悩んでいたのは私だけではありませんでした。
別の音楽専門学校へ行った高校の同級生「Y」君もその一人でした。
学校生活が一年程過ぎた頃です。
「Y」君から電話がきました。
「今、悩んでいる。」
居ても立っても居られない私は「Y」君の住んでいる調布市まで行きました。
駅で待ち合わせ後、お菓子とジュースを買い「Y」君の住んでいる寮に。
私:「んで、何を悩んでるんだい?」
Y:「んん、何か専門学校通っていても意味がないんじゃないかって…。」
私:「何でそう思うの?」
Y:「いや、学校の授業は面白いんだけど、なんかこう…、『自分らしさ』を
磨けてないんじゃないのかなって…。」
私:「それ、すげぇわかるわ!」
「Y」君はどちらかと言うと理論よりも感情や直感的に演奏するギタリスト。
上手いと言うよりは、感性に訴えかける様な気質を持っていました。
つまりは「センス」重視タイプのミュージシャンでした。
Y:「理論とか、講師の言う事守っていて
今後、本当に役に立つのだろうか?プロになれるのかな?」
今となっては、本当その通りなって感じの結論なんですが
その時、私が返答した答えは「Y」君が求める答えではなかったと思います。
私:「せっかく上京までして『夢』掴みに来たろうよ?
悩む気持ちもわかるけど、もう少し頑張ってみようよ?」
多分、田舎から上京した事のある人は誰しも何度も考えた事だと思います。
帰りたい気持ちと、自分の叶えたい「夢」との葛藤。
どこの業界も同じだと思うんですけど、専門学校や大学を出ても
自分の「夢」を「仕事」にできる人なんてほんの一握りもいないんです。
多分、1,000人いて一人か二人くらいしか叶えられないと思います。
「夢」を叶えるのも競争。
自分を乗り越えるのも競争。
「生きる」ことも競争。
しばらくして「Y」君は地元に戻り、趣味で楽しくギターをかき鳴らす事を
選びました。
それからの「Y」君の人生も色々と波瀾万丈ではありましたが、
今ではとても気の合う彼女と趣味やキャンプを満喫しています。
同じ「夢」を追った仲間が一人、また一人と去っていく。
自分はできるのか?
自分は叶えられるのか?
私の専門学校での生活は、常に自分とライバルとの競争で明け暮れていました。
音屋のkatsu