもん盗られて、あげくに盗聴までされてたんだぞ?どんだけ抜けてるんだよ」
「なんか色々すいませんでした」
「大体お前は前からほんとそそっかしい、俺が世話焼いてないとどうなってたんだってことばっかじゃねえか」
 私が申し訳なさそうにしていると、賢太は私の手が震えているのを見てコホンと咳ばらいをしてから話し出した。
「怖かったな」
 その一言で私は一気に涙腺が緩んで泣き出してしまう。私が一通り泣くまでの間、賢太は側にいてくれた。しばらく腕組みをして考えていた賢太は私をちらりと見る。
「こんな怖い家に住み続けんの」
「いや、ちょっと怖くて嫌ですね……」
 しゅんとした私に賢太はちょっと上ずった声で提案する。
「だったらうちに住めば、部屋ひとつ余分にあるし」
「え?ど、どういう?私が、ケン先輩の家に?」
 ああもう、と頭を掻きむしって賢太はやけくそになった様子で私に向き合う。
「お前が好きだからほっとけないって言ってんの。……別にどうもしないからとりあえずうち来い」
「え、えええ……」
 私は状況が飲み込めず立ち尽くす。今日一日でどん底と幸せをいっぺんに味わうことになるなんてと私は賢太の背中についていくことにしたのだった。


おわり

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