i子さんは、私たちをアパートに呼んでくれた。
そして、お昼ご飯を作ってくれた。
娘はi子さんのことを「ばあば」と呼ぶようになっていた。
I子さんはそれを聞いて喜んでいるようだった。
i子さんの息子さんは遠く北海道に住んでいて、奥さんとも仲が悪いらしい…。
I子さんの家庭事情もよく話してくれていたからなんとなくは知っていた。
だからか私の娘も「孫」のようにかわいがってくれた。
そろそろ施設に戻らなければいけない時間になっていた。
I子さんのアパートを出て、私のアパートに行き荷物をもって自転車に乗せて施設に向かった。
娘は施設に戻ることはわかっていただろうが、私もあまり触れないようにしていた。
自転車に乗って30分くらいして施設に着くと、やはり寂し気な顔になった…。
施設の人に引き渡すときは、娘も私も泣いていた。
やっぱり寂しい…。
苦しい…。
辛い…。
帰りの道中、私は考えた
「あんまり会わない方がいいのかな…、でもな、見放されたと思ってほしくない。かといって頻繁だとまた施設の人から言われるし…。間隔的にどうしよう…。」
と考えながら自転車を漕いでいた。
今度は下の息子に会いにいった。
息子の「外泊の許可」を取りたかったから話だけでも聞いてみようと思った。
乳児院は比較的、外泊もokらしい。
よかった!
息子と少し会って、その日は帰った。
あのまま帰りたくなかった。
苦しかった、娘はもっと苦しいと思うとどうしていいかわからなくなった。
息子とはいつでも会えそうだ。
それなら娘に専念しよう、そう思った。
娘を2週間に一回
息子を3週間に1回
のペースで外泊させよう!
そう決めた。
とはいえ、娘の幼稚園の関係上、土日でなければ外泊は不可能だった。
特別に休ませるということはできないようだ。
「夏休み」などのみんなが長期の休みなら大丈夫なようだ。
そんな中、またあの彼から連絡がきた。
会ったことなど忘れたかのように普通に話してきた。
いつもと変わらないなんでもないような話をして、その日は電話を切った。
何を考えているんだろう…。
他の人は私と会ったら二度と電話や連絡などしてこないのに…。
私は小学生のころから「好きだ」などと言われたことがない、
もちろん、元旦那からも…。
だから、異性の「○○だから私のことが好きなんじゃない?」
みたいなことには鈍感だった。
未だにその感覚だけはわからない(笑)
他人のはわかるけど(笑)
そして、また私のバイトが終わると彼から電話がくる、という日が続いた。
そしてバイトが終わって子供と外泊か、外出か、それともI子さんと一緒にいるか…のどれかだった私の生活に
「彼」
が入ってくるようになった。
それでも「自分一人」になる時間は確実に減っていた、
だから孤独をあまり感じずにいれたのかもしれないが
時折襲ってくる恐怖はあった。
だから「一人」でいたくない、という気持ちもあった。
アパートに一人でいると怖い、というより「虚しさ」が強かった。
「なにをしたらいいのか」「なにをしたいのか」
考えても考えてもやっぱり
「お金」がないと何もできないことばかり…。
自分の「無力さ」に呆れた。
「一人でやっていく」って決めたのに…。
子供がいるとは言え、孤独と不安で押しつぶされそうになる。
だからアパートに一人ではいないようにしていた。
一か月くらいかな、また「彼」から食事の誘いがきた。
私は「好意」というよりも「その日のご飯代が浮く」という感覚で会っていた。
その日も決まったご飯屋さんがあるわけでもなく、フラッと来て何でもないような話をして帰ろうとした。
けれど、彼が突然「お腹いいっぱいになったら眠くなってきた、ちょっとそこ寄っていい?」
と言ってきた。
そこ?
見たらラブホテル…。
長距離運転手だからか、と思い
「いいよ」といった。
本当に眠そうだった。
事故でも遭われたら大変だと思ってソコに入ることにした。
入ったら彼はバタンとベットに横になり寝てしまった。
本当に疲れていたんだな、と思った。
私は起こさないように静かにしていた…。