わずかに期待していた舅にも、ひどいことを言われ、本当に行き着く場所がなかった。
楽しい時間は仕事と子供との時間。
旦那は相変わらず不定期に帰ってくる。
浮気や不倫をしていたところで
この家の人たちは旦那を叱ったりしないだろう…。
大事な跡取り息子だから。
そして17歳でこの家に嫁ぎ、子育てをして必死に働いている私は悪者…
私の存在の価値観がまた学生時代のころに戻ってしまったような気がした。
家族とか、親子とか
身内ってそういうもんなの?
私は納得がいかなかった。
私だって幸せになりたい。
別に特別な幸せは望んでない、
ただ夫婦と子供で食卓を囲んで、ごくごく普通の幸せを望んだだけ。
それのどこが悪かったの?
私に「幸せ」になる権利は最初からなかったのかな
望まれて産まれてきたんじゃなかったのかな。
けれど自分の子供は違う!
誰が望んでなくても、私が一番望んでた!
なのに…
この子たちを幸せにしてあげれていない…。
私は「母親失格なのか」…
けれど考えても考えても行き着く先は
「この家から出て離婚したい」
だった。
ちょうどその頃、床屋さんを辞めてから知り合った
「あきおばさん」にばったり会った
あきおばさんは「あんたの母さん変わったよ~」
などと言ってきた。
けれど騙されるもんか!
あいつは女優だ。
他人にいい顔しかしないのだ。
「実家にあそびに行きなさいよ~」
などとケラケラ笑いながら話している。
私は母親の家を「実家」だとは一度も思ったことはない。
私の実家は父親の家だ。
もう帰れない、誰のものでもない家。
数日、これは母親の家に一度帰ろうか、という気持ちになるくらい追い詰められていた。
そして、保険やの仕事も慣れてきたころ
急な吐き気がしてきた
なにか朝変なもの食べただろうか、それともストレスだろうか
耐えきれなくなり、その場で吐いてしまった。
会社の駐車場の前で…。
それを見た同僚の人たちが心配してくれた。
ひとまず会社に戻り病院にいくかどうかという話をしながらも
吐き気に耐えられなくなっていた。
どうしても吐き気が収まらないので病院に行くことにした。
そこで判明したのは…。
3度目の「妊娠」だった。
その時私はさすがに中絶をしようと思った。
旦那がする夫婦の営みとは、自分の欲求を発散するためだけのモノとしてしか扱われていなかったからだ。
それも都合よく、私の体のことなど微塵も考えていない。
まして「愛情」など全く感じられない。
なおかつ保険やをしていることで「枕営業」などと言われているような状況で信じてもらえるかすらわからない。
もちろん、私自身は他の人との性行為などという関係や不貞行為などの異性交遊すらない。
なにせ私は元々男性が苦手なのだ。
社会に出てある程度は男性とは話せるが、異性として近寄られることもなければ近寄りたくもない。
けれど、中絶を選択したら、それを認めることになる、とも思った。
病院の先生には「少し考えさせてください」とだけ言った。
先生は「中絶するならなるべく早くね」
と私の顔色を察したのか、そういった。
いつしたっけ…。
あ、年末帰ってきたときか…。
もういつ帰ってきていつから帰っていないのかすらわからない状況だった。
私の生理は不順だったから生理のことなど忘れていた。
もう自分自身のことなどに気を使っていれる状況ではなかった。
そして数日誰にも言わず悩んでいた…
隠せるわけもない、どちらにせよ言わなければならない。
私は覚悟を決めた。
お義母さんに妊娠したことを伝えた。
なぜか何も言わなかった…
ところが、夜になってお義父さんから
「その子は本当に息子の子供なのか!証拠もってこい!」
と言われた。
予想はしていた。
そして次の日、旦那と一緒に病院に行った。
私は先生に事情を説明して旦那に話してもらうようにお願いした。
先生は旦那に
「年末の○○日、性行為をしましたか?」と尋ねた
旦那は「はい、しました」
と答えた瞬間、先生は旦那に怒った
「何を考えてるんだ!大事な体と大事な奥さんになんてことを言うんだ!」
と診察室で怒鳴った。
私はびっくりしたが、安心した。
それに対して旦那は何も言えず
「わかりました」
とだけいい診察室を出た。
先生は私に気を使ってくれて「大丈夫?心配ないからね」
と言ってくれた。
そうして、帰りの道中は終始無言のまま帰宅。
旦那がお義父さんに「自分の子供だった」と伝えていた。
が、私は許せなかった。
もう無理だ。
認めたところで謝る人でもない。
そして、私が選択したのは
「産む」
という決断だった。
そして、離婚する。